018 宣戦布告
話していると、クラスメイト達が続々と登校してくる。とは言ってもドアから入ってくる人は稀で、ワープして来たり、飛んで窓から入って来たりと様々だ。
みんな姫様と私達に興味津々のようだが、同時に少し警戒しているのか、近付いては来ない。
「そう言えば……4人とも、あの前の方に座っている4人組には注意しろよ。」
4人組?男女2人ずつで似たような柄の服を着ているあの人達かな?
金色の時計や宝石のついた眼鏡を身につけていて、なんだか西洋貴族みたいな人達だな。
私達のことは気付いているようだが、他の子達とは違って全く興味がないようだ。
「あいつらはハイラスマーレ国の有名な貴族の御曹司達で頭もいいし、魔法もかなり使えるけど……
自分達が気に入らないやつには嫌がらせとか無視とかもう大変なんだよ。あまりにも酷くて、この間も1人クラスの子が退学させられてさ。
目をつけられたら大変だから気をつけて。」
なるほど……そういう残念な人達ってどこの世界にもいるんだなぁ。じゃあ周りの子達が話しかけてこないのは、あの人達に気を使ってるところもあるのかな?
でも心配だな。私達4人の中にはそういう人が大っ嫌いな人がいるし……
「海斗、揉め事起こして注目されるのもあれだから、仲良くしてね……って、あれ?わかちゃん、海斗は!?」
「えーと……海斗兄、あの人達に挨拶してくるって太陽連れて行っちゃった。」
うそー!?行っちゃったの!?
絶対やばいよ、挨拶じゃ済まないって絶対に。
止めようと声をかけようとした時には……
楽しそうに話している4人の中に突入していた。
「こんにちは。俺の名前は海斗。こっちは太陽。今日からクラスメイトになるんだ。よろしくな。」
シーン
ざわついていた教室が一斉に静かになり、視線が海斗に集まる。
話しかけられた4人はというと、一度海斗と太陽の顔を見たが、その後何事もなかったかのように話を続ける。
当然そこで引き下がる海斗ではない。
「名前教えてくれよ。呼び辛いだろ。なあ、なんていうの?」
「あなた、初対面の私達に向かって馴れ馴れしくない?失礼だと思うんだけど。」
1人の女の子が面倒臭そうな顔で海斗に言う。
絶対やばいよー、海斗そろそろ止めようよ。
「そんなこと言ったら自己紹介したのに無視する方がよっぽど失礼だろ。何?この国の貴族は挨拶もろくにできないの?」
完全に煽ってるよ……もう知らない。
真っ赤になって言い返そうとした女の子を男の子の1人が制した。そして穏やかな口調で話始める。
「これは失礼。こんなことでカッとなるなんて、貴族らしくないですよロンヌ。
さて、あなたは今、貴族は挨拶もできないのかと言いましたね。そのお答えですが、あなたのようなどこの馬の骨とも分からない人に挨拶が必要だとは思えない。というのが私の意見です。分かりますか?」
あまりにも失礼な言い草に私でさえもイラッとする。
こんなことを言われて海斗が引き下がる訳もなく食ってかかろうとしたところを、太陽が止める。ホッとしたのも束の間、今度は太陽が話し出した。
「どこの馬の骨か分からない…確かにその通りですね。なんせ私達は外国から来た転校生。度重なる無礼をお許しください。」
頭を下げる太陽に、貴族の男の子は笑みを浮かべる。よく分かってるじゃないかとでも言うように。ただ、太陽の言葉はそこで終わらなかった。
「ただ……気に入らない人に嫌がらせして退学にまで追い込むどうしようもないあなた達のことも、俺達は全然知らないのですよ。俺達から見たら、あなた達も馬の骨。いや、それだと馬に失礼かな。」
海斗より頭がいい分、スラスラと嫌味が出てきますね太陽さん。君もそういう曲がった人達が大嫌いだもんね。
ガタンッ
よほど腹が立ったのか、先ほどまで丁寧に話していた男の子と女の子2人が立ち上がって太陽と海斗を睨みつける。
2人も仁王立ちで動かない。
すると、座っていた最後の1人が徐に口を開いた。
「僕達のことをどこで聞きつけたのかは知らないけど……君達には関係のないことだろ?
それにしても、無知というのは恐ろしいことだね。この国で貴族に逆らうことがどういうことなのか分かっていない。それとも、王様や姫様が後ろについていれば恐くないということかな?」
そう言って男の子はこちらを一瞥する。
姫様がいるのを分かってて言ってるの?
「言っとくけど、この国の貴族はただ単に金持ちって訳じゃないんだよ。頭も良く、魔法も使えて、初めて貴族として名乗ることを許されるんだ。
それにね、この学校は実力主義でね。校内では貴族の力はもちろん、王族の力も効力をなさない。ようは自分の力が全てってわけ。
嫌がらせで退学させた?違うね。そいつが弱くてアホだったから自ら辞めたんだよ。」
ガタンッ
今度は私達の反対にいた女の子が顔を真っ赤にして立ち上がる。
……が、何も言わない。
「文句があるなら言えよ、アンナ。言えないよなぁ、俺達の方が強いもんなぁ。おまえみたいに自分の立場が分かっていれば、ミーナも辞めなくて済んだろうに。」
きっとあの子、退学してしまった子の友達なんだろう。
酷い、酷すぎる。なんて奴らだ……
海斗も太陽も怒りの頂点に達したようで、今にも殴りかかりそうな勢いだ。
「待ちなさい!!」
一触即発な状況を諫めたのは、マーレの一言だった。
さすがに姫様が出てきたとあって、貴族達も一瞬怯んだが、ニヤリと笑いまた話し出す。
「これはこれは姫様、いたのですね。今日はどうしたのですか?
あぁ、そうか。昨日の失態の責任をとって、どこの馬の骨ともわからない人達のお守り役になったんでしたね。いやぁ、姫様も大変ですねぇ。」
なんでそのことを!?
「おまえら、まじ許さねー!!」
「海斗!待ちなさい!!」
海斗の拳をマーレが寸前のところで受け止める。
「私の失態は事実です。だから何を言われても仕方ないのです。海斗、拳をおさめてください。」
マーレに諭され、渋々拳を引く海斗。その分鋭く睨みつける。その眼力で人が殺せそうだ。
「あなた方が言った通り、この学校は入ってしまえば他からの後ろ盾や力が及ばない、正真正銘実力主義の世界です。私も3年間通っていたから重々承知しています。
だからどうですか?この子達と勝負しませんか?」
「勝負?」
マーレ、何も言い出すんだろう?貴族達も何のことか分かっていない様子だ。
「皆さんもご存知の通り、8月には毎年恒例の全学校対抗ハイラスマーレ魔法大会があります。その最終種目である、高等学院生徒対抗戦の団体の部で戦うのです。
そこで負けた方がこの学校を去るというのはいかがでしょうか?」
マーレの言葉に今度は教室中がざわめきだす。
多くの声が、「勝てるわけないよ。」とか、「絶対関わらない方がいいよ。」という声だ。
つまり……勝負の内容は全くわからないけど、とにかく貴族達と戦って負けたら退学ってこと!?
いや、だって私達まだこの世界に来て1日の超魔法素人ですよ?
8月って言ったら残り2ヶ月ちょっとだし……
でも、もしマーレがチームに入ってくれれば、何とかなるかもしれない。なんせ4賢者の1人だし。
「ハハハ、なるほどそういうことか。」
唖然としていた貴族の1人が、急に笑い出しマーレに詰め寄る。
「姫様、勝負を受けてもいいが条件が1つある。戦うのはそこの馬の骨2人と、残りの転校生の2人の4人だ。姫様の参加はもちろん認めない。さすがにあなたに参加されては勝負にならないからね。どうです?それでもいいですか?」
してやったりの顔。
だけど、マーレの方も予想していたようで、海斗と太陽の方を見る。
その顔には怒りと期待の表情が混じり合っていた。
その期待に応えるように、2人は声を揃えて叫んだ。
「「もちろん!!」」
あぁ、もう……どうして男というものは喧嘩っ早いのだろうか…
こうして、まだ授業を1回も受ける間も無く、私達4人は退学をかけて戦うことになったのであった。




