044 墓地での戦い③
「うん、作戦は間違っていませんよ。」
「うわっ!?」
0距離で雷の魔法を放とうとした瞬間、両腕を何かで縛られ動けなくなってしまった。
「恐らく、私が後衛の魔導師だから、近接戦闘に持ち込もうとしたんですよね。確かに私は近接戦闘が不得手です。ですが、不得手だからこそ対策はしていますよ。」
俺を縛ったのは、男の周りを飛び回る鳥のような形のエネルギー体だった。どうやら自動で術者を守る魔法のようだ。
「ちなみにこの魔法、ガーディアンは防御や拘束をするだけの魔法ではないのです。」
「や、やばい……うわっ!!ぐわっ!」
残ったエネルギー体……ガーディアンが光り輝いた瞬間、俺の体をレーザーが貫いた。痛みに体が震え、思わず叫び声をあげてしまう。
「一撃では殺しませんよ。じっくり殺すのが私の趣味でして……何??」
体に穴を開けられる苦痛。こんな痛みが続くなんて、耐えられない……
と思った次の瞬間、俺は里穂の隣にいた。どうやら転移魔法で呼び戻されたようだ。
それにあれ?何故か痛みが一気に引いていく。穴が空いていたところを見ると、すでに治りかけている。
「だ…大丈夫、太陽?ごめん…ね、守り……きれなくて。」
「里穂姉!?どうしたんだ!?」
里穂姉の様子がおかしい。顔を歪ませ、自分の腕で体を抱きしめながら右手を上げて魔法を放っている。まるで自分がひどいダメージを受けているかのように。
もしかして俺が前に出ている間に、魔法を受けたのか?でも、そのような傷は見当たらない。心配する俺に対し、弱々しく笑いかけてくる。
「私…は、大丈夫……。太陽、もう一回前に出れる?」
「出られるけど、あのガーディアンって魔法をどうにかしないと、あいつに魔法を当てることは不可能だよ!!」
焦りから、つい口調が強くなる。
防御は任せているとは言え、あの魔法を1人で突破できるとは到底思えない。早く海斗兄の加勢にも向かわなければいけないのに……
『太陽、落ち着いて……聞いて。今度は私も一緒に前に出る……太陽の近くで…防御しながら近づいて……ガーディアンを撃ち落とすから。』
里穂姉からの途切れ途切れの念話。やっぱり様子がおかしい。こんな状態で前に出たら……
『大丈夫……お姉ちゃんを信じて。今日はダメダメな私だけど……今回は…絶対上手くいくから。』
けど……絶対上手くいくなんて、里穂姉は滅多に言わない。恐らく俺達と相手の力量を比較した上でこれしか方法がないのだろう。
俺達2人の様子を見ても、次の攻撃が最後のチャンスだ。行くしかない。
『わかった。でも里穂姉、本当に無理しないで。』
『ありがとう、太陽……痛い思いさせてごめんね…今度は守るから。』
汗でベトベトな手をズボンに擦り付ける。さっきの痛みを思い出すと足がすくんでしまう。だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。
みんなで一緒に帰る。
もう何度目だろうか。言葉をしっかり心に刻みつけ、前に出た。里穂姉も自分の体に身体強化をほどこすと、同時に前へ出る。体調は依然として良くなさそうだが、俺の右後ろにピッタリついている。
「転移魔法、彼の超回復には驚きましたが、今度は2人で来ますか。言っておきますが、私は情けをかけませんよ。」
接近する俺達に対し、攻撃はさらに激しくなる。特に体調が悪そうな里穂姉に対しての攻撃が激しい。雷の矢や風の刃等、様々な種類の魔法が飛んでくる中、里穂姉は属性を付与した障壁で一つ一つ的確に防御している。
「なるほど。そこの彼と違って、素晴らしい魔力コントロールですね。ならば!!」
20メートルくらいまで近付いたところで、今度は数匹のガーディアンが攻撃に加わる。先程の2倍近くの魔法が飛んでくるが、かすることはあっても直撃は全て防いでいる。
里穂姉すごい。この戦いでもどんどん強くなっている。もう並の魔導師では、彼女に傷を負わせることは不可能だろう。
『いい?…次に他のガーディアンが攻撃に参加してきたら…その時がチャンスよ……太陽は一気に相手の懐に飛び込んで。失敗したら私達の負け……でも、できるよね?』
『任せろ!!』
男はというと、ことごとく魔法を防御され、かなり苛ついているようだ。痛めつけるということなどもう頭にないようで、高威力の魔法をどんどん放っている。その分狙いに正確さがなくなってきており、避けやすくなってきたように感じる。
墓場は俺達が来た時と完全に別の場所になってしまった。苔むした墓石は吹き飛び、地面は穴だらけ。
「ちっ!ちょこまかと鬱陶しいですね。仕方ない、こうなったら私の全力をもって殲滅させてもらいます。」
ついにその時がきた。俺たちを倒すために、男の周りを飛び回っていたガーディアンを差し向けてきたのだ。
その瞬間、俺は魔力を解放して一気に飛び出す。その距離10メートル。一瞬で男の目の前に移動すると、あらかじめ右手に溜めていた魔力を放とうとする。
「これで終わりだ!!」
今やつの周りにガーディアンはいない。これだけの魔力を使えば、障壁を破壊して当てるはずができるはず!
奇襲は成功したかに見えた。苛つきはあったものの、終始余裕だった男の表情に焦りが……
……見えない!?
「防御力がある彼女が前に出てきた時から、このパターンは想定していましたよ。私が全てのガーディアンを攻撃に回す時を待っていたのですね。
しかし残念でしたね。ガーディアンはまだ残っているのですよ!」
男の言葉と同時に、後ろに隠れていたガーディアンが出てきて俺の腕を拘束しようとする。
万事休す……
と思われたが、里穂姉はこの状況を読んでいた。左手から光球を放ち、ガーディアンを吹き飛ばした。
「太陽、今よ!!」
「うおぉぉぉぉ!!くらえー!!!」
右手に溜めた魔力を全て電力に変換する。威力は雷と同等、いやそれ以上。校庭に大穴を開けた魔法だ!
「ちょ、ちょっと待ってください。一回話し合いませんか?」
初めて男の顔が焦りの表情に変わった。だが俺は聞く耳を持たない。早く海斗兄を助けて、3人で若葉のところに帰るんだ。
「ぅう…きゃーっ!!!い、痛い!!」
あとは魔力を放つだけだった。だが、急に戦場に響き渡った里穂姉の悲鳴に、ほんの一瞬、俺の思考が止まってしまった。百戦錬磨の殺し屋は、ほんの僅かな好機を見逃さない。
「吹き飛びなさい!!」
風の弾丸を受け、俺の体は吹き飛ばされる。が、タダでやられるわけにはいかない。後方に飛ばされながら、男に向かって魔力を解き放った。




