041 戦闘開始
私…死ぬの……?
ガキーン!!
死がちらついた私から、フードを被った男が遠ざかっていく。いや、誰かに吹き飛ばされた?
「里穂、大丈夫か?怪我はないか?」
私を救ってくれたのは、海斗だった。あの一瞬の間に男に蹴りを入れたらしい。音からして、お互いに強化の魔法をかけていたのだろう。
「う、うん、平気。ありがとう、海斗。」
心配する海斗の腕を、ぎゅーっと抱きしめ、すぐに離す。まだ、戦いは終わってない。
「里穂姉は、俺達の後ろに!海斗兄は接近戦!俺は中距離から魔法で援護する!!」
「オーケー!!」
海斗は身体強化魔法のレベルを上げ、高速で蹴り飛ばした男に突っ込んでいく。太陽は全方位を警戒しながら、雷の矢で援護射撃を行う。2対1と有利な状況で畳み掛けていくが、なんとフードの男はその全ての攻撃を捌いている。なんて反応速度。
と、ふいに炎の玉が左側から太陽に向かって飛んできた。後ろで感知魔法を使っていた私は、盾の魔法で防御する。
「ぐわっ!」
海斗がこちら側に凄い勢いで飛んでくるのを、風の魔法で受け止めた。が、勢いが強すぎて太陽とぶつかる。2人共大きな怪我は無さそうだけど、衝撃の強さに苦悶の表情を浮かべる。
「うーん、素晴らしい。なかなかの連携ではないですか。最近魔法を覚えたとは思えませんね。」
炎の玉が飛んできた方向から、もう1人フードの男が現れる。
「全くだ。そこの男もなかなか筋がいい。殺すのがもったいないくらいだ。」
海斗を吹っ飛ばした男もこちらにゆっくりと歩いてくる。2人ともフードで顔はよく見えないが、身長は海斗と同じくらいある。炎の玉を放った男は痩せ型、海斗を吹っ飛ばした男は屈強な体つきをしている。そしてもう一つの共通点。空気が震えているように感じるほどの殺気だ。
あまりの殺気に、足の震えが止まらない。怖い……
「大丈夫だ、里穂。俺達がお前のことは守るから。」
「里穂姉、目を逸らさないでよく見て。そして、どうやったら生きて帰れるか……こいつらに勝てるか考えて欲しい。」
こんな殺気を向けられながら、太陽も海斗も一歩も引く様子はない。それどころか、生きるために必死に道を探している。
私も震えてばかりはいられない!!頭を回せ、里穂!それしかできないだろ!
「あなた達、誰ですか?私達を殺すつもりなんですか?」
震えを一生懸命に抑え、声を発する。まずは相手の素性や目的を確認する必要がある。話してくれるかはわからないけど。炎の玉を放った男が、少し笑みを浮かべ答える。
「私達は、仕事中は名前を名乗らない主義なんですよ。ごめんなさいね。それから殺すつもりかでしたよね。はい、仕事なので殺しますよ。」
言葉に表された明確な殺意に、またしても震えが起きる。交渉の余地はなさそうだ。
『里穂、こいつらと話しても無駄だ。今から奇襲をかける。あのでかいやつを吹っ飛ばして一対一に持ち込むから、太陽と里穂は痩せてる方を頼む。』
『そんな!一対一だなんて!』
もし海斗に何かあったら私は……
けれど状況は切迫している。今の現状を正しく理解しているのも海斗であった。冷静な口調で念話を続ける。
『俺達が奴らより有利な点、それは数だ。相手は今のところ2人、こっちは3人。であれば、複数対1をしっかり作ることが大切だ。』
『分かった。俺と里穂姉で細い方を倒したらすぐに応援に向かうから。だから海斗兄、絶対死ぬなよ!』
私が何か言う前に太陽が策に同意する。これしか方法がないと分かっているのだろう。
私だって心の底では分かってる、分かってるけど……
ぽん。
不意に頭に手を置かれびっくりする。横を見ると、海斗と太陽が笑顔で立っていた。
「頑張ろうな!里穂!」
「生きて帰ろう、里穂姉!」
2人の手の温度を感じ取り、自然と震えが収まった。そうだ、私にはこんなに頼りになる、大切な人達がいる。だから、私もこの人達に恥じないよう、できることを精一杯するんだ。
まず、無理に働かせようとしていた頭をリセットする。いつも通り冷静になれば大丈夫だ。
『今から2人に常時回復魔法と魔法障壁を付与するね。これで少しくらいは無茶しても大丈夫だから。あと……』
「いつも信じてくれてありがとう。私も頑張るね。」
最後の言葉は念話ではなく直接2人に伝えたかったから。2人共笑顔で手を挙げる。
「さて、そろそろいいですか?こんなに待ったのだから、もっと私達を楽しませてくださいね。」
2人はまたゆっくりと近づいてくる。警戒はしているのだろうが、付け入る隙はまだありそうだ。海斗がボソッと呪文を呟くと、体が輝く。そして……
「言われるまでもねえよ……喰らえ!!」
屈強な男に向かって最高速度で飛び出した。不意をつかれた男は、海斗と一緒に飛んでいく。
「頼んだぞ!!太陽、里穂!!」
戦闘開始だ!!




