表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
PR
25/168

025 海の生き物

3階のフロアは、ショーコーナーだった。イルカショーがメインのようだが、アシカやセイウチのショーや、ペリカンのお散歩など、バリエーションに富んでいる。

室内なのにすごいなとつくづく思う。なんせイルカがジャンプしてもぶつからないよう、10メートルの高さに天井があるのだ。普通のマンションの天井が2.5メートル程と考えると、その5倍。

ちなみに4階は、3階のフロアを取り囲むバルコニーのようになっており、レストランや宿泊施設があるらしい。イルカショーを眼下に望みながら、ランチやディナーができるなんて、贅沢極まりない。


若葉が全てのショーを見ると言い張るので、2時間かけてようやく回り終えた。

女子2人はまだまだ元気だが、男子2人には疲労の色が見える。


そしてお腹がすいた。

それは海斗兄も同じだったようで。

グーとお腹が鳴るのを聞いて、マーレが笑う。


「そろそろお腹がすきましたよね。上のレストランはさっき確認したら満席だったので、フードコートに行きましょうか。1階にあると店員さんが言っていました。」


「賛成!私もお腹ぺこぺこだよ。」


そりゃあれだけはしゃいでいれば、お腹も減るだろう。


「そういえば若葉、1階は何が展示されてるんだ?」


「んーとね……海の生き物?」


ん?どういう意味だ?予想外の言葉に、俺も海斗兄もハテナマークが浮かぶ。

当の本人も、なんじゃこりゃと思ったようで、もう一度パンフレットを見返しているが、当然書かれている内容は変わらない。


「今まで見てきたのも海の生き物……だったよな?」


「何を言ってるのですか?海にはこんな綺麗で可愛い生き物達はいませんよ。」


キョトン顔の姫様。

対して言っている意味がよく分からない俺達。


「とりあえず1階に行ってみようぜ!」


海斗兄の言う通り、行ってみれば分かるか。


今日3度目のイルカショーが始まり、イルカの宙返りに湧き上がる観客。水飛沫が天井のライトに照らされ、キラキラと光り輝いていた。





「なんじゃこりゃ。」


きっとこれは俺だけの感想ではないだろう。現に若葉も海斗兄も唖然としているし。


頭や尻尾が2つあったり、目が5つあったり、顔がなかったり、色がおかしかったり……とにかく色々な魚のような物が、水槽の中を優雅に泳いでいる。

隣の水槽には、足が20本あり、2メートル近い体長のタコのような生き物。その隣には、目と鼻と口がついたクラゲ?が浮き沈みしている。

フロア最大の水槽には、ペンギンがよちよちと氷の上を歩いている。だが、注目すべきはその色だ。紫、黄色、緑色など、とにかく多種多様。その毒々しい色味は、ペンギンの愛らしさを台無しにしてしまっている。


水槽には説明書きはおろか、生き物の名前すら書かれていない。


フロアの入り口には、確かに『海の生き物』と表示されている。

どういうことなんだ?

この生き物達はなんだ?


「とりあえず、フードコートで昼食を食べましょう。話はその時に。」


困惑する俺達を、今度はマーレが誘導する。ペンギンの水槽の横を抜けると、大きなフードコートがあった。お昼時とあってか、結構な人数がいるが、選びさえしなければ、席に座れないほどではない。


様々なお店が軒を連ねているが、おすすめは海鮮料理らしい。水族館で海鮮料理って、ちょっといたたまれないような気もするが、結局俺と海斗兄は海鮮ラーメンを、若葉は海鮮丼、マーレは小さなアクアパッツァを注文した。


「この魚達は……どっちの魚なんだ?」


目の前の美味しそうな料理に手をつけようとした時、海斗兄の何気ない呟きに俺と若葉の動きが止まる。

あの変な魚達が素材だとしたら、確実に食欲は減退するが……

すると、マーレが笑って貝の中身を一つ、上品に口へと運ぶ。


「大丈夫ですよ、これは2階より上の階に展示されていた魚達です。あっ、正確には別の場所で育てられた魚ですけどね。」


3人ともあからさまにホッとするのを見て、ふふと笑う姫様。


その後は、少しずつシェアしながら料理をいただいた。

どれもとても美味しかったが、やはり先程の展示のことが気になって、いまいち食事に集中できない。


「マーレ、さっきの話だけど。あの変な生き物達はなんなんだ?」


「太陽達の世界では、海ってどんなところですか?」


海?と言われても、大きくて広くて、魚がいっぱいいて。

そんな感じで説明すると、マーレは若葉から図鑑を借り、その1番最後のページを開く。


「えっ、これって……」


若葉が驚くのも無理はない。

空中に映し出されたのは海の写真。だが、元の世界とは明らかに違う。


灰色の海。


「これが私達の世界の海です。いつからこうなったのかは分かりませんが、残念ながら世界中の海がこのように濁ってしまっているのです。」


マーレの話によると、ただ濁っているだけではなく、この海の水は生き物にとても悪い影響を与えるらしい。


「海水には、大量の魔力が溶けています。前にも話しましたよね。魔力はこの世界に欠かせない物ですが、多すぎてもいけません。あの水に含まれる魔力量は、ハイラスマーレ国内の空気中の1000倍以上です。」


1000倍って……とんでもない魔力量だ。生き物が生きていられるわけがない。


「でも、じゃあここの生き物達は。」


「先程も言いましたが、2階より上にいた生き物、そして私達の口に入る生き物は、全て養殖された物です。しっかりと管理されているため、触れるのも食べるのも大丈夫です。


ですが、この1階にいる生き物。これらは海の水に含まれた大量の魔力に侵されてしまっている。その魔力によって姿形が変わってしまったのです。」


なるほど、だから海の生き物なのか。

確かに2階より上にいた生き物には、海とか川とか、そういう言葉は一切書いていなかった。全部養殖だから。


「私もいつか海で遊んでみたいですが、それは叶わぬ夢ですね。」


「そんなことないよ!マーレが私達の世界に遊びに来ればいいんだよ!

そうすればいっぱい遊べるよ!」


ありがとう。と、若葉の頭を優しく撫でるマーレ。


この世界には、俺達が住む世界との共通点がたくさんある。

でも、やっぱりこの世界は、俺達のいた世界とは違うということを、改めて実感させられることになったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ