057 高等学院生徒対抗戦⑥
会場から電気エネルギーが地面や空気中に吸収され、幻想的な風景は元に戻りつつある。
さあ、最後の戦いだ。
もう魔力はほとんど底を尽きており、バレットですらまともに撃つ自信はない。
けれど、優勝すると約束したから。
俺はゆっくり息を吐くと、恩人にして最強のライバルである彼女と向き合った。
「アンナ、本当にありがとう。おかげで貴族達を倒すことができた。
さあ、あと残りは俺達だけだ。決着をつけよう。」
若葉の消却魔法があればあるいは。
いや、もう幼なじみもほとんど動くことができないだろう。
どうすれば勝てるか頭の中をフル回転させる俺に対し、アンナはフッと笑顔を見せた。
「太陽君、若葉ちゃん。私は2人のおかげで貴族達と戦うことができた。2人に……ううん、海斗君と里穂ちゃんの4人に勇気をもらったから。だから、もういいの。」
そして、俺と若葉の間に立つと、俺達の手を握り、振り上げる。
「みなさん、聞いてください!!私はこの大会を棄権します。優勝は太陽君と若葉ちゃんです!!」
未だに静まり返ったままの会場。そして次の瞬間、破裂するような大歓声に包まれた。
「おめでとう!」「2人で優勝するなんて!」「トールハンマー、痺れたぜ!!」
様々な声が聞こえる中、もう一度アンナの方をじっと見る俺と若葉。
「ありがとう、アンナちゃん!!
……でも、本当にいいの?」
「もちろん!むしろ私の方がありがとうだよ。それに、私がSTORY TELLERをもらっても、絶対にうまく使いこなせない。きっと押し潰されちゃうと思うから。
だから、太陽君達みたいな強い心を持った人が持つべきだよ!!」
強い心を持ってるなんて大袈裟だ。すぐに落ち込むし、クヨクヨするし、心が折れることもある。
でも、そうやって言ってもらえることは嬉しかった。そうやって見てくれる人がいるのであれば、応えたいと思えるから。
頑張らないとな。
「分かった。アンナ、本当にありがとな。」
「うん!!優勝おめでとう!!」
心の底から俺達を祝福してくれていることが、アンナの笑顔から伝わってきた。
一息つき観客席の方を見ると、ショーンさん達の方に自然と目線がいった。
ショーンさんはやるじゃんというような顔をしており、その横でエリーン先生とマーレが何か言っている。きっとあんな危険な魔法を教えるなんて、とか言ってるんだろうな。ショーンさんは全く気にしてないみたいだけど。
そして王様の笑顔。
『信じていたよ。』
そんな声が聞こえたような気がした。観客席から会場内へは念話をつなぐことはできない。でも、多分、いや絶対。
俺はにっこり笑うと、Vサインをした。それに呼応してまたしても歓声が上がる。
「やったね、太陽!!私達、優勝だよ!!」
身体中に痛々しいケガをしながらも、満面の笑みの若葉。そんな彼女を、俺はギュッと抱きしめた。
やったよ、海斗兄、里穂姉。
俺達、ちゃんと約束を守ったよ。




