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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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68/168

068 完全勝利?

戦闘は中盤戦に差し掛かる。

海斗兄は、圧倒的な身体強化にプラスし、無属性の重力魔法を使って相手の行動範囲を消していっている。

多分決着は時間の問題だろう。相手も強いけど、やはり海斗兄の方が一枚上手だ。

重力魔法は、無属性の数少ない攻撃系魔法で、重力を大きくすることで相手を地面に叩きつけたり、引力で引き寄せたりと様々なことができる魔法だ。熟練の使い手は、ブラックホールのような物を出現させることもできる。


ちなみにこの知識は後に授業で学ぶ知識なのだが、ブラックホールについては別物の知識。

なぜなら、マーレと戦うジェラールが目の前で使っているのだ。2人とも中距離ミドルレンジ主体の魔導師のため、中距離魔法の撃ち合いとなっている。マーレの光属性に対して、相手は無属性。白い閃光と、黒い力の渦が激しくぶつかり合う。


残り2人の貴族については、里穂姉が後方支援に回りながら、太陽がスピードの速い魔法で追い詰めていく。雷の矢が、対抗戦とは比べ物にならないほどの本数、威力で敵に向かって飛んでいく。しかも動きもランダムに。

しかし、相手も百戦錬磨の魔導師。1人が防御に徹し、しっかり撃ち落としながらもう1人の反撃のタイミングを図っている。


「里穂姉!!あいつらの動きを一瞬でいいから止められないか?その隙にトールハンマーを叩き込む!」


「そう言うと思って……」


パチンッと、里穂姉が指を鳴らす。すると、小さな虫のような物(私のところから見ると)が、貴族達に気付かれないように素早くかつ静かに近づいていく。

そして、横に回り込んだところで、エネルギーでできた鞭のような物で相手を一気に捕縛する。


「なんだこれ、いつの間に!」


「しまった!動けない!!」


焦る敵。この一瞬のチャンスを、逃さない。対抗戦の時は詠唱することで魔力を集め、威力をコントロールしていたけれど、進化した太陽は即座に魔法陣を展開することで詠唱という手間を無くす。


「トールハンマー!!」


雷の鉄槌が、貴族を襲う。バリバリッ、ズーンという音、そして眩い閃光。対抗戦の時より規模の小さいそれが収まったときには、貴族はすでに戦闘不能の状態だった。


「里穂姉、さっきの魔法って……」


ちょっと顔をしかめる太陽。対して、里穂姉はペロッと舌を出し苦笑い。


「あの魔法、やっぱりファンクが使ってたガーディアンだよね。でも記憶の中にも同じような魔法が出てきたんだ。それを使ったつもりなんだけど……」


「あんまいい思い出じゃないけど、便利な魔法は使うべきだよな。でも、俺の記憶にはあの魔法はなかったと思うけど。」


ということは、3人に戦い方と数々の魔法を教えたSTORY TELLERは、それぞれにあった戦い方の記憶を見せたということ?

それに、あの本を触ってから、みんな……特に太陽の疲れや魔力が回復したし、やっぱりすごい力を持った本なんだなぁと改めて感じる。私は触ることはできないけど。



これでほぼ結果は決まったと言っても過言ではないだろう。海斗兄と名もなき貴族の戦いは海斗兄が優勢だし、貴族長とマーレ、ショーンさんとフィミールの戦いは互角だけど、この後太陽と里穂姉が参戦する。そうなれば均衡は一気に傾く。


どうやら気付いたのは私だけではないらしい。フィミールもジェラールも一度こちらと距離を取る。


「まずいっすね。俺達だけじゃ、正直この状況はきついっす。」


「……ぅう、出て……くる…な…」


あれ、何かジェラールの様子がおかしい。苦しんでいるというか、何かを抑えているというか……

突如頭を抱えうずくまる男に、マーレは戸惑い攻撃の手が止まる。代わりにショーンさんが広域魔法の雷撃をお見舞いするが、フィミールが作り出した魔法障壁によって防御されてしまった。


「ジェラール様?大丈夫っすか?」


フィミールがショーンさんの猛攻をひたすら凌ぐ中、貴族長に声をかける。が、返答はない。


「マーレ、太陽、里穂!!俺がこいつをを抑えている間に貴族長を倒せ!!

何かは分からないが、チャンスは逃すな!!」


瞬時に3人で作戦を立てる。気持ちを切り替えたマーレが光属性のバインドで拘束し、床に倒れたジェラールに対して、太陽はトールハンマーを、里穂姉は氷結魔法を撃ちこむ。

ガキンッ!!バリバリ、ズーンッ!!

容赦のない一撃は、貴族長を戦闘不能に追い込んだ。





かに見えたが、私は見てしまった。

2人の魔法が直撃する直前に逸らされ、床に直撃したところを。今はトールハンマーで生じた激しい光と床を吹き飛ばした際に飛び散った粉塵や埃で見えないが、多分……いや、絶対に当たってない。


「…えぅ…あ……れ…?」


私は大きな声でこのことを伝えようとするけど、急に声が出せなくなる。

私に魔法は効かないはず。なのに、どうして?

悪寒が走る。何?この空気……


ガンッ!バリバリ!

「くぅ…ちっ、待つっす!」


ショーンさんがついにフィミールに有効な一撃を入れたようだ。右足にサンダースピアが刺さり、動くことができない貴族を横目に、ショーンさんはジェラールのもとへ。そして、未だ地面を吹き飛ばしたことによる埃で視界の悪い箇所に向かって、とどめの一撃と言わんばかりの、雷撃を3発放った。


「くくく、この状況で、容赦ない攻撃。見事な手際だ、姫君とは天と地の差だな。さすが王国最強の魔導師。」


悪寒は勘違いじゃなかった……

私はこの声を知っている……


フッとジェラールのいた場所を中心に衝撃波が広がる。舞い上がった粉塵や雷撃の名残りを吹き飛ばしたその先にいたのは、あの男だった。


「お前、生きていたのか。」


「お久しぶりですね、皆さん。元気でしたか?」


私達がこの世界に来たその日、私達を連れ去ろうとした坊主達のボス。


ヤリスだ。



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