015 朝
「う、うーん……」
寝ぼけ眼で時計を見ると針は5時を指している。
あんなに眠れなかったのに、太陽にギュッてされたらすぐ寝ちゃった。
「寝顔、可愛い。」
中学生になっても、体が大きくなっても寝顔は変わらないんだな。
太陽を起こさないように静かにベッドから抜け出す。
本当はもう少しくっついてたかったけど、海斗兄と里穂姉が起きる前に部屋を出ないと。
いや、別に隠す必要はないんだよ。ギュってしてもらっただけだし……
でも、なんか恥ずかしいし….
せっかく早く起きたので、朝ご飯作りと洗濯を始める。
私は中学校ではバレーボール部に所属している。足はそんなに早くないけど、運動、特に球技は基本なんでもできる。小学校の時は太陽が男バス部長で、私が女バスの部長だったし。だから関わりが浅い人達は私のことを体育系女子だと思ってる。
間違いじゃない、私運動好きだし。
でも自分で言うのもなんなんだけど……実は家事全般も得意なんです。
ママが小さい頃から教えてくれていたこともあって、掃除・洗濯・調理・裁縫などなど何でもござれなんです。
勉強では太陽と里穂姉、運動では海斗兄に敵わないけど、家事だったら私が1番!!だと思っている。
「おはよう、わかちゃん!早いねー!」
洗濯が一通り終わり、朝ご飯作りの下準備ができた頃に、里穂姉が眠そうな顔して起きてきた。
「あっ、里穂姉おはよう。よく眠れ……てはなさそうだね。」
「まぁねー、あの後海斗と話が盛り上がっちゃってね。結局布団に入ったのは1時よ。その後もすぐには寝られなかったしね。」
里穂姉も眠れなかったと聞き、私だけが不安なわけじゃないんだとちょっとほっとする。
そんな里穂姉は私の近くまでやってきて、耳元で恐ろしいことを言う。
「ところでわかちゃん、太陽との甘い一夜はどうだったの?」
ビクッ!!
想定外の言葉に体が跳ね上がった。そして顔の温度が一気に上昇する。
なんで里穂姉知ってるの!?
「なんで知ってるのって顔ね。そりゃー私、魔法使いですから!!」
なんと!!
魔法を使えば私達の行動は筒抜けってこと!?
そんなぁ……プライバシーも何もあったもんじゃないよぉ。
とあからさまに焦る私の様子を見て楽しむ里穂姉。
「と、今のは冗談。いやね、眠れなくてお手洗いに行こうと思ったら、ちょうどわかちゃんが太陽の寝室に入っていくところを見ちゃってね。悪気があったわけじゃないのよ。
で、どうなの?ついに大人の階段昇っちゃった?」
「そ、そんなわけないでしょ!
ただ眠れなかったから話を聞いてもらって、ギュってしてもらっただけ……って私何言ってるの!?」
ギュってしてもらったことは話さなくていいだろ若葉ー!
あと大人の階段とか……たまーに下世話なこと言いますよね先輩。
「えー、そこまでしたのに太陽は手を出さなかったわけー?こんな美少女と一緒のベッドでー?
うーん……太陽は男じゃないのかな?」
太陽さん、めちゃくちゃ言われてますよ。
「だって私と太陽は……ただの幼なじみだもん。」
「でもさ、わかちゃんは太陽のことただの幼なじみだと思ってないでしょ?」
ドキリと音が聞こえそうなくらい心臓が跳ねる。
ニコニコしながら里穂姉は続ける。
「うちの男子2人はそういうのに鈍いから気付いてないと思うけど、私にはお見通しだよー。だってわかちゃんが太陽と話す時の顔、乙女だもん。」
乙女とか里穂姉やめてー!!
恥ずかしくて顔から火が出そうだよぉ。
「り、里穂姉こそ、海斗兄のことどう思ってるの?好きなんじゃないの?」
「いやいや若葉さん何を言ってるのかな?
私は富士先生一筋ですから。前から言ってるでしょ?結構本気なのよ。」
必死に話題を変えようとする私に対し、冷静に返してくる里穂姉。
そうでしたね。里穂姉は富士先生にぞっこんですもんね。卒業してからも何度も小学校に会いに来てましたもんね。
「わかちゃん、それでどうなの?」
うぅ、そんな目で見られたら……困るよ。
里穂姉の全てを見透かしたような瞳を向けられ、観念してポツリと話し始める。
「私は……まだ太陽のことをどう思ってるのか自分では分からないの。本当にそういうの考えたことなくて。
でも……他の人達とはちょっと違う。私にとってすっごく大切な人だっていうのは確か。幼なじみ以上に。」
いつかこの気持ちがはっきりとわかる日が来るのかな?
その時私は太陽に対してどういう行動をとるんだろう……
太陽は私の気持ちに応えてくれるのかな?
そんな思いが頭の中をぐるぐる回る。
そんな私の頭を、里穂姉はポンッと撫でてくれた。
「ふふ、意地悪な質問ばっかりしてごめんね。
わかちゃん、今太陽に抱いてるその気持ち、大切にしてね。」
言葉の意味を完全に理解することはできなかったが、私はコクリと頷いた。
理解できなくても、今の気持ちを大切にしなければいけないというのはすごくわかったから。




