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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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13/168

013 VIP待遇

「いやー、こんな部屋今まで泊まったことないわ。なんか富豪になった気分。」


俺は部屋の中央にあるL字型のふかふかソファにダイブした。一度やってみたかったんだよ、これ。

あとでベッドでもやろうと心に決める。


王様との謁見の後、俺達は城の中層階にある客室に案内された。中層階とは言っても高さは300メートル近くあり、外を見るとあまりの高さに頭がクラクラする。

部屋は1室だが中の寝室は4部屋に分かれており、何より内装が豪華絢爛。シャンデリアとか、絵画(誰が描いたのかは分からないけど。)とかがやたら天井や壁にくっついてるし、窓や手すりなど、細かいところにも彫刻や装飾を欠かさない。共同スペースはおそらく俺達が住んでいる家の中を全て足したくらいの広さがある。トイレ1つをとっても、俺の部屋くらいありそうだし。床は大理石で作られており、風呂は夜景を見ながら入れる展望風呂つき。元の世界で泊まったら、1泊1人20万円以上はするだろう。

プラス、この世界の生活に困らないように、服を何着かもらい、食べ物は常に巨大な冷蔵庫に足してもらえるシステム。(家事全てを任せることもできたようだが、さすがにそこは自分達でやると里穂姉が断った。)

お金についても、使い放題ではあるのだが、元の世界に戻った時に、金銭感覚がおかしくならないようにとお小遣い制にすることになった。海斗兄と……俺も不服申し立てをしたいところだったが、しっかり者の女子2人に怖い顔をされたら、何も言えない。豪遊って言葉に憧れる年頃なんだけどな。

この暮らしをこの世界にいる間はずっと保証してくれるということで、ここまでくると何だか申し訳なくなる。



「ただ、まさか異世界に来て学校に通うことになるとは……俺部活ばっかりで勉強はやばいんだよなぁ。」


「海斗、あんたはもう少し勉強しなさい。

それに勉強のためというのもあるけど、私達はこの国、この世界のことを何も知らない。学校に通うことによってそれを知れれば、もしかしたら帰るヒントが見つかるかもしれない。」


確かに里穂姉の言う通りだ。この世界のこと……魔法についてもっと学ぶことができれば、元の世界に戻ることができるかもしれない。何もしないよりは絶対にいい!


それから今日1日のことや、これからのことを4人で話し合いながら夜ご飯を食べた。メニューは里穂姉特製のオムライス。異世界だからドラゴンの卵に紫色のトマト……ということはなく、トマトはちゃんと赤いし、卵はきちんと鶏が産んだものだった。ケチャップライスの上に、とろとろの卵が乗っていて……昔から食べ慣れたメニューだが、だからこそとても安心した。

あっという間に時は流れ、時計の針は23時を刺す。この世界も時間の流れは一緒だった。


「さてと、それじゃあ明日も早いしそろそろ寝ようか。」


「いや、ちょっと待ってくれ。」


みんなが寝室に向かおうとすると、海斗兄が全員を呼び止める。

さっきまでの明るく無邪気な表情ではなく、真剣な顔をした海斗兄。


「あのさ……ショーンのやつが言ってたことについてなんだけど。

信じたくなかったし、知らないやつばかりだったから、弱みを見せたくなくてあの場では反論した。

でも……あそこであいつがあんな嘘をつく理由が見つからないんだ。」


拳をギュッと握りしめながら言葉を紡ぐ海斗兄を、俺達は黙ったまま見つめる。


「覚えてないんだ、本当に。けど、それは言い訳にはならねぇ。

俺は……太陽、里穂、若葉、お前達を攻撃したんだな?」


海斗兄の言葉に沈黙が訪れる。

始めに口を開いたのは里穂姉だった。


「……そうよ、海斗。あなたは私達を殺しかけた。ショーンさんが言っていたことは事実よ。」


里穂姉、そんな直球に伝えるなんて……

いや、ここまできて隠すのはこれからのために、何より海斗兄のためにならない。そう判断したのだろう。

モヤモヤした想いを持ち続けさせないために。


「でもね。海斗兄がいたから、私達生きてるんだよ。海斗兄がケルベロスを倒してくれなかったら、今こうして話すこともできてないんだよ!」


若葉が里穂姉の言葉を繋ぐ。

その通りだ。海斗兄がいなかったら、俺達は今ここにいない。


「海斗兄が俺達を殺そうとしたのは事実だ。でも同時に海斗兄は俺達の命を救ってくれた。だから、ありがとうだよ。」


こうして4人揃って生きてるんだ。海斗兄が謝る必要なんてない。

それに、間違ったことがあったとしても、それを許し合うのが親友だ。


「おまえら……ありがとう。そしてごめんな。もう二度と危険な目には合わせない!安全に助けるから!」


「そうしてよ、本当に……

海斗に私達の声が届かなかった時、本当に心配したんだからね!

もうっ、バカ海斗!」


里穂姉が海斗兄に抱きついた。そして目にいっぱいの涙を浮かべながらポカポカと胸を叩く。

俺達も心配だったけど、一番心配していたのは一番長く時間を過ごしてきた里穂姉だったんだ。


「行こっか、太陽。」


「そうだな。」


俺と若葉は、2人に気付かれないように自分の部屋に戻った。


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