030 尊敬とちょっぴりの嫉妬
ところ変わって、ハイラスマーレ魔導高等学院。マーレとエリーン先生は用事があるということで、今日は早めに授業が切り上げになったのであった。
「さて、どこか寄って帰るか?」
「だったら東の町にできた新しいかき氷屋さんに行こうよ!」
若葉、相変わらず甘いものには目がないな。
まあ特に行きたい場所もないし、最近暑くなってきたし、一緒に行くか。
「ごめーん。私図書館で借りたい本があって。わかちゃんと太陽で行っといでよ。」
海斗兄もノリノリでかき氷を食べに行こうとしたところを、里穂姉に腕を掴まれノックバック。
「何すんだよ里穂!俺もかき氷食べてーよ。」
ムッとする海斗兄に対して、それ以上に怖い笑顔で圧をかける里穂姉。
「何?海斗はこんなか弱いレディーを放っといてまでかき氷を食べに行きたいの?
まさかそんなことないわよねぇ……」
「……図書館に行きたいです。」
これのどこがか弱いレディーなんだ……
なんて思っていたら、里穂姉の鋭い視線が今度はこちらに向けられる。
やばい、心を読まれた……
「じゃ、じゃあ若葉、2人で行くか!」
「う、うん、そうしよっか。」
若葉も里穂姉の圧に押されたかな。妙に言葉が辿々しい。
海斗兄、ごめん!!里穂姉のこと、よろしく!!
恨めしい顔の海斗兄と、満面の笑みの里穂姉を残して、俺達は東の町に出発した。
俺達がこの世界に来て早1ヶ月。
新しい経験、経験、また経験により、月日は怒涛の勢いで過ぎていく。
勉強の方は、正直簡単すぎて逆に困っている。俺よりも頭のいい里穂姉は、さぞ退屈で仕方ないだろうと思うほど。まあ、若葉や海斗兄にはちょうどいいかもしれないけど。
問題は魔法の方である。
とりあえず魔法を使うことは簡単にできた。その時は俺も海斗兄もめちゃくちゃ喜んだのだが……
とにかくコントロールが難しい。めちゃくちゃ難しいのだ。
魔力量が多いこともあり、加減を間違うと大変なことになることを先日校庭に大穴を空けることによって体験した。魔法大会であんな魔法を使ったら、間違いなく危険行為で失格になってしまう。
ということで、今は蝋燭10本に一斉に火をつけたり、卵を割らずに移動させたりなど、魔力を制御する地道なトレーニング中なのだ。これが集中力と根気強さが試されるもので、はっきり言って面白くない!
ちなみに里穂姉は魔力制御も放出も天才的で、俺と海斗兄を置いてどんどん先に進んでいる。同じ世界から来たのに、どうしてこうも違うのか……
「どうしたの?何か悩んでるの?」
顔を覗き込んでくる若葉。
「いやさー、里穂姉ってすげーなって思って。」
本当にスーパーマンみたいになんでもできるんだもんな。それに超美人だし、性格もいいし。まだ1ヶ月しかこの世界にいないのに、もう数人の男子に告白……ではなく、プロポーズを受けているのだ。この世界では、付き合うという習慣はあまりないらしい。
ちなみに本人はと言えば、心に決めた人がいるからの一点張りだけど。
「確かにすごいよね、里穂姉は。なんでもできるし、頭もいいし。」
あれ?若葉さんなんか不機嫌?
俺なんか怒らせるようなこと言ったかな?
「そういや、若葉の方の魔法の練習はどうなんだ?エリーン先生、厳しそうだけど。」
俺の言葉に何か思い出したくないものを思い出したみたいで、不機嫌そうな顔から口元をへの字にし、困り顔に変わる。
若葉ってほんと顔によく出るよな。これだったら、心を読む必要もなさそう。
「私、この1ヶ月で、一生分の集中力を使い切ったと思う……」
そちらはそちらで大変なんですね……お察しします。




