073 クリスマスプレゼント
「しかしみんな食べて飲んだねー、そしてみんな寝てるねー。」
後片付けをしながら周りを見渡すと、ソファの上が人で埋まっている。エリーン先生は飲み過ぎて早々と潰れてしまい、マーレに介抱されてわかちゃんの部屋で寝ている。
ということで、飲んでいない私達4人が後片付け。床に散らばったお皿やお菓子、お酒の瓶をまとめ、ジュースやお酒がこぼれた後はシミにならないよう丁寧に拭き取る。
とは言っても、これらの作業は魔法を使えばあっという間に終わる。もう手足のように扱える魔法、生活に欠かせない魔法。だからこそ元の世界に戻ったら苦労しそうだなぁ。
「海斗、お前も飲もうぜ。」
「ショーン、酒臭えから近寄んな。それに何度も言ってっけど、俺達の世界では14歳はまだ飲めないんだよ。」
この2人、お互い嫌い嫌い言ってるけど、意外と仲良しよね。
この世界では、お酒は12歳から飲める。人生30年って考えると、確かに12歳は成人かもしれないけど、私達は小さい頃からずっとお酒は20歳からと教えられているので。元の世界に戻った時に、何か影響が出ても嫌だしね。
「しかしお前ら、いつ帰れるんだろうな。」
ショーンさんは私達の隣に腰掛け、満点の星空を見上げる。わかちゃんが持ってきたお茶を一口。
「まあさ、もしこのまま帰れなかったらさ、俺達のところに来いよ。お前らなら大歓迎だ。」
「なんだ、勧誘か?俺達は高いぜ?」
海斗は冗談のつもりで言ったようだけど、ショーンさんは大きく頷く。
「もちろん、お前らみたいな魔導師をタダで雇うわけねぇよ。きちんと役職も、位もつけるつもりさ。それに……」
「もし海斗達が良ければ、私達の後継者になって欲しいのです。私達に何かあった時のために。」
わかちゃんの部屋から出てきたマーレは、同じく真剣に、でも穏やかな表情で話を引き継ぐ。
「後継者って、4賢者を?」
「そうだ。お前らなら俺達の後を任せられる。」
4賢者は王の側近であり、ハイラスマーレ国最強の魔導師だ。そんな重要な役職を私達に?
「そんな重要な役割を、異世界から来た俺達が担うのは、みんなが納得しないんじゃないですか?」
「いや、納得するさ。4賢者はなりたくてなれるものじゃない。俺達が言っているんだ、他の連中が口を挟めることじゃない。」
そっか、4賢者は任命制なんだ。その時の賢者が次の賢者を選ぶ。そうやって代々受け継がれてきたのだろう。
「もちろん、私達はあなた達が元の世界に帰れるよう手を尽くします。でも、もし……帰ることができなかったら、その時は…」
「分かった。ちゃんと考えておくね。でも、ショーンさんもマーレも死んじゃダメだからね。ちゃんと生きて引き継いでください!」
わかちゃんの剣幕にちょっと気圧された後、2人はまた笑った。きっとわかちゃんの言葉が嬉しかったのだろう。
この世界では、死はとても身近なもの。だからこそ、万が一を想定しなければいけないんだろう。でも、やっぱり大切な人は失いたくない。ずっとみんなで笑顔でいたいから。
「でも、ショーン、マーレ、エリーン先生、王様、ミーナ達……みんなのおかげでこの世界で生きることができるようになりました。もちろん、怖いこともたくさんあったけど、楽しいこともいっぱいあった。だから、本当にありがとうございます。」
「ありがとう、みんな!」「私も、この世界に来て良かった!」「確かに、良い経験になったよな。この世界、俺も好きだぜ。」
自分の世界を褒められるのは嬉しいよね。特にマーレは、目に涙を浮かべながら笑っている。
きっと、様々なことに巻き込んでしまって、危険な目に遭わせてしまって申し訳ないと思ってるんだよね。
でも、それは彼女のせいではない。お姫様だからって、そこまで背負い込む必要ないんだ。
私は、そんな姫様をギューっと抱きしめた。
私達は大丈夫だよって気持ちを込めて。
「あのぉ……お取り込み中悪いんだけど、太陽の部屋、なんか光ってるよ?」
急に声をかけられ全員びっくり。罰の悪そうな顔をするコウタは、おずおずと太陽の部屋を指さす。
ほんとだ、めっちゃ光ってる。
あの光、どこかで………あっ!
「太陽、この光!」
言葉より先に体が動いたのだろう。太陽はソファを飛び越え扉を勢いよく開ける。
予想通り輝いていたのは一冊の本。
一足遅れで到着した私達に輝く本を見せる太陽。その場にいた全員が一様に息を呑む。
ゆっくり、恐る恐る本を開くと、何かがバラバラと下に落ちる。それらが床に落ちる寸前で海斗とショーンさんが全てキャッチする。
「これはなんだ?鍵か?」
「あっ、その鍵……」
見覚えがある。それは、この世界に来る時にも使い、いつの間にかどこかに紛失してしまった物。
「旧校舎の鍵だ!!」
4人で顔を見合わせる。
なんでここに?鍵は元の世界に落としてきたとばかり思っていたのに。
しかも、なんで4本?
「太陽、STORY TELLERには何か書いてないのですか?」
鍵のことで頭がいっぱいだった私達は、マーレの一言で我に帰る。
全員で覗き込んだページには、短い文が2つ。
『その鍵は、世界を繋ぐ。その扉は、世界を結ぶ。』
「俺、サンタを信じるわ。」
クリスマスプレゼントは、私達の不思議な旅の終わりを指し示すものだった。




