048 玉入れ
ここはセンターコロシアムの外周部分。造りとしては、中央が競技場になっており、その周りに観客席が段々に設置してある。前の席はまるで自分が参加しているかのような臨場感を味わえるが、とんでもない金額で取引されるらしい。学生の大会で金儲けをしようとは……まったく。
外周部分というのは、観客席の上に設置された通路のような場所で、お手洗いだったり、出店が出ていたりする。
コロシアムと言ってはいるが、実際には天井がついており、風の魔法で膨らませているらしい。つまり、元の世界の帝都ドームと同じような造りだ。ただし大きく違うところは天井が見えないところ。空を綺麗に見ることができるのだ。本当に魔法ってすごい!!
ちなみに、私は何度かお父さんに連れられて帝都ドームに野球を見に行ったことがある。あの時に食べたかき氷、美味しかったなぁ。
競技はすでに始まっているため、時折大きな歓声やどよめきが聞こえてくる。噂には聞いていたけど、すごい盛り上がりだ。
「さて、俺達の競技まではまだ時間があるけど、どうする?屋台でもまわるか?」
「いいねー!やっぱりお祭りと言ったら焼きそばでしょ!!」
相変わらず男性陣は食い意地張ってるなぁ。だけど、お祭りと言ったら綿飴とかき氷とリンゴ飴でしょ!!
なんて私も人のことは言えず頭の中で食い意地を張っていたら、前の2人が里穂姉にごつかれる。
「太陽も海斗も、食べることしか考えてないの?あと少しで本番よ!やることもっとあるでしょ!」
里穂姉って基本的に完全無欠なんだけど、その分本番前とかとっても緊張するんだよね。それでもしっかり結果を出すところはさすがなんだけど。
しかし、緊張で表情が硬いお姉様に対し、デリカシーのない発言を続けるお兄様。
「そうだ!射的と金魚すくいを忘れてた!」
パキーン!
空気を裂くような高音と共に、海斗兄の右手が凍りつく……里穂姉怖いよぉ…
「里穂姉、今から何かしても変わらないよ。もっとリラックスリラックス。」
慌てふためく海斗兄の凍った右腕を、炎の魔法で少しずつ溶かしていく太陽。
すごい魔力コントロール……
1ヶ月前では考えられないような繊細な魔法。素人の私から見ても、その成長には驚きしかない。
墓地の一件以降、太陽は毎日ショーンさんのところへ行き、教えを乞い、それ以外の時間はひたすら魔力コントロールの練習に励んでいた。
「海斗兄は、殺し屋の1人を身を呈して戦闘不能まで追い込んだ。里穂姉は俺達を命懸けで守ってくれた。それに比べて俺は……」
里穂姉と海斗兄がいない時に、つぶやいた一言。強くなりたいという気持ちがにじみ出ていた。
その後すぐに行動に移せるところが太陽のすごいところなんだけど、まさかこんなにも早く成長するなんて。
それに比べて私は……
大事な時に、みんなと一緒にいることもできなかった……
「わかちゃんも緊張してるの?ほんと海斗って空気読めないよね!」
「えっ、あっ、うん。海斗兄、あんまりデリカシーのないこと言ってると、その内誰かに刺されるよ!」
「それこっちの世界に来る前にも若葉に言われたよな。懐かしいな、もう2ヶ月以上経つんだもんな。」
そういえば、確かに言ったような記憶が……
あれは確か……
「んで、どうする?なんならちょっと競技見ていくか?
元の世界に戻った時、レクとかで使えるかもよ?」
私の思考は、太陽のおもしろ発言に持っていかれてしまった。
確かに何かしていないと里穂姉の精神が崩壊しそうだったので、とりあえず好きな物を買って、競技を観戦することにした。
今行われているのは、玉入れ。とは言ってもただの玉入れではなく、玉に直接触れることは出来ず、魔法で飛ばしてカゴの中に入れるというものだ。
ちなみにカゴは竹製で、玉は紅白のお手玉と、道具に関しては元の世界の物に類似している。
本当に不思議。魔法さえなければ、私達の世界とほとんど変わらないように見える。
結果、218対198で紅のチームが勝利し、歓声が上がる。こんな点数、見たことないや。元の世界では、玉入れは大体低学年がやる競技だし、多くても30個くらいだ。218個……一つずつ数えたら何分かかるんだろう。
なんておバカな想像をしていると、急に隣の3人の表情が真剣なものに変わった。
「わかちゃん、フローズンフローズンに行くよ!理由は移動しながら説明するね!」
ただならぬ雰囲気。里穂姉の表情が緊張から怒りと戸惑いが混ざり合ったものに変わる。
一体何があったんだろう。
早足で座席を立つ3人に続いて、私も席を後にした。




