033 起死回生の一手
「なるほどね、話は分かったわ。
それにしても……あなた達、かき氷を食べに行ったのよね。それがどうしてこんなことに……」
太陽とわかちゃんの正義感の強さは昔から知ってるけど、だからこそいろんなことに巻き込まれちゃうのよね。いわゆる巻き込まれ体質?
元の世界では先生や親が助けてくれてたけど、この世界ではそうはいかない。あとで2人にはちゃんと話さなきゃだ。
「かき氷はちゃんと食べたよ!すごく美味しかった!
それで里穂姉、なんとかできないかな?店主さんもミーナさんもすごくいい人で、なんとか助けてあげたいの。」
わかちゃんの甘えたような上目使い……反則だよ。これを無意識でやってるからタチが悪い。
もう、仕方ないなぁ。別の世界の住人である以上あんまりこういうことに首は突っ込みたくないんだけど、今回は特別!
「分かった、できる範囲で何とかしてみようか。
ということで、ミーナさん、店主さん、初めまして。私は里穂といいます。うちの太陽とわかちゃんがお世話になりました。」
いえいえと、ミーナさんと店主さんが頭を下げる。
「お世話になったのは私達の方だから。2人のおかげで今日お店が潰れることは回避できたし。
でも、何とかできるの?もちろん私達としても大切なお店だから無くしたくはないけど、正直あと10日で何ができるのか……」
ミーナさんの顔が俯く。確かに2人の話を聞く限り、かなり厳しい状況なのは確かだけど……実はもう手は打ってあるんだよね。
ガチャ
おっ、噂をすれば何とやら。
「おーす、里穂!行ってきたぞー!」
「この人は海斗。私達の幼なじみです。海斗、この店の店主さんとミーナさんとミサちゃんよ。」
どうもどうもとお互いに頭を下げる。
海斗にはあらかじめあることを頼んでいたんだけど、どうやらちゃんと果たしてきてくれたみたい。頭痛そうだし。
その後、ミーナさんにお願いして、この店一番のかき氷を出してもらう。
「さあ海斗、今日最後の仕事よ。一気にいっちゃって!!」
「はぁー……里穂は人使いが荒いなぁ。まあ食べるけどさ。」
そう言ってスプーンいっぱいに氷を乗せ、口に運ぶ。そしてもんどりを打つ。
「うん!やっぱり美味しい……けど、んー!めっちゃ頭痛い!!」
「オッケー!じゃあ聞かせてちょうだい!」
海斗に頼んでいたのは、他のお店の偵察。やっぱり敵のことは知っておかないとだし、何より確かめて欲しいことがあって。
「えーと、それじゃあ報告な。まず、ハイラスマーレにかき氷屋さんは4店舗。西と南に1軒ずつ、あとはここと目の前の店だ。」
4店舗なら上々だ。多いとお客さんが分散しちゃうしね。
あとは味と食感だけど……
「食感はどれもガリガリ系。味はこの店と前の店がうまかった。贅沢にフルーツも使ってるし。ただ、同じ美味しさだったら前の店に客が集まるだろうな。宣伝もそうだけど、中は清潔感があるし何より新しい。
あと、どこの店のかき氷も頭が痛かった……」
うん、海斗ごめんね。でも、おかげで光明が見えたわ。
「ミーナさん、店主さん、多分10日あれば前みたいな大人気店に戻すことができると思います!!
でも、代わりに2人には今までとは違うかき氷の作り方をしてもらわなきゃいけないけど、大丈夫?」
「もしそれで私達の店が守れるのであれば、喜んで変えるわ!それで、どうすればいいの?」
まずは実際に食べてもらった方が早いので、厨房で私がかき氷を作る。
完成したかき氷を見て、ミーナさん達は驚きの声をあげる。逆に、太陽、わかちゃん、海斗は『なるほど』って顔だ。
「ミーナさんみたいな氷は作れないし、店主さんみたいにうまく削ることは出来ないから、完成度は低いけど、食べてもらってもいいですか?」
私が作ったかき氷、それは元の世界で近年登場したふわふわ綿雪のかき氷。ガリガリ系とは一線を画す新しいかき氷で、若い人達から絶大な支持を受けている。
口の中でふわりと溶ける食感が癖になるんだけど、最大の良さは……
「なんだこのかき氷、頭が全然痛くならん!」
そう、このかき氷は作る時に氷の温度を少し上げるため、頭が痛くなり辛いのだ。だからどんどん食べれて、何杯でもおかわりできちゃうの。
3人は、あっという間にペロリと平らげてしまった。
「すごい!こんな美味しいかき氷食べたことないわ。これならいけるかも!」
ミーナさんは目を輝かせる。
でも私は分かっていた。ミーナさんの氷と店主さんの削る技能があれば、私のなんかよりはるかに美味しいかき氷を作れることを。
「お褒めの言葉、ありがとう。さぁ、時間がないわ。作り方を教えるので、すぐに練習を始めましょう!
それから、わかちゃん、太陽!首を突っ込んだんだから最後まで頑張ってね!まずはお店の掃除。その後装飾。やること盛り沢山だよー!」
「「はーい!」」「ミサもやるー!」
さぁ、人気店復活の第一歩!
なんだかんだ言いながらも、楽しんでいる私なのであった。




