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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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072 メリークリスマス

日本人は、クリスマスで盛り上がった1週間後のお正月で別の神に祈りを捧げるという、なんとも不思議な民族だという話を聞いたことがある。

宗教に厳格な国ではあり得ないことなのだろうが、それがこの国の良いところだと思っているのは、きっと俺だけじゃないだろう。


「しかし、まさかこの世界にもクリスマスの文化があるとはなぁ。そして、まだ元の世界に帰れていないとは……」


そういえば、最初王様に会った時、サンタの話をしてたっけか?


今日は12月24日、クリスマスイブ。街にはカップルが繰り出し甘い一夜を過ごし、家族がいる者は、和気あいあいと楽しい時間を送る。

しかし、異世界から来た俺達は残念ながら家族はおろか、彼氏彼女もいないので……


「まあ帰れないものを嘆いても仕方ないじゃん、海斗兄!それより、この星付けてくれない?」


クリスマスツリーのてっぺんに星をつけたいが、身長的に厳しい若葉の手から星を受け取り、ちょこんと乗せてやる。

せっかく手伝ってやったのに、「やっぱりなんかムカつく」と膨れる幼なじみの顔を見て、平和だなぁとつくづく感じる俺であった。




貴族との戦いから早4ヶ月。色んなことがあったのだが、全部説明すると長くなるので、簡単にかいつまんで。


まず、あの戦いは王様達魔導師側の勝利、貴族側の敗北で幕を閉じた。ジェラール(ヤリス)が死んだ後、貴族達の中に意識を失う者が続出し、それまでの均衡が嘘のように破れた。結果的にエリーン先生が指揮する魔導師達が貴族達を制圧することに成功した。

その後の事情聴取では、ほとんどの貴族達が洗脳されていたと答えたのだが、その証言が真実なのか現在調査中だ。

ルリット、メガロ、ハウゲン、ロンヌについても、同様に取り調べを受けている。誘拐、対抗戦でのルール違反も相まって、魔導高等学院からは退学処分になる予定だ。


貴族達の裁判の結果が出るまでは、貴族の役割を国の魔導師達が務めなくてはならず、忙しい日々が続いている。俺達も出来ることはしようと4人で考え、戦いで傷ついたコロシアムやスカイキャッスルの修復作業を手伝っている。


あの日俺が闇に呑まれたことについてだが……ウォーデン王に質問したところまでは記憶があるのだが、その後のことは全く覚えておらず、気付いたらスカイキャッスルの自分のベッドの上で寝ていた。起きた時は身体の至る所は痛いし、記憶はないしで激しく混乱したのだが、その後経緯を聞き激しく反省した。



またやってしまったのか……二度と危険な目に合わせないって約束したのに……



でも嬉しいこともあった。幼なじみ達が、俺のことを全力で止めてくれたこと。

今は封印されているこの力も、いつかは自分の力として扱えるようにならなければいけない。それが大切な人達を傷つけるのではなく、守る力になるはずだから。



圧倒的な力を手に入れた俺達だったが、学校にはそのまま通わせてもらっている。エリーン先生は、

「あなた達に教えることは、もうないですねぇ。」

なんて言っていたけど、俺達が手に入れたのは魔法を使うための知識であって、魔法そのものについてや歴史、勉強面について等、まだまだ知らなければいけないことは山ほどある。

まぁ、俺はそっち系の専門じゃないから、里穂と太陽にほとんど任せているけど。


あとは、改めてSTORY TELLERの授与式が行われたり、ショーンvs俺、太陽ペアで模擬戦を行ったり(結果は引き分けだったのだが、高等学院の運動場が大変なことになり、エリーン先生から厳しいお叱りを受けた。)と、色々あって今に至る。


そうそう、そのSTORY TELLERについてだが、俺達に力を授けて以降、うんともすんとも言わない状態が続いている。運命を読み取り、必要なことを教えてくれるということだったので、元の世界への帰り方も教えてくれると思ったんだが……


今は帰るべきではないということか、はたまた本の不具合か。

俺達が帰りたくないと心のどこかで思ってる……とか?……いや、そんなことはないはずだが。




「しかし、高等学院に通っている人達は、独り身が多いんだな。年齢的には結婚適齢期なんだろ?」


ジロリと鋭い視線が俺の身体を射る。やべぇ、地雷だったか?


「海斗君、俺達は魔導を極めるためにこの学院にいるのだよ。恋愛にかまけている暇などないのだよ。なぁ、アンナ。」


「えっ、別に私は、良い人がいれば…全然結婚とかありかなぁ……とか思ってるし…って、何言わせんのよレイト!!」


アンナとレイトの掛け合いを見て、笑うコウタとミーナ。なぜこんなに大集合かと言うと……

現在、俺達の部屋でクリスマスパーティーの準備中なのだ。いつもは4人で使ってもまだまだお釣りがくるような広い部屋なのだが、今日はコウタ、レイト、アンナ、ミーナ、ミサちゃんと俺達を合わせて9人もいるので、少し手狭に感じる。

いや、人数のせいだけじゃないな。


「若葉、やっぱこのツリーでかすぎじゃないか?」


部屋の中央にそびえ立つ高さ2.5メートル、幅2メートル近くある存在感が半端ないこのツリーは、若葉のご要望の品であり、里穂に作らせたものだ。

ちなみに作り方はいたってシンプル。もみの木の苗を買ってきて、一気に成長させるというもの。部屋が狭くなるからと幼なじみ3人は反対したのだが、全く聞き入れてもらえず今に至る。


「ツリーは大きい方がいいに決まってるでしょ!!ミサちゃんもそう思うよね!」


「うん!!ミサも大きい方がいい!!」


ミサちゃんも味方につけた若葉には誰も敵わない。太陽にどうにかさせようとしたが、肝心の幼馴染は早々に白旗を掲げ、ツリーの飾り付けのバイトに精を出していた。


コンコンコンとノックの音。

おっ、ようやく全員集合だな。


「お待たせしてすみません。仕事が終わらなくて。あと、ショーンを連れてくるのに手間取りまして。」


そこに現れたのは、鹿の角を生やした女神と、仏頂面の長髪、そして……サンタ!?


「うわー、サンタさんだ!!リアル!!」


いや、若葉さん、リアルというか、まんまですよ!!赤い帽子に服、真っ白なお髭、ふくよかな身体、俺の想像……いや、全国民が想像するサンタさんがそこに立っている。


「若葉、私に触らないでくださいねぇ。変身魔法が解けてしまうので。」


「「エリーン先生ですか!?!?」」


この「~ねぇ」の語尾、間違いない、学院長だ。学院長にショーンと、コウタ達からすると雲の上の存在が急に現れ固まっている。

しかも学院長、サンタだし。

文字通り、サプライズ大成功だ。まあ、サンタは俺達にもサプライズだが。


「何を固まっているのですかねぇ、コウタ、レイト、アンナ、ミーナ。今日はクリスマスイブですよ。楽しまなければ損ですよ。」


「学院長先生、私の名前……」


ミーナが目を見開く。そんな彼女の肩をポンと叩くと、優しく笑いかけるサンタ。


「もちろん覚えていますとも、優秀な生徒でしたからねぇ。それにあなたに大切な話があるのです。」


ゴソゴソと後ろの白い袋を漁ると、中から一枚の紙が出てくる。


「これは私からのクリスマスプレゼントです。」


「これって……」


サンタ……エリーン先生が手渡したもの、それは何とハイラスマーレ魔導高等学院の入学許可証。


「どんな事情であれ、辞めたのは自分の意思。途中で投げ出したのはいただけませんねぇ。ですが、国を救った英雄達に頼まれては、仕方ありません。それに、この国は今魔導師不足ですしねぇ。」


パッとこっちを向いたミーナに、今度は俺達が笑いかける。


「何言ってるんですか。エリーン先生もミーナの復学に乗り気だったじゃないですか。」


「海斗、そういうことは言わないのが約束ですよ。」


パッと顔を両手で覆ったミーナを、アンナが抱きしめる。また一緒に学院に通えるんだもんな。そりゃ嬉しいよな。


「ありがとう……みんな、本当に…」


「ミーナにはいっぱいお世話になってるからね。そのお礼だよ!」


その通り。ミーナはもう俺達の大切な友達だ。それに、ミーナのような優秀な魔導師は、学院で学ぶべきだ。


「さぁ、それではクリスマスパーティーを始めましょうねぇ。私はこういうイベントは目一杯楽しむタイプなんですねぇ。

ショーン、そろそろその仏頂面をやめなさい。乾杯の音頭を。」


エリーン先生に言われたら何も言えないよな。俺の顔がニヤリとしたのを見逃さずショーンに睨まれるが、はぁと一つため息をつくと、グラスを上げた。


「それじゃあ、メリークリスマス。」


「「メリークリスマス!!!!」」


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