052 高等学院生徒対抗戦①
カーンッ!!
ゴングと共に太陽が私の手を引き、壁際に走り出す。私に触れることで、太陽は魔法を使うことは出来なくなる。でも、そんなことはお構いなしだ。
幸いなことに、壁に着くまでの10秒間、誰かに攻撃されるということはなかった。
どのチームもまだ様子見の段階らしい。
多少の破裂音や、閃光は見えるものの、どれも散発的で牽制だということが分かる。
「どうするの?ここじゃ、逃げ場がないよ。」
「大丈夫。ここなら背後はとられないし、若葉のことも守りやすいから。」
先程からの『守る』発言に、繋がれた手。こんな状況なのにドキドキして顔が赤くなってしまう私。心臓の音が聞こえてないか少し心配になるくらい。
いやだってさ、うん。恥ずかしいけど、嬉しいんだもん。
何かがぶつかり合うような大きな音が反対側の方から聞こえて驚く。段々戦闘が本格化してきたみたいだ。
シューンッ!!
突然、右前方向から、風が矢のように回転しながら猛スピードで飛んでくる。と同時に、左方向からも火の玉。
私はとっさに左手を上げ、火の玉を消そうとするが、風の矢は雷の矢に、火の玉は水柱に、どちらも5mほど前でかき消された。
「やるじゃねーか。2人で参加してるって聞いたから、どんなバカかと思って……」
岩の間から出てきた男が、最後まで言葉を言い終わる前に雷の奔流で吹き飛ばされる。
火の玉を撃ったのは女の人だったらしい。甲高い悲鳴と共に、飛んできた雷の矢に貫かれ、意識を失った。
「あとは……この辺かな?」
太陽は一言呟くと、右手を上に挙げる。そこから放たれた鳥の形をした炎の塊が、小屋の中に隠れていた残りの2人を正確に捉え、戦闘不能に追いやった。
……あのぉ、太陽さん、強すぎませんか。
いや、最近頑張ってたのは知ってたよ。魔力制御も日に日に上達してるのは、私にも分かるくらいだったし。
でも、ここまで強くなってたの!?
「若葉、口開いてる。ちゃんと閉めときなさい。」
太陽が私の頭をポンと叩き、ニヤリと笑う。
「さぁ、どんどん行こうか。若葉、俺の勇姿、しっかり里穂姉と海斗兄にも伝えてね。」
私は驚きのあまり、ただコクコクと首を縦に振ることしかできなかった。
それから10分。2人チームということで、狙い目とばかりにやってきた3チーム、計12人を文字通り瞬殺(気絶ね)したところで、急に攻め手が止んだ。どうやら、太陽の強さが知れ渡ったようだ。
ここから停滞するのかな……と思っていたら。
「里穂姉と海斗兄も頑張ってんだ。こっちもさっさと終わらせるぞ!!」
今までとは打って変わって、詠唱を始める太陽。
基本的に魔法は無詠唱で撃てるんだけど、威力を高めたり範囲を広げたり、精密なコントロールが必要な時には呪文を唱えるらしい。これが詠唱魔法。と里穂姉が言ってた。
魔力が太陽の周囲に集まり出した。それらが呪文により雷エネルギーに変換され、バチバチと音を鳴らす。
「雷よ、狙いし標的を貫け!!」
長い詠唱の後、最後に腕を振り下ろす。
振り下ろされた掌から放たれた青い雷は、中央の鉄塔に向かって進んでいき、一瞬で頂上部まで駆け巡った後、瞬く間にフィールド全体に広がった。
電撃が直撃した場所から、叫び声や悲鳴、炸裂音が聞こえてくる。
5秒後、青白い光が消え、静寂に包まれた。観客も何が起きたのか分からず、固まってしまったらしい。次に聞こえてきたのは、解説の声だった。
「すごい、すごすぎます!!1年生の太陽選手、広域魔法でほとんどのチームを戦闘不能にしてしまいました。
開始20分にして、残り4チームです!!しかも残ったチームの内、3チームが1年生。これは4賢者のショーン様やマーレ姫が所属していたい時以来の事態です!!」
ドワッ!!
許容量を超え破裂した風船のような、歓声とどよめきが上がり、「かっこいい!」「すごい!」という声が観客席の至る所から聞こえてくる。
圧倒的な強さ。見ている側にとって、これほどまでに痛快なことはない。次は何をしてくれるのだろうか。期待感が高まる会場。




