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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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071 終結


マーレの言う通り、海斗は前の暴走の時と比べて圧倒的に強くなっていた。

あの時は闇のオーラで強化した肉弾戦が主体だったけど、今回はそれ以外の魔法も使っている。


私の盾の裏から飛び出した太陽に対し、距離を取りダークバレットを撃ち込んでくる海斗。バレット(魔法弾)は威力が低い分弾数と速度が売りなのだが、ダークバレットは威力も高い。そもそも闇の魔法は資質を備えた人が少ない上、消費魔力の多さ、身体への負担が大きいため、使い手はほとんどいない。

だが、使いこなせれば無類の戦闘力を発揮する。まさに今の海斗がそれだ。


海斗のバレットに対し、太陽は雷の矢で迎撃を図る。魔法の矢はバレットの上位魔法だが、それでようやく相殺できるところからも、闇の魔法の威力がうかがえる。


お互いにミドルレンジで打ち合う中、私は4体のガーディアンを海斗の方へ飛ばす。捕まえることができれば、わかちゃんの消却魔法と私の封印魔法でゲームセットなのだが、あと5メートルのところで気付かれ、鞭のような物で4体まとめてやられてしまう。


『太陽、海斗の身体から5メートル四方に探知魔法が張られているみたい。』


『だから死角からの魔法にも対応できるのか。どんな探知魔法か分かる?』


こちらも探知魔法で状況を分析する。すると、海斗の身体を中心に円形に薄い闇の魔力の膜が張られていることに気付く。

なるほど、この膜に触れることで、探知することができるのね。なら……


太陽に指示をだし、私は後方からありったけのライトバレットを放つ。しかも全方位から。

全方位からの同時攻撃では、先程の鞭やダークバレットでは防ぎきれない。海斗はドーム型の魔法障壁を張り、ライトバレットを防ぐ。


予想通り。太陽、よろしく!


全方位をカバーするドーム型の障壁は、範囲は広いが、防御力に欠ける。プラス、ライトバレットの光で視界を潰された海斗は、後ろから一点を狙う太陽と、横からせまるわかちゃんに気付いていない。


「ライトニングスパイラル!!」


放たれた雷は、螺旋を描きながら魔法障壁にぶつかる。一点集中型の魔法は、命中率は低いが、その分貫通性能が非常に高い。数秒で障壁を削り取り、貫通した雷を防御しようと、今度は盾の障壁を使う。


「もらったー!!」


咄嗟に盾の障壁を作ったことで、探知魔法が切れたのだろう。わかちゃんは死角から海斗に掴みかかる。


いける。

と思ったがあと数センチの所で、海斗は上に跳び上がり、ライトニングボルトと消却魔法から逃れる。勢い余ったわかちゃんに雷が直撃するが、触れたところからかき消され、ダメージはなかった。


「ごめん若葉、大丈夫か?」


「太陽、気にしないで。私は大丈夫。それより、集中して!」


海斗兄は、空中で姿勢を整えると、また魔力を練り出す。

やっぱりあの機動力は厄介だ。どうしよう……



部屋の灯火は、戦闘の余波で壊れてしまった物が多く、視界が悪い。特に黒いオーラに包まれている海斗を視認するのはなかなかに骨が折れる。

闇属性の魔法は、夜にこそ力を発揮する。つまり、現状は海斗が一番有利なんだ。

夜の闇に対抗するためには……


『太陽、もう一つ試してみたい作戦があるんだけど、まだ魔力は余ってる?』


『大丈夫だよ!何をすればいい??』


私の作戦を聞き、驚き、ニヤリと笑う。我ながらこんな状況でなかなか面白い作戦を考えたものだ。


またしても王様に向かって飛び出した海斗を、イージスで止める。先ほどより威力がある一撃。闇が深まるにつれ、威力が上がっているんだ。早くしなければ。


私は王様の防御に徹しながら、ある魔法を準備する。王様はマーレとショーンさんが守ってくれるけど、自分達でやるって決めたのに、それを頼りにするのは違う気がして。

だから、防御も攻撃もどっちも両立させるんだ!!

大丈夫、私ならできる!!


太陽はというと、魔法陣を発現させ、魔力を集めている。その様子から海斗は何かを察したのか、またしても距離を取り、こちらの出方を伺っている。おかげで私も集中して魔力を練り上げられる。


チャンスは一回。今度こそ。


『里穂姉、準備完了だ。』


『了解!ポイントまでの誘導をお願い。』


太陽と海斗が同時に飛び出し、ぶつかる。太陽の拳が海斗の頬を切り裂き、海斗の蹴りが太陽の脇腹を抉る。やはり身体強化の魔法では海斗の方が上手だ。

でも、太陽には私がついてる。

私は彼の脇腹を一瞬で治療すると、わかちゃんを側に呼ぶ。


「この後、海斗の動きを止めるから、わかちゃんはいつでも海斗に飛びかかれるよう準備してて!」


「分かった!!」


「ライトニングボルト!!ラピッドショット!!」


放たれた無数の雷撃に紛れ、高速の弾丸が海斗を狙う。捌き切れず防御を抜けた魔法が海斗の身体を傷つけ、苦悶の表情を浮かべる。


「うぅ……」


海斗、ごめん。でもあと少しだから、我慢して。

動きの止まった幼なじみを、あらかじめ仕掛けてあった光の鎖で拘束する。闇属性と光属性は相反する。長くは持たずとも、一瞬であれば。

私はそのまま海斗を空中に引き上げた。


「太陽、行くよ!!ミラーシールド!!」


海斗の周りを取り囲むように無数の鏡の盾を敷き詰める。準備はできた。あとは太陽の魔法次第。

太陽は魔法陣を展開させ、魔力を注ぎこむ。

そして、呪文を叫んだ。


「ザ・サン!!」


魔法陣から、極大の火の玉が現れる。あまりの温度の高さに、天井のシャンデリアが溶け出し、天井の大理石は温度変化によりヒビが入る。

その火の玉は、さながらミニ太陽。火属性の極大魔法で、威力と引き換えに、莫大な魔力を持っていかれる上に、コントロールを間違えば、周囲を火の海にしかねない。

この魔法を成功させるなんて、さすが太陽。まあ、できると思ったから、この作戦を提案したんだけどね。


「すげぇ魔法だが……あの火球を海斗にぶつけるつもりか!?ただじゃ済まないぞ……」


ショーンさんが心配するのは当然だ。あの魔法を直接食らって生き残れる人間はおそらく存在しない。纏っている熱の温度は100万℃。どんな金属も一瞬で溶かす熱量だ。

そもそも『ザ・サン』は、広域魔法に分類される。直接ぶつけるには圧倒的に速度が足りず、まず当たらないので、地面に着弾させ、熱線を広範囲にお見舞いする魔法である。


でも、私はそのように使うためにこの大魔法を太陽に使わせたわけじゃない。

じゃあどのように使おうとしているのか……


「うぅ、ぐぅぅう、ぎぃぃうう……」


海斗のうめき声が部屋中に響き渡り、身体にまとった闇のオーラが少しずつ消えていく。と同時に、抵抗がどんどん弱まっていく。


「なるほど、太陽光を反射させて、闇のオーラを弱体化させたのですね。」


大正解。もちろん、擬似太陽といえど本物の太陽に比べたら月とスッポン……いや、そんな言葉では形容し難い差がある。けれど、ミラーシールドで一点に集めることで、日光のそれと同様の光を作ることに成功した。

夜の闇によって、闇の魔力は大きくなる。なら、太陽の光を当てれば、弱体化させることができると考えたのだ。


名付けて、ソーラークッカー作戦!!

ちなみにソーラークッカーとは、太陽光を一点に集めて高温を作り出し、目玉焼きを作ったり、水を沸かしたりする物である。元の世界にいたときに、理科部の友達が作っていたのを思い出したのだ。

今回は高温を作るのではなく集光が目当てなのだが、我ながらなかなかの作戦だと思う。



闇のオーラの大半を失った海斗は、最後の力を振り絞り、オーラを大剣の形状に変化させ、王様とショーンさん、マーレを水平に切断しようとする。

けれど、その刃は彼らに届く前に、1人の少女によって止められる。彼女が触ったところからオーラは消え去り、海斗の力はさらに弱まる。


「ぐぉぉお、王めぇぇ……」


光の鎖で拘束したまま、ゆっくりと地上に降ろす。わかちゃんは闇の刃を消却しながら、近付いていく。そして……


ギュッ……パァン!!


わかちゃんが海斗の身体を抱きしめ、闇のオーラは完全にかき消された。


「里穂姉!!あとはよろしく!!」


「任せて!!ホーリーディバイン!!」


わかちゃんが身体を離すと、入れ替わりで私の封印魔法が炸裂する。表面を覆っていた闇の魔力はわかちゃんが全部消してくれたけど、深層にある闇の魔力はまだ燻っている。その魔力を光の魔力で覆い、押し込めるイメージ。



シューンという音と共に、海斗から闇の魔力が消え去った。いや、正しくは身体の奥底に封印された。穏やかな顔で目を瞑る幼なじみを見て、心の底からほっとする。


「里穂姉、さすが!!もう海斗兄から闇の魔力は感じないよ。」


「里穂姉、ありがとう!!」


ガバッ!2人から同時に抱きつかれ、海斗と共に4人で床に倒れ込む。床には様々な物が散乱しているけど、そんなの全然気にならない。


だって、またみんなで生き残れたから。

王様もショーンさんも、マーレもみんな無事だから。


「私達、今度はやれたね!!」


「うん!」「おう!」


海斗が起きたら、ちゃんと伝えよう。

もう心配しなくて大丈夫。例え闇があなたを覆っても、私達があなたを必ず連れ戻すから。







「本当に自分達だけでやっちまったよ。」


「しかも父上を守りながら……もしかして、私達よりもう強いんじゃないですか?」


「……あいつらの師匠は引退かな?」


はしゃぐ3人プラス1人を遠目に苦笑いの2人に対し、王様は目を細め、フッと笑う。


「最初からわしは言ったはずじゃ。あの子達なら大丈夫だとな。」


大きな満月が、遮る物のなくなった王室を月の光で優しく照らしていた。

その静けさが、戦いの終わりを告げたのであった。






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