014 幼馴染の笑顔と涙
時計は深夜2時。うーん、眠れない。
原因は180度変わった日常のせいか、はたまた命をかけた戦いに巻き込まれたからか、それともベッドが巨大すぎるからか……
とにかく目が冴えて眠ることができない。体は絶対疲れてるのに。
こういう時は……ベタだが羊でも数えてみるか。
1匹、2匹……
ガチャリ
「ん?」
今ドアが開く音がしたような。けれどベッドはカーテンで覆われていて外を見ることができない。
足音が近づいてくるにつれ、徐々に心臓が高鳴る。今まで生きてきた世界とは違うんだ。何が起きても対応できるようにしないと……
いつでも飛びかかれるように全神経を研ぎ澄ませていると、足音の主はもぞもぞと布団の中に入ってくる。そして、ぴたりと俺の背中に貼りついた。
背中に感じる柔らかく温かい感触に、小さい頃からよく知っている甘い香り。
「若葉?」
若葉の体がビクッと跳ねる。起きてると思っていなかったんだろう。でも、何も返答はない。
無音の空間。時計の針の音と俺の心臓の音だけがやたら聞こえる。若葉の体の感触と体温に俺の体もほてってくる。
いくら幼なじみだとはいえ、一緒の布団に入るのは小学校低学年の時以来だ。あの時からお互い成長しているし、健全な中学男子として意識するなという方が酷な話だ。と心の中で弁明。
こんなこと思ってるの、俺だけなのかな。
「…ごめん太陽、起きてると思わなくて。
自分からしててあれだけど……やっぱり恥ずかしいね。心臓、ドキドキしてる。」
若葉も同じだったみたいで、少し安心する。
「俺も全然眠れなくてさ。若葉も?」
コクリと頷いたのが、背中に伝わってくる。
それからまた数分の沈黙。先に口を開いたのは若葉だった。
「ねえ太陽……昼間に丘の上で2人きりで話したでしょ。私ね、あの時にこれからも笑顔で頑張ろうって決めたんだ。」
「うん。」
あの時は本当に若葉に救われた。俺の罪悪感で凍りついた心を、若葉の優しさで溶かしてもらった。
さっきより更に強く、ぎゅーっと背中に体を寄せる若葉。
でも、なんだろう。震えてる?
「でもね……分からないままに襲われて、たくさんの人達が亡くなって、私達も死にそうになった。
死にそうになったんだよ、太陽!」
最後は心の声を吐き出すように、苦しく切なく小さな声で叫ぶ。
その声の切なさに、胸がギュッと締め付けられる。
「私、本当に怖かった……こんな知らない世界で、何も分からないまま死ぬなんて。
まだやりたいこと、いっぱいある!将来の夢だってある!伝えたい大切な想いがあるの!!
まだ私、死にたくない。死にたくないよぉ…太陽…」
若葉の心の叫びに体が勝手に反応していた。
振り返りきつく抱きしめたら壊れてしまいそうな小さな体をギュッと抱きしめる。
後から考えれば、こんな大胆な行動をよくできたものだと自分でも思う。
でも、いてもたってもいられなかった。
大切な幼なじみが、今にも壊れてしまうんじゃないかと思って。
声はあげない。でも、泣いているのは分かる。
若葉は男勝りで自由奔放で、いつも笑顔。
でも、俺は知っている。実は繊細で、感受性豊かで、泣き虫だということを。
だから俺達が……いや、俺が守らなければいけないんだ。
「…明日になったら…笑顔の私に戻るから。だから、今日だけはゆるして…」
「おう。」
腕の中で若葉を感じながら、もう二度とこんな思いはさせないと心に決めたのであった。




