067 決戦、スカイキャッスル
スカイキャッスルには、たくさんの窓がある。その窓に間違えて鳥がぶつかることがある。また、石造のため、風などが吹くと、その石が落ちる可能性もある。そんなものが地面に落ちれば、大惨事だ。
600メートル以上の高さからの落下物はさながら弾丸。だから、この城の外壁、窓ガラスには、強固な魔法障壁が張ってある。普通なら強力な魔導師が束になっても破れない障壁。でも、私にかかれば……
バリーンッ!!
魔法を消却すると同時に、太陽が雷の魔法で窓を内側に吹き飛ばす。
貴族達が驚き、動けない間に、海斗兄が目にも止まらない速さで王様を救出し、窓際に移動する。
割れた窓から、ビュービューと夜風が吹き込んでくるが、今は全く気にならない。
私が王様の拘束具に手を当てると、ピシッという乾いた音ともに、真っ二つに割れた。
「王様、大丈夫ですか?」
「おぉ、若葉が。ありがとう、だいぶ魔力は吸われてしもうたが、身体は大丈夫じゃ。」
よく見ると、至る所に痣や切り傷が見られる。おじいちゃんに暴力を振るうなんて、許せない!!
「またお前達か。この間の一件で分からなかったのか?お前達が踏み入れていいレベルの話じゃないんだぞ。」
青筋を立て、ジェラールはこちらに睨みを効かせてくるが、負けじと睨み返す。それは他の3人も同じ。
もう私達は屈しない。
そんな私達に、そして思い通りにいかないこの状況に貴族長の怒りは最高潮。感情が昂りすぎて、魔力がビシビシと空間を打つ。天窓にはヒビが入り、シャンデリアのいくつかの飾りが破裂する。
すごい魔力。でも、それでも……
「なるほど、分からないようだな。おまえら、教えてやれ。殺しても構わん。」
「任せてください、貴族長。」
「こんな奴ら、3秒もあれば片付けられますよ。」
短髪の男2人が前に出る。どちらも自信満々のようだが……太陽と海斗が一歩前に出る。
「おまえらじゃまだ無理だ。この間戦った殺し屋よりそいつらは強い。俺がやるから下がれ!」
けれど2人は下がらない。魔力が練られ、私でも分かるくらいに濃密さを増していく。
「こいつは俺達が片付けます。ショーンさんとマーレは、いざという時まで、しっかり力を取っておいてください。」
格下だと思われる存在に言われた『片付ける』という言葉がよっぽど心外だったのだろう。
また、自信からくる奢りもあったのだろう。
2人はそれぞれ自分の獲物に狙いを定め、一直線に飛び込んできた。
そこからが早かった。
太陽はまず雷属性の身体強化をかけ、冷静に一撃目をいなす。と同時に、魔法で貴族の動きを一瞬で止めた。
「これは、チェーンバインッ、ガハッ!!」
バキッという鈍い音と共に、強化された蹴りが貴族の鳩尾に食い込む。その威力にチェーンバインドは耐えきれず、引きちぎれたのだが……
シュパッ!
「うぅ、まさか、今度はサークルバインド!?」
吹き飛んだ先で、今度は腕と脚をリング状の光で拘束する。相手に反撃する術を与えないまま、トドメに入る。
シュン、シュン、シュン、シュン、シュン。
拘束され、身動きが取れない男の周りに、小さな魔法陣が展開する。その様子に、やっと自分が置かれた状況を理解したようで、青ざめる貴族。
「た、多重魔法陣だと?そんな高度な魔法、対抗戦では……」
「あの時とはもう違うんだよ。サンダースピア!」
5方向に設置された魔法陣から、槍状の雷が射出された。
「ギャーッッッ!!」
槍は男の身体に突き刺さり、その痛みに絶叫する。でも急所はしっかり外している。
「これで終わりだ。安心しな、殺しはしない。でも、もしまだ何かすると言うなら……」
「ギャッ!や、やめてくれ!」
太陽が拳を握りしめるのと連動して、貴族に刺さったサンダースピアから電流が流れる。男は諦めたようで、萎れたアサガオのようにうなだれる。
一方、海斗兄については、もっと早かった。
相手も強化魔法に自信があるようだったが、海斗兄の強化は桁が違う。
フルスピードで突っ込んできた男の真後ろに一瞬で回り込み、左足で蹴り込む。
ズガンッ!「ガハッ!!」
自分のスピードに蹴られた勢いがプラスされ、そのまま壁に激突する。跳ね返ったところを更に回り込み、今度は正面へ。
「吹っ飛べ。」
右脚を天井目掛け一閃。もろに蹴りを喰らった男は、そのまま天井に突き刺さり、動かなくなった。
文字通りの圧勝。もちろん、軽率に真正面から突っ込んできたあの人達にも、驕りからくる油断という落ち度はあったものの、それだけでは説明のつかない実力差が存在した。
私達4人を除く全員が驚きを隠せない。5秒ほどの空白ののち、ジェラールとフィミールを除く、3人の貴族が魔力を練り始める。
「お前達、油断するなよ!こいつら、対抗戦や墓場の時とは何か違うぞ。」
「承知しています。俺達はあの2人のように油断したりしません。」
強力な魔力を感じる。
でも、これを抑えれば、勝ちが近づく。
顔を合わせ、幼なじみ3人組が頷く。同じタイミングで、2人の貴族が巨大な火球を放ち、1人がジグザグに動きながら突撃してくる。
「イージス!!」
里穂姉が作り出した聖なる盾が2つの火球を見事に受け止める。前に見た時と比べて盾は大きく、何より全く破られそうにない。絶対防御という二つ名に恥じない魔法。
しかし、ジグザグに高速で動く貴族は、イージスの盾をかわし、こちらへ向かってくる。
来るなら来い!!私の消却魔法で魔法を消してやる!!
ガキンッ!
鈍い音と共に、私の3メートル先で海斗兄と貴族の脚がぶつかった。あまりの威力に私のところまで衝撃が及ぶ。
「行かせねーよ。」
「チッ!」
一気に加速し、海斗兄が後ろに回り込もうとするも、貴族はまたしてもジグザグに動き簡単には後ろを取らせない。
スピードは間違いなく海斗兄の方が上なのに!!
太陽は、巨大な火球を放ち反動で動けない男達に接近して、魔法を放とうとするが……
「調子に乗るなよ。」
貴族長が2人の後ろから、太陽に向けて手を挙げた。掌から放たれた黒いモヤモヤが、一直線に幼なじみに迫る。
「そうはさせません!!」
もう一つのイージスが、太陽と貴族長の間に出現し、モヤが衝突し盾の形状に合わせて広がる。
「お前らの相手は俺達だ!」
死角からショーンさんの稲妻のような蹴りが貴族長に迫る。
しかし、あとコンマ数秒のところで、フィミールに止められてしまった。しかも素手で。
「いいっすよ、相手になるっす!」
目にも止まらない技の応酬。1秒間に数十発の打撃の中、雷の矢や稲妻が各方向からフィミールを狙う。対して、その全ての魔法と打撃を、打撃のみで打ち落としていく。
あの人、強い。
ショーンさんと同レベルの動きをしている。ハイラスマーレ国最強の魔導師と互角に戦うなんて。
そういえば、私、なんで見えているんだろう。視力は2.0で自信あるけど、こんなスピードの戦闘を目で終えるなんて……私もパワーアップしたのかな??




