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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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054 高等学院生徒対抗戦③

魔法陣を出た瞬間、待っていたのは、魔法の集中砲火。俺は身体強化の魔法を付与し、様々な種類の魔法を避けながら一気に魔法陣から距離をとった。全てをかわすことは出来ず所々傷を負ったものの、想定の範囲内。

距離を取ったことにより、一旦集中砲火が止まる。


「随分と長く話していたが、あの茶髪、お前の妻かなんかか?」


「ここにきて恋バナか?お前らにはどう見えた?」


敢えて話を続けることで、今の状況を把握する時間を作る。

布陣は三角形のスタンダードなもの。中央のハウゲンが確かクロスレンジ(近距離)、ミドルレンジ(中距離)型の地属性使いだったはず。右後方のロンヌが付与魔法と補助魔法。左後方のメガロがロングレンジ(遠距離)で様々な属性の魔法を放ってくる感じか。

なるほど、よくバランスが取れている。これはなかなか崩すのに骨が折れそうだ。


「まあどうでもいいんだけどさ。大切な存在なんだったら、お前を潰した後、じっくり痛ぶってやんなきゃなと思ってさ。あの可愛い顔がどうやって歪むのか、どんな悲鳴が聞けるのか、今から楽しみだよ。」


真性のクズ野郎だな、こいつは。


またしても怒りが沸々と込み上げてくるが、深呼吸をして切り替える。冷静にならなければ、勝てるものも勝てなくなる。


まずはもう一度だけ雷の魔法が通るかどうか確認したい。ただ、無駄撃ちは今の疲労度的に避けたいところだ。流れに組み込みながらやってみるしかない。


「お前らは、負けた時の言い訳だけ考えておきな!!」


開口一番、一気にハウゲンに接近する。

身体強化に雷の魔力を組み合わせ、稲妻の速さで蹴りを繰り出す。


ズガンッ!


蹴りはロンヌの障壁に阻まれ威力が削がれるが、そのまま構わず打ち抜いた。

入る!!と思ったが、威力の落ちた蹴りは、ハウゲンの膝でガードされる。本来であれば、雷の付与効果があるため、電撃でダメージを与えられるのだが、膝に触れた瞬間雷の魔力が吸収され、ただの蹴りに変わる。

魔法を使っている様子はなかった。やはりこいつら、雷属性の魔法を吸収する魔道具を身につけているな。


脚同士がぶつかり合い、動きが止まった俺を、炎属性のバレットが襲う。バレットは威力の低い小型魔力弾のことだが、スピードが速く弾数が多いため、牽制や誘導に使われる。


ハウゲンと一旦距離をとり、雷の矢でバレットを撃ち落とす。貫通した矢はメガロを狙うが、当の本人は余裕な表情だ。


どうせ吸収できると思ってるんだろ?でもな、そうはさせないよ。

パンッ、パンッパーン!!

直前で雷の矢を破裂させ、視界を潰す。

そのまま攻撃を受けると踏んだのであろう。ロンヌがメガロに障壁を張るが、そっちは囮だ。

本命のロンヌに接近し、氷結魔法をゼロ距離で放つ。1人目っ!!


ガキガキーン!!

氷結魔法は確かに狙った場所を一瞬で凍らせた。だが、手応えがない。


ガガガガガッ

前後左右から出現した土の壁が、俺を潰そうと襲いかかる。咄嗟に上に跳び事なきを得たが、空中では身動きが取れず、メガロの水属性のバレットに撃ち抜かれる。


「ぐっ、つぅ…!」


撃たれた腹部に鈍痛が走る。威力が低いとは言え、モロに直撃すればダメージは避けられない。

ガキン!ガキン!

更に、着地したところを地面から出現した魔力で作られた鎖に拘束されてしまった。これは……ロンヌの魔法か!?

やっぱり捉えきれていなかった。


「地中に逃げたのか。」


穴のなか中からロンヌが這い出てくる。ハウゲンは鼻高々だ。


「ご明察。俺の魔法で、氷漬けになる前に地中に逃したのさ。いい線いってたが、残念だったな。

さて、ようやく捕まえたわけだが、どうして欲しい?」


パーンッ!

俺は何も答えず、鎖に大量の魔力を流し込み爆散させる。

鎖の支えがなくなり、少しふらつく。まだ魔力には余裕があるが……そろそろなんとかしなければ。


勝負に出よう。

覚悟を決め、鳥の形をした炎を3匹生み出す。火属性の魔法は威力は高いのだが、スピードに欠ける。だから……


「アースクエイク!!」


地属性の広域型振動魔法。震度7クラスの揺れで相手の動きを止める魔法だが、ハウゲンは地属性の魔導師。対処の仕方はもちろん知っているはず。


「俺に地属性の魔法とか、舐めてんのか?アースクエイク!!」


予想通り、同じ魔法を繰り出し相殺を狙ってくる。向こうは相殺でいいのだ。こちらの動きさえ止めれば、残りの2人が煮るなり焼くなり好きにできる。


「自ら足を止めるなんて、自殺行為ね。」


ここぞとばかりに、メガロが風の刃を繰り出す。バレットとは違い、殺傷力の高い魔法。喰らえば一発アウトだ。しかし、アースクエイクを使っている限りは、動くことは出来ない。解除すれば、今度はハウゲンのアースクエイクを喰らい、行動不能になる。

決まった。と、あいつらは思っただろう。


その瞬間を待っていたんだ!!


俺は魔法を解除する。


「今更解除したところで逃げられないわ。終わりよ!!」


地面の上では、確かに逃げられない。

地面の上ならな。


うらぁ!!

バスケで鍛えた持ち前のジャンプ力で、上に跳び上がる。とは言え、風の刃の射線からは逃れられない。

そこで、俺は自分の足に雷の魔力を付与する。そして、その魔力をある力に変換する。


「嘘でしょ??まさか……」


その力を使って、風の刃が届かない位置まで上昇する。呆気に取られたメガロは、重要な物から意識を切ってしまう。

気付いた時には、それは目の前に迫っていた。


「や、やばい、ロンヌ!助けて!!」


火の鳥は、メガロめがけて一直線に飛んでいき、直撃する。

かに見えたが、間一髪のところでロンヌが水の壁を出現させた。

ジュワー、ジュジュッ!ジュ!!


ギリギリ凌ぎ切り、安心するメガロとロンヌ。

だが俺はここまでしっかり予想していた。先程と同じく、一発目の火の鳥は囮。違いと言えば。


「待って!!私は今、魔法を使えない!!ハウゲン!お願い!!」


「無理だ!アースクエイクの反動で、まだ魔力が溜まらねー!!」


ハウゲンが地面に穴を開けて逃す魔法を使えないこと。あの魔法は、かなりの魔力を使うのだろう。


「いやーっ!!ぎゃっ!」


ボボボッ、ボゥ!!

火の鳥はロンヌを捉え、しっかりと意識を刈り取った。よし、残り2人!!


なぜ先程のたかだか宙に浮く魔法に、やつらが面食らっていたか。

それは俺がアースクエイクの魔法からロスタイムなしに飛行魔法に繋げたからだ。飛行魔法は魔法の中でも特に大容量の魔力を使う魔法。アースクエイクから連続で使うなんて不可能なのだ。

実はこれは俺も一緒で、いくら魔力があろうが、そんな力技は普通できない。

そもそも、俺が使ったのは飛行魔法ではないのだ。この魔法は、ショーンさん直伝の魔法。その名も『磁力浮遊』

雷の魔力を磁力に変換し、同じく地面に付与した磁力との反発で浮かび上がるというものだ。一見すると莫大な魔力を使いそうに見えるが、地面に磁力を帯びさせるのはそこまで大変なことではない。俺の場合は自分の真下だけだし。

ちなみに、ショーンさんは、これを応用して自由に空を飛び回ることができるのだが、まだそこまでのコントロールは俺にはできない。


仲間がやられたことに、呆気に取られるメガロ。その隙に、最後に残った火の鳥を差し向ける。


「ちっ、ボヤッとするな!やられれるぞ!」


ハウゲンは岩の塊を右手から発射し、火の鳥を撃ち落とす。

そううまくはいかないか。俺は磁力を解除し、降下し始める。


状況はだいぶ良くなった。3対1と、2対1では、月とスッポンの差だ。

けれど、地面に着地した俺に待っていたのは、激しい目眩と体のだるさ。

思わず地面に片手をつく。呼吸が早い……これはまずいぞ。

本来であれば、動揺する相手を畳み掛ける絶好の機会。けれど、体が思うように動かないのだ。これじゃあ、奴らを勢いづかせてしまう。

現に俺の様子を見たハウゲンは、余裕の表情を取り戻しつつある。


「ロンヌがやられるとはな。予想外だよ、本当に。だが、最早お前の体力も風前の灯火。メガロ、そろそろ終わらせるぞ!!」


「分かったわ。ロンヌの仇、打たせてもらうよ!」


ガガガ、ガンッガンッ!ヒュシューン!

間一髪、展開した障壁に様々な色の魔法弾、光線、弾丸のような岩や石がぶつかる。

バレットとは違い、一発一発が致命傷になりかねない威力の魔法。

障壁が間に合わなかったらと考えると、ゾッとする。

大会のルールで死に至らしめるような危険な魔法は反則となっていたが、審判もいないこの戦いで、誰が判断するのだろうか。

もしかして誰かが死んだから反則……とかいう物騒なルールなのか?


ハウゲンとメガロは、代わる代わる魔法を撃ってくるため、息をつく暇もない。

里穂姉の様々な属性の障壁とは違って、俺の障壁は無属性。強固だが、魔力消費が多く、得意な属性もないので、魔法を喰らうたびにどんどん削られていく。


ガガッ、ヒュンッ!ビッ!!ビッ!


「いっつ!」


障壁の綻びから飛んできた石に、右の頬と左のふくらはぎを切り裂かれる。

やばい、本当にそろそろ限界だ。


くそっ、優勝するとか息巻いていたくせに、本当に自分が情けない。

墓地の一件以来、できる限りのことはやってきたはずだ。海斗兄と里穂姉に追いつきたくて。足を引っ張るのは、もう嫌で。

でも、たかが2週間。魔法を学んでからは2ヶ月。



やっぱり俺はいつも考えが甘すぎる。



周りにあった岩には大穴が空き、地面にも小さなクレーターがいくつもできている。そして、俺の魔法障壁にも。

あんなに聞こえていた歓声は、いつの間にか緊張する息遣いへと変わり、勝負の決着を今か今かと待ち望んでいるかのようだ。


「次で終わりだ。何か言い残すことはあるか?」


魔力がゆっくりと、だが着実に溜まっていくのが分かる。こんなに隙がある魔法、本来なら反撃のチャンスとなるはずだが、もう、その力は残っていない。


「……」


何も言わない俺を見下ろし、捨て台詞を吐き捨てる。


「もし死んじまったら、まあ運が悪かったと思ってくれ。貴族に楯突いた罰だ。」


男の手から一直線に伸び、回転する螺旋状の岩は、さながらドリル。


あの魔法、直撃したら本当に死ぬかもしれないなぁ。

自分のことなのに、もうよく考えられない。



海斗兄、里穂姉、約束守れなくてごめん。


若葉……ごめん…



放たれたドリルは俺に向かって一直線に飛んだ。そして、障壁を突き破り体のど真ん中を一瞬で貫いた。


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