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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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58/168

058 クーデター


シュン、シュン、シュン。


優勝者が決まり、未だ興奮冷めやらぬ会場。


そんな中、突然俺達の周りにフードを被った人達が現れる。

顔は全く見えず、身長や体格もまちまちだ。ただ共通点として、かなり強力な魔力を感じる。



一体何者だ?



咄嗟にアンナを見るが、彼女も全くわからないらしく、不安そうな顔をしている。

と言うことは、例年の大会にはない出来事ということか。いつも通りであれば、アンナは知っているはずだ。


「全く。貴族の面汚しにも程がある。まあ別に期待はしていなかったが……」


フィールドに生じた予想外の出来事にざわつく観客は、会場に響き渡った声によって一斉に静まり返る。


この声を俺は知っている。いや、アンナも知っているようだが、その青ざめた表情からも、国民からもどういう風に思われているかが窺える。


「誰?あの人……」


不安そうに眉をひそめる若葉に小さな声で伝える。


「あいつが貴族長、ジェラールだよ。」


目があった相手を萎縮させる鋭い眼光に、青髪のパーマ。圧倒的な威圧感。間違いない。

そして隣にいるのは貴族長の忠実なるしもべ、フィミール。


「おい、ジェラール。急に現れたあいつらはお前の仲間か?それに、頑張った生徒達になんてこと言いやがる。訂正しろ!!」


同じくスタジアム中に響き渡る声でジェラールに物申すショーンさん。荒々しい口調から、激しい怒りが伝わってくる。

ジェラールは面倒臭そうに一瞥すると、何かを呟く。



シュバッ!!


その瞬間、王様の首が宙を舞った。



あまりの出来事に、誰も声を上げることができない。ショーンさん達ですらだ。

が、またしても予想外のことが起きる。なんと、王様の首と残された身体が跡形もなく消失したのだ。まるで煙が霧散するように。


「やはり幻か。ということは王はスカイキャッスルだな。」


予想していたのか動揺もなく淡々と話す男。対して、怒りに任せ飛び出そうとするハイラスマーレ国最強の魔導師を、マーレが必死に止める。


「てめぇ、何してるのか分かってんのか!?」


「待ってください!ショーン、何か様子がおかしいです。」


そういえばたしかに何かおかしい。魔力がとどめられているというか、なんというか。この感じ、どこかで……


だが、マーレの静止を振り切り、ショーンさんが飛び出す。一瞬で距離を詰め、雷を纏った全力の拳を叩き込む。


ガンッ!!

その拳はフィミールを含めた3人の防御障壁に止められる。それでも止まらず、攻撃を続けるショーンさんに、ジリジリ押し込まれる貴族達。凄まじい連打だ。


「ショーン、幻を消されたくらいでそこまで怒るな。それに、今俺に楯突くと、まずいことになるぞ。」


ジェラールが指をパチンッと鳴らした。すると、スクリーンの頭上にノータイムで巨大な氷塊が現れた。全長30メートル、いやもっとあるか?


その圧倒的な大きさに誰しもが凍りつく。


あんな物が人の上に落ちたら……しかし最悪の想定は現実になる。

氷塊はゆっくりと、けれど確実に落下し始めた。


「まずいですねぇ。マーレ、皆を守りますよ。」


「はいっ!!」


2人が即座に防御障壁を展開する。

幸いにもスクリーンの近くには観客はほとんどおらず、直撃することはなかったが、スクリーンが粉々に破壊された。

飛び散る破片から観客を守るマーレとエリーン先生に、魔導師達も加わる。


舞い上がった破片や埃が収まった後、貴族長はため息をついた。


「お前のせいだぞ、ショーン。お前が俺に楯突かなければ、こんなことにはならなかったんだ。ちゃんと人の話は聞いた方がいい。でなけば次は観客の真上に落とす。」


ショーンさんは、攻撃をやめジェラールをありったけの怒りを込めて睨みつける。


「さて、国民の諸君。見ての通り、我々貴族は今の王政に対して反旗を翻すこととした。ようは革命だ。」


革命…いや違う。これはクーデターだ。元の世界、俺達の住む国では聞きなれない言葉だが、意味は分かる。

貴族長は言葉を続ける。


「ここにいる諸君は、文字通りの人質だ。無駄な抵抗はよせ。この会場にはそこら中に貴族が紛れている。そして何より、この会場は魔法陣によって外界と完全に隔離されている。」


そうか。

この感じ、あの墓場と一緒だったんだ。けれど、俺達がここに帰って来た時にはもちろん魔法陣は発動していなかった。

いや、そもそも違和感を感じたのは対抗戦が終わった後だ。それに俺が感じるということは、ショーンさんやマーレも気付いているはず。

ということは、そんな短時間で魔法陣を発動したということか、しかもこんな巨大な建物をすっぽり覆うほどの。


「この魔法陣があれば、ほぼノータイム、無詠唱で先程のような大魔法を撃つことができる。

無駄な殺戮をするつもりはないが、容赦もするつもりはない。」


ぎゅーっと握る若葉の手のひらが小刻みに震えている。いや、きっと俺も同じだ。



怖い。



俺達の命、いや、ほとんどの国民の命は、貴族に握られているのだ。


『そういうことなので、無駄なことはしない方がいいっすよ。』


『フィミール!!』


観客席とスタジアム内は念話が繋がらないはずなのだが、なぜか憎き男の声が頭の中に響く。俺はジェラールの隣の男を睨みつける。


『そんな睨まないでくださいっす。それにしても、あの殺し屋2人を倒すなんて驚きっすよ。俺の予想通り、侮れない人達っすね。』


『何のようだ。俺とこんな話してていいのか?』


こいつとはできる限り話さない方がいい。また騙されかねないからな。俺の疑いを察したのだろう。肩をすくめるのが見える。


『まあ、今回ばかりは君達の出番はないっす。今回の魔法陣は墓場の魔法陣とは次元が違うっすからね。4賢者といえど、破るには数日かかるっす。諦めるんっすね。』


確かにフィミールの言う通りなのだろう。強力な魔力をスタジアムの外側から感じる。


「さて、そろそろ俺は行くとしよう。王が城でお待ちかねだ。

いいか、俺がいなくとも、ここにいる貴族達はいつでもお前達を殺し尽くせるということを忘れるな。」


ジェラールはそれだけ言うと、フィミールを含めた数人の貴族を連れて会場の出口から出て行った。


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