062 本当の目的
「太陽、よく言った!!俺は信じていたぞ!」
バサッバサッ!と翼を羽ばたかせる音。そして、一定の間隔で巻き起こる風。
上を見ると、青い空からドラゴンが2匹降りてくる。
背に跨るはショーンさんとマーレ。2人の表情は対照的で、ショーンさんは笑顔、マーレは心配そうな顔をしている。もちろんどちらも真剣な顔つきだが。
ショーンさんは竜の背から颯爽と飛び降りると、太陽とわかちゃんの頭を強めに撫でる。
「よくやってくれたな!お前達のおかげで、貴族達の優位を消すことができた。今はエリーン先生が指揮を取って、魔導師達がやつらを殲滅しているところだ。」
「エリーン先生も無事なんですね!!良かった!!」
師匠だもんね。にっこり顔のわかちゃんをまたガシガシと撫でるこの国最強の魔導師。
「無事なのは若葉のおかげさ。本当に助かった。
それで、この後俺達はスカイキャッスルに向かう。まだ王はやられていない。今から行けば十分間に合う。」
良かった。まだ王様は生きてるんだ。ホッとする私達に対し、話は続く。
「だが、相手も強大な魔導師だ。正直、人手は多いに越したことはない。特に、お前らのような優秀な魔導師が一緒に戦ってくれると心強い。
海斗、お前もだ。俺はお前を好かんが、その実力は買っているんだ。
だから頼む。力を貸してくれ。」
あのショーンさんが私達……海斗にも頭を下げている。対して太陽とわかちゃんはやる気満々。海斗は……いつもの憎まれ口を叩かず、真剣な表情。
私は……
「すまん、ショーン。俺達は一緒に戦うことはできない。本当に申し訳ない。」
海斗の言葉、そして深々と頭を下げる姿に、その場にいた全員が驚き、顔を見合わせる。
ショーンさんは顔を上げ、海斗をじっと見つめる。
「理由を聞いてもいいか?」
その言葉には、怒りのような、戸惑いのようなものを感じる。対して海斗は頭を下げたまま。
「俺達は……元の世界に生きて帰りたいんだ。
4人揃って。
だから、すまん。」
沈黙。誰一人その場を動かない。
破ったのは、私達をいつも見守って支えてくれた、姫様の言葉だった。
「海斗、頭を上げてください。
謝る必要などないのです。あなた達はこの世界の住人ではない。だから、命をかける理由など無いのです。
むしろ、私達の方こそごめんなさい。」
そして、姫様は海斗を抱きしめる。その時、何かを呟いたような気がしたけれど、聞き取ることはできなかった。
ゆっくり頷く海斗を離し、命の恩人は、私達に笑顔を見せる。
「大丈夫です。私達はこの国最強の魔導師、4賢者です。こんなところで負けません。
しっかり貴族達を倒して帰るので、待っていてください!!」
1匹のドラゴンの背に跨る2人。
もう1匹は私達の移動、逃亡手段のために残してくれるという。わかちゃんは魔法を使っての移動ができないのでとても助かる。
飛び立つ寸前、終始無言だったショーンさんが私に何かを投げ渡した。
これは……鍵?
「学院の図書館に行くんだ。その鍵を渡せば、STORY TELLERを受け取ることができる。もしかしたら元の世界に帰る手がかりが見つかるかもしれない。
太陽。お前に魔法を教えられて良かった。大会の優勝、師として誇らしかったぞ。」
バサッ。大きな音ともに、一気に上昇する。2人の姿が東の空に遠ざかっていくのを見送った後、太陽が海斗に詰め寄る。
「なんで……王様だけじゃなく、ショーンさんやマーレも死んじゃうかもしれないんだぞ!!こんなの海斗兄らしくない!!」
「俺達の目的は元の世界へ帰ることだ。」
睨み合いながら、ぐっと拳を握りしめる2人。
あの場で意見が分かれれば、王様のところに駆けつける時間がどんどん遅くなってしまう。それを考慮して太陽は何も言わなかったのだろうが、本心ではきっと助けに向かいたかったに違いない。
いや、きっとそれは海斗も同じ。
3人には、この世界に来てから感謝しても仕切れないくらいのことをしてもらった。そんな人達のピンチに黙っていられるはずがない。
私の気持ちを察してくれたんだ。
多分間違いない。
「太陽、海斗兄。ここでケンカしても何にもならないよ。とりあえずさ、図書館に行ってみようよ。」
わかちゃんの提案で、お互いにようやく視線を外す。
「ごめん。俺達のこと考えてくれてたのに。」
「いや、俺が勝手に判断しちまったから……すまん。」
ドラゴンの背に4人。ギリギリだがつめることでなんとか全員乗ることができた。そのまま空へ飛び立つ。
コロシアムの天井には所々穴が空き、中の戦いの様子が見える。貴族達の魔法が観客に当たらないよう、エリーン先生が巨大な魔法障壁を張っている。人数は魔導師の方が多そうだが、貴族達は一人一人が強い。どちらが勝つかは今のところわからない。
私を除く3人の『加勢したい。助けたい』という気持ちをひしひしと感じながら、図書館に向けて青い空を駆け抜けた。




