051 開戦
「なんで太陽と若葉しかいないの!?海斗と里穂はどこに行ったのですか!?
……また何かあったんだわ……」
なんであの人達は、次から次へと何かに巻き込まれてしまうのだろう。いや、次から次へと何かが巻き起こるこの国がおかしいんだわ。
日に日に国が歪みつつあることに、心が痛む。だって、私は王妃なのだから。こうなってしまったのは私の責任でもある。
あからさまに落ち込み、同時に焦るマーレを、ショーンが慰める。
「まあ大丈夫さ。曲がりなりにも、一流の殺し屋2人を相手に生き延びたんだぜ。
前回のことがあった上で、俺達に連絡してこないんだ。それなりの理由があるんだろ。」
なんでショーンはこんなに落ち着いていられるの?
何かあったことは間違い無いわけですし、対抗戦だって太陽達が負けたらSTORY TELLERが他の人に渡ってしまうのですよ。
という私の心をしっかり読み取ったようで。
「対抗戦についても、あの2人なら何とかなるさ。ここ最近の太陽の成長、すごいんだぜ。」
「私が教えていた時より遥かに伸びてますよね。へこみます……」
どうせ私、教えるのも下手ですよ。
なんて拗ねていると、後ろの席からエリーン先生に後頭部を軽く叩かれた。
「マーレ、人に教えるのはそう簡単なことではないのです。それに相性もありますしねぇ。あなたが里穂と波長が合うように、ショーンは太陽と波長が合うということです。」
「エリーン先生、ちなみに若葉は対抗戦では活躍できそうですか?」
「バカなことを言わないでください、ショーン。若葉の魔法をこんな大観衆の前で見せられるわけないでしょうに。」
まあ、そうですよね。国が……いや、世界がひっくり返るような魔法ですし。
ということは、太陽1人で対抗戦に臨むということですか……
3人の会話を横で聞いていた王様……お父様は、こんな状況でもいつもと変わらず余裕な表情。この状況をまずいと思っているのは、私だけのようですね。
はぁ…胃に穴が空きそう……
「とりあえず太陽と若葉の頑張りを見てみようじゃないか。なぁに、万が一思った方向に進まなければ、わしの魔法でチョチョイのちょいじゃ。」
お父様……それは八百長ですよ。
太陽、若葉、本当にお願いします。
円形のフィールドには、大小の岩や池の他に、民家やブロックなどの人工物が配置されている。様々な状況下での戦闘ができるようになっているようだ。
1番高い構造物は中央にそびえ立つ鉄塔であり、高さが20m近くある。あの上からなら、フィールドの全てが見渡せるだろう。
ルールは簡単、最後まで生き残った選手のいるチームが優勝。反則行為は、場外(上も含む)に出ることと、相手に大怪我を負わせるような危険行為をすること。
なんとかなるだろう、という漠然とした自信が俺にはあった。
もちろん、人数的には圧倒的に不利だ。ほとんどのチームは4人編成のフルメンバーなわけだし、若葉の魔法は大っぴらに見せることはできない。つまり実質戦えるのは俺1人なわけだ。
でも、相手チームからは特にこれといった強さは感じなかった。
墓場での戦闘。殺し屋から感じた圧倒的な殺意。
ショーンさんから感じた圧倒的な威圧感。
それらに比べれば、こんなのプレッシャーでもなんでもない。
「若葉、大丈夫だ。お前には指一本触れさせないから。しっかり俺の後ろに隠れてるんだぞ。」
不安からか、いつも以上に眉毛がへの字になっている幼なじみ。感情がすぐ顔に出るのは昔からだ。
里穂姉、海斗兄……あの2人なら、絶対にミサちゃんと店主さんを救出してくれるはず。
俺ができることは、ここでしっかり優勝して、ストーリーテラーを手に入れること。
そして、元の世界へ帰ること。
さあ行こう。全員かかってこい!!




