045 墓地での戦い④
ガラガラッガガッガーン!!
雷の本流が光の束になり、男を包み込んだ。
「ぐわっっ!!」
俺は里穂姉の真横に叩きつけられる。あまりの衝撃に、肺が潰され呼吸が止まる。しかし、そのまま寝ているわけにはいかない。体を無理やり起こし、里穂姉の姿を確認する。
「り、里穂姉?どうしたの?」
里穂姉は地面にしゃがみ込み、脇腹を抑えていた。
「はっ、はっ……はぁ、はぁっ…いやぁ、痛い、痛いよぉ…」
涙をポロポロ流しながら、歯を食いしばっている里穂姉。口の端からは涎が糸を引いて地面に落ちていく。体はぶるぶると震えており、素人の俺が見てもまずい状況だというこは一目でわかった。
と、服の脇腹の部分がみるみる内に真っ赤に染まっていく。
「ちょっと待って!今治療するから!」
回復魔法は正直苦手だ。何度か学校でやったことがあるのだが、魔力コントロールが極端に難しく上手くいったためしがない。
けれど一刻を争う状況だ。出来なければ最悪の場合里穂姉が死んでしまうかもしれない。
それだけは……それだけは絶対にダメだ!!
脇腹の服をめくると、刀で刺されたような傷がある。ここから出血しているのか。かなり深そうだ……
傷口に手を当て、魔力を流し込む。傷が塞がる様子をイメージするが、出血は一向に止まらない。
「あぁっっ、痛い……太陽、海斗……わかちゃん、助けてぇ……お願いぃ、痛いよぉ。」
「くっそ、なんで傷が治らねーんだ!頼むから塞がってくれよ。」
俺は少しでも血が止まるよう傷口を手で強く押さえる。
そもそもどうして急にこんなことになったんだ?里穂姉はあいつの魔法を完璧に防御してた。それなのにこんな重傷を負うなんて……
「なるほど……彼女はまたすごい魔法を使っていたようですね。」
「何っ!?」
この声、まさか!?
あり得ないと思いつつ、前を見るとそこには男が立っていた。左腕が無くなっているが、それ以外にダメージはないようで、冷ややかな目線を送ってくる。
「彼女の悲鳴がなければ、今頃私はこの世にいないでしょうね。現に、私の左腕はきみの魔法によって跡形もなく消えてしまったようです。」
くそっ、こんな状況であいつがまだ生きていたなんて。里穂姉はこんな状態だし、俺も残りの魔力は僅かだ。左腕は吹き飛ばしたものの、あの感じ……男はまだ戦えそうだ。
「すごい魔法って、里穂姉はなんの魔法を使ったんだ?」
少しでも時間稼ぎができるよう、そして里穂姉をなんとか助けられるよう、やつに問いかける。
「教えてあげましょう。その方があなた達が苦しむでしょうし。彼女が使っていた魔法は、自動回復なんてやわな代物ではありません。他人が受けたダメージを肩代わりする魔法です。」
「かた……がわり?」
思考がうまくついていかない。まさか、そんなことって……
「回復魔法というのは、距離が離れれば離れるほど効果が薄れるものです。だから彼女は君たち2人が受けたダメージを自分の体に移し、自分の体を回復させていたのですよ。
ただ、その様子を見ると、ダメージの蓄積が上限を超えたようですね。死ぬほどの苦しみを味わっているようですよ。」
ということは、俺の体に空いた穴がすぐに治ったのは、里穂姉が肩代わりしてくれたからってことか?
あんな痛みを全て自分で受けて…そんな……
ドサッ。
しゃがんでいられなくなり、ついに倒れてしまった里穂姉。痛みでビクッ、ビクッと痙攣を繰り返している。
里穂姉がそんな状態なのに、あまりの事実に体が動かない。
だって、そんな……あんまりだ……
「さて、向こうも終わったようですね。どうやら君の相方が私の相方を倒したようです。私も左腕を失ってしまいましたし……
はぁ、困りましたね。こんな失態、報告できませんよ。」
男は残った右腕をこちらに向け、魔力を練り始めた。時間をかけて凝縮された魔力は、周りの空気をビリビリと振動させる。
「帰ってもどうせ消されるだけでしょうが、仕事にはプライドを持ってるので。きっちり死んでもらいま……」
ズーン!!ガガガ!!
魔法陣の壁に、何かがぶつかるような音。その音は、男の声を消しとばし、何度も何度も聞こえて来る。
「どうやら魔導師達が気付いたようですね。まあ、あの魔法陣を破るには時間がかかるでしょうからそんなに問題ではありません
……が!?」




