029 四賢者
ここはスカイキャッスルの400メートル地点にある賢者の間。ここで週1回、王と四賢者で会議を行う。
会議の内容としては、政治のことから国のインフラのこと、戦争のことなど様々だ。
国にいる王、マーレ、ショーン、エリーンは実際に参加し、もう1人は諜報活動中の場所から遠隔魔法で参加している。
「現状ウォーデン国を攻めるのはかなり厳しいっすね。ウォーデン国の魔導師達は、人数もさることながら、魔力量が平均的に高い。隊長クラスになると、1000を超えるやつらもざらにいるんすよ。
それにうちの軍はハイラスマーレ国から移動する手間もあるっす。長距離行軍は体力も削られるっす。マイナスな要因ばっかっすね。」
「確かに1ヶ月前にマーレが戦った奴らも、倍以上のうちの軍と互角にやりやっていたからな。」
開戦から今に至るまで、戦争は膠着状態にある。
この間みたいにハイラスマーレ国の近くまで攻めてくることは稀だ。そもそもあの時は攻めてきたのではなく、太陽達を捕まえるために来ていたのだ。
「とりあえずもう少し様子を見てみるっす。今度は良い情報を持って帰れるように頑張るっす。」
リモート参加の賢者は王に敬礼する。
そんな賢者に心配そうに笑いかける王。
「お主を失うのは友としてももちろん、国としても大打撃なのじゃ。くれぐれも、無理はせんように。頼むぞ。
さて、それでは今日の議題はこれで終了じゃが……マーレ、エリーン、あの子達の様子はどうじゃ?」
「あっ、俺もそれ聴きたかったんすよね。総魔力量2000超えの化け物達、その後どうすか?」
王とリモートの賢者は期待いっぱいの表情。対してマーレ、エリーンはため息。
エリーンがまず話し出す。
「若葉の方は消却魔法の制御の練習に励んでいますが、新種の魔法なだけあって、私自身もどう指導していいものやらって感じですねぇ。でも、魔法自体は本当に強力で、どんな魔法も一瞬で消却されますねぇ。」
若葉の魔法は新種の魔法なので、消却魔法という名前がつけられた。
世界を揺るがす魔法。その存在を知るのはこの会議に参加する5人と本人達だけだ。
次にマーレ。
「えーと残りの3人ですが、まず里穂。あの子は天才です。10教えたら20にも30にもして実践してくれます。昨日はついに広範囲回復魔法を覚えました。」
「多人数の症状把握と共に、一人ひとりへの魔力分配を必要とする高難度魔法をたった1ヶ月っすか。やばいっすね、その子。」
実際、里穂の成長速度は著しいものだった。
マーレと属性もぴったり合うということもあり、教わった側から全ての魔法を完璧にマスターしていった。
また、他の属性の魔法にも素養があり、攻撃系魔法も使いこなす、まさに万能型魔導師。
今戦線に出ても、隊長クラス……いや、それ以上の力を発揮するかもしれない。
「ただ、残りの2人がですね……
魔力がずば抜けていることもあり、制御に苦戦しているんです。この間も制御に失敗して……」
「ハイラスマーレに地震が発生したからな。あれは驚いた。」
ショーンがうなだれる。
この間とは3日前のことで、初めて模擬戦と称して太陽と海斗が戦ったのだが、勢い余って校庭に30m四方の大穴を空けてしまったのだ。
「実際の戦闘では活躍してくれそうじゃが、対抗戦では危険行為で一発退場じゃな。困った困った。」
困ったと言いながら楽しそうに話を聞いている王様。ちなみにマーレはあの後、監督不行届けで反省文を提出させられたらしい。
「しかし大丈夫ですか?魔法大会であいつらが優勝しないと、STORY TELLERが他の者の手に渡ってしまうのですよ?」
ショーン自身はSTORY TELLERを優勝賞品にすることも、4人に渡すことも反対なのだ。だが、王はいつもと変わらず余裕の表情でショーンを諫める。
「まあその時はまた考えるとしようじゃないか。それに、わしはあの子達が負けるとは思えんがのぉ。」
王は確信していた。
自分の見込んだ子ども達は、必ず期待通りの結果を出してくれるだろうと。
STORY TELLERは他の誰でもない、あの子達が持つことにこそ意味があるのだ。




