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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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35/168

035 ごめんなさいと急展開


「今日はどうだった?何か収穫あった?」


「全然だめ。学校と家の往復で、手掛かり0だよ。」


ここはフローズンフローズンの休憩場兼事務所。先週までは店内の席を使わせてもらっていたのだが、今ではそうもいかず……


「海斗君!若葉ちゃん!今ヘルプ入れる?お客さんいっぱいで手が回らないの。」


「はーい!」「了解!」


俺達は急いで着替え、若葉は接客でイートインスペースに、俺は調理の手伝いのため厨房に出た。


フローズンフローズンの経営は、ふわふわ綿雪のかき氷のおかげでV字回復を遂げた。いや、回復というよりこれはもう進化や覚醒という言葉の方が合っているかもしれない。

開店から閉店まで行列が絶えず、俺達も助っ人として借り出される状態だ。滞納していた税金は10日と言わず、5日目で一気に返すことができた。

また、この間のルリットの行いが噂となり市民達の貴族批判がより一層強まった。結果として、フローズンフローズンの人気に加え、批判の的となった前のかき氷屋さんは、閑古鳥がなくこととなった。このままでは、潰れるのも時間の問題だろう。ざまーみろだ。


ただ、全てがうまくいっているわけではない。

貴族達の動向を探りはじめてから早2週間弱。毎日交代でルリット達を尾行しているのだが、一切手掛かりが掴めていないのだった。

あと、若葉はいざという時に魔法を使うことができなくなってしまうので、フローズンフローズンでバイトをしながら情報をまとめてもらっている。これが若葉のやつ、接客の才能があったようで、素の可愛さと相まってミーナと一緒に2大看板娘として人気を集めている。

ちなみにマーレには、貴族達のことを調べていることは秘密だ。知ったら間違いなく止められるだろうし、立場的にもこの問題に立ち入るのは難しい。それに、最近マーレも忙しそうなんだよな。午後の授業が終わったら用事とか言ってすぐに城に戻っちゃうし。



夕方のピークタイムを切り抜け一息ついた時、俺達も知っている女の子が店に入ってきた。すると、ミーナが厨房から顔を出し、引っ込んだかと思ったら、その子に突進して抱きついた。


「アンナー!久しぶりー!元気にしてた?」


抱きついて無邪気に飛び跳ねる姿を見て、しっかりしているように見える彼女も年相応の女の子なんだなと思う。ミーナの声を聞いて、自室からミサちゃんも合流して突進する。さすが姉妹だ。

再会のテンションから落ち着いたミーナは、今度は心配そうな顔で尋ねる。


「それで今日はどうしたの?うちのお店来て大丈夫?」


アンナの両親は、貴族をサポートをする仕事をしていると聞いている。貴族に逆らうことは両親が職を失うことにも繋がるので、親友のミーナがいじめられている時に何もすることができなかったのだ。

ミーナからの問いかけに複雑そうな表情を見せた後、俺と若葉の方を見る。


「今日はミーナと……海斗君、若葉ちゃんに話したいことがあって。ここだとあれだから、どこか静かに話せる場所あるかな?」


すぐに店主さんに許可を取り、裏の休憩室で話すことになった。

ミサちゃんも来たがっていたがミーナがそれを許さず、代わりにお父さんの手伝いをしてほしいと頼むことで渋々承諾させていた。

俺と若葉、ミーナとアンナが向かい合う形で席に着く。


「太陽君と、里穂ちゃんは?一緒かと思ってたんだけど。」


「ちょっと今日は用事があって別行動なんだ。2人もいた方がいいか?」


ううん、と首を振る。代わりに2人にも伝えてほしいとのことだったので、俺は了承した。

俺達とアンナは同じクラスメイトだが、特段仲が良いわけではない。というか、貴族達の目があるので、おいそれと話しかけるわけにもいかないのだ。まあ、コウタとレイトみたいに貴族達のことを全く気にしない変わり者もいるのだが。

なので、親友のミーナに話があるのはいいとして、俺達も一緒に呼ばれたのには驚いた。一体何の話だろう。

少しの沈黙の後、アンナは急に立ち上がると俺と若葉に頭を下げた。


「本当にごめんなさい。」


ん?なんで俺達が謝られるんだ?

隣を見ると、若葉も疑問の表情をしている。ピンと来ていない俺達に対し、話を続ける。


「あなた達が転校してきた初日。貴族達に堂々と立ち向かうあなた達の姿を見て、すごいなって思うと同時に、私も同じように勇気を持てていたら、ミーナを救えたのかなって思った。」


ミーナが「それは……」と反論しようとしたが、アンナはそれを静止する。


「でも、結局何もできなかった。ミーナのことで反論しようとしても、貴族達に睨まれるたら何も言えなかった。

その後も、みんなと同じようにあなた達を避け続けた。」


「でも、アンナちゃんのお父さんお母さんの仕事のこともあるし、それは仕方ないよ。」


若葉がフォローしようとするが、首を横に激しく振る。その目にはきらりと光るものが見える。


「私ね、この間パパとママに全部打ち明けたの。ミーナのこと、海斗君達のこと……私の今までの行動。

そしたらね、すっごく怒られたの。大切な友達や困っている人を見捨てることは1番やってはいけないことだって。」


泣きながら声を振り絞るアンナを、ミーナはギュっと強く抱きしめた。

彼女はミーナが退学に追い込まれたことを、助けられなかった自分の責任だと感じていた。そして、同じように貴族達に攻撃されている俺達に対して何もできないことで、また同じ過ちを繰り返してしまうのではないかという気持ちに苛まれていた。


「パパとママは、もし私が貴族達に立ち向かって、それで立場が悪くなるようなら、そんな仕事こっちから辞めてやるからって言ってくれたの。

だから私、これからはダメなことにはちゃんとダメって言う!傍観者には絶対ならない!!

でも……だからと言ってこれまでのことが無しになるなんてことはないから。だから……ごめんなさい。」


やってしまったことは、もう変えられない。過去を変えることは誰にもできない。それでも、きちんと自分の行動に向き合い、反省して次に進もうとするアンナはすごいと思う。

だから、俺はいつの間にかアンナに手を差し出していた。


「アンナ。今度魔法の練習に付き合ってくれよ。いっつも同じメンバーで練習してても上達しないしな。あとさ、良かったらみんなで昼飯食べようぜ。」


「あっ、海斗兄ずるーい。私もアンナちゃんと友達になりたい!それで私の作ったお弁当食べてもらうんだ!!」


若葉も負けずに手を差し出す。

俺と若葉2人の手のひらを見つめたあと、本当にいいのか不安になったようでミーナを見る。ミーナは優しい笑顔でアンナを促す。


「アンナが悪いなんて誰も思ってないよ。大丈夫!海斗君も若葉ちゃんも、里穂ちゃんも太陽君も、みんなアンナと友達になりたいんだよ!」


大きく頷くと、アンナは泣きながら、でも笑顔で俺達の手を強く握り締めた。

もしかしたらこの子は俺達と仲良くするせいで貴族達に目をつけられるかもしれない。でも、その時は俺達がしっかり守ろうと心に決めた。だって友達だからな。



その後は、他愛もないお喋りに花を咲かせる。アンナは雷系の魔法が得意らしい。魔力コントロールもなかなかのようで、初等学校の頃は雷のアンナ、氷のミーナという二つ名まであったらしい。

ちなみに2人は同じ学校出身だ。


「そういやさ、アンナの両親は貴族達に関係する仕事なんだよな。貴族達が豹変したことに関して、何か言ってなかったか?」


近しい関係の人であれば何か知っているかもしれないと思ったのだ。案の定、アンナの両親も貴族達の豹変ぶりには驚いていたらしい。その上で気になる話があるという。


「寝る前にママとパパが話していたのを聞いちゃったんだけど、なんか土曜日の夜に決まってどこかに集まってるんだって。でも、その会合には貴族達しか参加できないらしくて、どこで何が行われているかは分からないらしいんだけど。」


なるほど、平日の放課後に焦点を絞っていた分、土日の夜というのは盲点だった。貴族達だけで行われている会合、これは大きな手掛かりが見つかるかもしれない。


「海斗兄、これって!」


「あぁ!帰ったら、早速里穂達にも伝えよう。」


アンナのおかげで、事態は大きく動き出したのであった。


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