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STORY TELLER  作者: 茶々丸
魔法邂逅編
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012 ハイラスマーレ王

エレベーターの速度が徐々に落ちてきた。ショーンさんが厳しい顔でこちらを向く。


「そろそろ到着だ。いいかおまえら、王はこの世界で最も偉大なお方だ。無礼な真似は許さんからな。特に闇堕ち、いいな!」


「俺は海斗だ!闇堕ちじゃねー!

だが、王様には坊主達から助けてもらったわけだし、感謝している。だからちゃんとお礼を伝えたい。」


マーレ姫の話によると、坊主達に襲われていた俺達のことをいち早く察知し、魔導師達を送ってくれたのは他でもない王様らしい。


ガシャン!

エレベーターが止まり、扉が開く。

巨大な部屋、学校の体育館と同じくらい大きい。周りの壁には様々な色の宝石?のような物が飾ってあり、上には見たこともないような豪華なシャンデリア。

エレベーターの出口から伸びる赤い絨毯は、20mにも及び、その先の階段の上に玉座があった。


そこに座るは、優しい表情でこちらを見据える1人の老人。赤い服を着て、白い髭を蓄えた姿はさながらサンタクロース。だが体型は痩せ形であり、座っているから正確には分からないが身長は高そうだ。


「ふむ、サンタクロースか。わしも子供の頃はサンタを信じていてのぉ、クリスマスを楽しみにしておったよ。残念ながら会うことは叶わんかったが。」


笑いながら話す王様にドキリとする。心を読まれた。


「ほっほっほ。わしは心を読むのが得意なのじゃよ。さて、もっと近くで話そうぞ。」


王様が手招きをすると、赤い絨毯がエスカレーターのように動き、マーレ姫、ショーンさんを含めた6人は玉座前の階段下まで吸い寄せられた。

姫とショーンさんは片膝をつき頭を下げる。

「無礼な真似は許さん」という言葉を思い出し同じように片膝をつこうとすると、見えない腕に止められてしまった。


「これこれ、お主らは客人なんじゃから、そんなことはせんで良い。

さて、主らと話す前に……ショーンよ。任務からの帰還中で疲れた身でありながら、よく現場に向かってくれた。礼を言うぞ。」


「いえ、王の御命令とあれば、このショーン。どんな状況でも力になってみせます。」


「それに比べて……マーレ。姫とは言え今回の失態は許されるものではないのは分かっておるな。」


ゆったり話す王様だが、その言葉の重み、威圧感がすごい。この人の言うことは絶対なのだと本能が感じているような、そんな感じがする。

その中で、里穂姉が一歩前にでた。


「王様。話を遮ってしまい申し訳ありません。ただ、伝えさせてください。

マーレ姫がいなければ私達4人は囚われ、今頃どうなっていたかわかりません。私達はマーレ姫に救われたのです。なので、どうか寛大な措置をお願いします。」


「そうだ!俺達のために頑張ってくれたマーレ姫に罰があるなんて、納得できない!」


里穂姉に続き海斗兄もマーレ姫を庇う。

こんな状況で、2人とも自分の気持ちを伝えられるなんて、やっぱりすごい人達だ。

海斗兄の言葉に対し、ショーンさんがキレそうになるのをマーレ姫が静止する。


「2人とも、そのことは十分理解しておるよ。ただし、君達を守るというのは最低限の任務であり、それ以外に部下の命を守ることも大切なのじゃよ。そういう意味では、やはりおとがめなしとは言えん。分かるな?マーレ。」


「もちろんです。隊長として臨んだ任務。責任は全て私にあります。なんなりと処罰を。」


本当に申し訳ないが、マーレ姫が受け入れているということはそういうことなのだろう。

海斗兄はまだ納得していない様子だが、里穂姉がこれ以上は言っても仕方ないと諭している。


「では、処罰に関してはまた後で伝えよう。

それでは……待たせてしまって申し訳ない、異世界からの来訪者達よ。

私はこの国の王、ハイラスマーレじゃ。年齢は、まあ君達よりは上じゃ。見たままじゃな。」


見た目からして俺達のひい爺ちゃんくらいか?

この世界に来てから若い人達にしか会ってなかったから、余計年老いて見える。

それでも眼光は鋭く、言葉にも立ち振る舞いにも大きな存在感がある。

俺みたいな一般人から見ても分かる。この人はすごい人だ。


あれ?でもさっきソレイユは人生30年って言ってたよな?

この世界では20代後半でお爺ちゃんになるのか?


「あと、疑っているかもしれんので先に言っておくが、マーレは正真正銘わしの娘じゃ。まぁ、細かいことは聞かんでくれ。デリケートな話なのでな。」


マジですか!?

いや、マーレ姫の王様が父親だってことは海斗兄に聞いてたけど、王様お爺ちゃんだよ!?姫様が16歳ってことは、何歳で産んだんですか!?!?

なんて頭の中で突っ込んでいると、王様と目が合いウインクされる。

心を読まれたらしい…やばい、色々と控えなければ!


「さて、次は主らのことを教えてもらえるかな?自己紹介やこれまでの話はもちろん、元の世界のことも教えてもらえるとありがたい。」


それから、それぞれ自己紹介をした後、話のうまい里穂姉が代表して元の世界のこと、これまでのことを伝えた。

元の世界からこっちの世界に来た時のこと、その建物について、王様は特に関心があるようで、身を乗り出し、質問を交えながら聞いていた。


「なるほど、よく分かったよ。里穂さんは話をするのが上手じゃの。」


「そんなことないですが……ありがとうございます。」


俺も里穂姉と同じく小学校では児童会長で話し上手だと言われてきたが、やはりまだまだ遠く及ばないなと改めて実感する。

さすが伝説の児童会長と呼ばれるだけはある。


「ところで、里穂さんと海斗さんは魔法を使うことができるとマーレから報告を受けていたのだが、ここで披露してもらっても良いかな?」


「王様、僭越ながら口を挟ませて頂きます。里穂殿は良いとして、こちらの本田海斗については、魔法と言っても闇に取り込まれた状態で使ったものです。

闇の魔力については我々で封印しましたが、ここで魔法使うのは危険かと。」


確かにあの魔法をまた使うのは俺も心配だ。

だけど、ショーンさんまた海斗兄を怒らせるような言い方をして……


だが、これに関しては海斗兄が怒ることはなく、むしろ納得した顔で頷く。


「こいつに言われるのはムカつきますが……確かにその通りで、俺があの時使った魔法は良くないものだったと思います。

それに正直な話、無意識の内に使っていたので、今は使い方が分からないのです。申し訳ありませんが、俺にはできません。」


きっとショーンさんにムカつく以上に、自分の力の危険性に気付いているのだろう。

王様も納得したようで大きく頷いた。


「よかろう。そういうことであれば仕方がないのぉ。

では里穂さんはどうかね?」


「あの時は無我夢中だったのでできるかどうかわかりませんが……やってみます!」


里穂姉が右手を前に出し集中し始める。そして……


「イージス!!」


呪文と同時に盾が出現した。

海斗兄から俺達を守ってくれた盾。サイズはあの時よりひと回り小さいが。


「イージスの盾か、見事なものじゃ。

しかし、不思議なことがあるものだの、マーレや。」


手を叩き里穂姉の魔法を称賛しつつ、困った顔をマーレ姫に向ける王様。

この魔法の特別さを、俺達はのちに知ることとなる。


「さて、色々と教えてくれてありがとう。

ではお礼に1人1つ、質問を許可しよう。できる限りのことは答えるつもりじゃ。」


このように言うということは、王様に質問できるのは特別なことなのかもしれない。マーレ姫とショーンさんの驚く顔からして間違いないようだ。

だとすると、よく考えてから質問しなければ。


「じゃあ遠慮なく。元の世界に帰る方法はあるんですかね?」


海斗兄直球!!

でも、この質問は誰しもが考えることだし先陣を切ってくれてありがたい。

王様もこの質問は予想していたようだ。


「最初の質問はやはりそれじゃな。率直に言うと、こればかりはわしにも分からん。

もちろん国としても全力で帰り道を探すことは保証する。現に明日にでも君達が言っていた建物を調査するつもりじゃ。

じゃが、あそこの建物は以前から何度も調査しておるのじゃよ。今回の調査で新しく何か見つかるということは期待せんほうがよい。」


覚悟はしていたものの、王様ならもしかしたら……という淡い期待は崩れ去ってしまった。

すると、里穂姉が不安そうに質問する。


「あの……私達、この国にいていいんですか?

私達はよそ者であり、もしかしたら今言ったことも全部嘘かもしれない。あなた方の敵のスパイかもしれない。

そんな人間を国に置いておくメリットはないと思うんですが……」


確かに里穂姉の言う通りだ。さっきの戦いを見る限り、この国は戦時下だ。

そのような時に異世界からの来たとか言う素性もよく分からない人間が来たら、出て行けと言われても仕方がない。


「なるほど、確かにお主の言う通りじゃな。本来であれば、素性がはっきりとせん人間を置くのは危険かもしれん。

だがのぉ、逆に聞くがお主らはこの国を出て外の世界で暮らしたいのかな?」


「いや、それは……

正直な話、今外の世界に放り出されたら、1日ともたないと思います。なので、置いていただけたらありがたいですが……」


里穂姉の言葉を聞いて、王様はにこりと笑う。


「であれば、好きなだけこの国にいれば良い。

なぁに、スパイだとしてもこの国から情報を漏らすのは簡単なことではない。

それにのぉ、わしは人を見る目はなかなかある方だと自負しておる。安心せい、お主らは嘘などついておらぬ。」


王様の言葉にほっとしたのか、里穂姉も笑顔になる。この王様、本当に懐の深い人だ。


「さあ、残り2人じゃな。どうする?」


若葉を見ると、先に質問してというように手で合図される。

さて、なにを質問しようか。俺の聞きたかったことは海斗兄と里穂姉が聞いてくれたし。

気になってることと言えば。


「それでは……ヤリス、坊主達の隊長がこの世界のことを『人の欲望の成れの果ての世界』と言ったんです。王様はどういう意味か分かりますか?」


人の欲望の成れの果てという言葉、ずっと引っかかってたんだ。何かとても重要なことのような、そんな気がして。

俺の質問を聞き王様の顔が少し曇ったような気がしたが、すぐに元の落ち着いた表情に戻る。


「なるほど、あやつらはそんなことを言ったのか……そうじゃな、この世界が人の欲望の成れの果てというのは事実じゃ。

もともとこの国…いやこの世界は活気に満ち溢れておった。緑を守らなければいけないと言われるまでに家や建物が立ち並び、大地だけでなく、空や海、はたまた宇宙にまで人間は勢力を伸ばしていたらしい。」


まるで元いた俺達の世界のような話だ。

王様はため息をつく。


「表面では国同士仲良くしながら、ギリギリのバランスで成り立っていた世界。そんな中、世界的な大問題が起きた。たくさんの人が死に、多くの人が危機に陥った。これをきっかけにバランスが崩れたのじゃ。

そこからは互いの利権を奪い合い、欲望のまま戦った。世界全域を巻き込んだ戦争。

その成れの果てがこの世界じゃ。今では人口も全盛期の1万分の1にまで減ってしまった。人間が絶滅するのも、時間の問題かもしれんのぉ。」


自分で聞いておきながら、その壮絶な話に言葉が出なかった。人間の欲望が、ここまで世界を狂わしてしまうなんて。

俺達の世界だって同じようになってしまうかもしれないんだ。


「あの、じゃあ俺達を襲ってきたあの人達は……」


「それは2つ目の質問じゃな。その娘さんの質問を奪ってしまっても良いのかな?」


「いや、すみません。大丈夫です。ごめん、若葉。」


勢い余って2つ目の質問をしてしまった。

1歩下がって若葉の質問を待つ。

若葉はというと、俯いたまま表情が見えない。何を聞くつもりなんだろう。

10秒、20秒と静寂が訪れる。1分ほど経ったところで、若葉は俯いたまま、でもはっきりとした口調で質問を投げかけた。


「私達は、なぜこの世界に呼ばれたのでしょうか。」


「この世界に呼ばれた意味……ということかな?」


「はい。」


若葉の返答にまたも静寂が訪れる。


「とても難しい質問じゃ。本当に難しい……

わしはこの国を導き、守るためにいると自分では考えておる。魔導師達は、困っている者達を助け、この国を守るためにおる。農家は我々が飢えることのないよう一生懸命野菜や米を育てておる。

ではお主らはなぜこの世界に呼ばれたのか……

わし個人の意見としては、お主らをやつらとの戦争に巻き込むつもりは毛頭ない。この国のために米を作ったり、物を売って経済を回したりさせるつもりもない。何もする必要はないのじゃ。」


ふぅ…と、王様は一呼吸置く。


「じゃが……帰れる保証もなく一生この世界で暮らすことになるかもしれんのに、何もしないというのは逆に辛いものじゃ。

そこでどうじゃろう。お主らは元の世界では学生だったのじゃろ?だったらこの世界の学校に通うのは。」


学校に通う?この世界の学校ということは、魔法学校的なそんな感じか?

王様は俺の心を読んだようで、笑って答える。


「魔法はこの世界では当たり前のものだから、どの学校でも学ぶことができるのじゃよ。

ただ、この世界では普通4歳から12歳までの9年間学校に通い、卒業すると同時に大人として認められるのじゃ。ちなみに結婚は学生の時にするのが普通なのじゃよ。」


なるほど、だからソレイユは驚いていたのか。元の世界では信じられないことだが……やはり世界によって常識は様々なんだと改めて実感する。


「ただし、1校だけ12歳以上の人間も入れる学校がある。」


「お、王様。あの学校に入れるんですか?」


ショーンさんが驚いた顔をして聞くと、王様は大きく頷いた。


「もちろん自由意志は尊重するが……

もし主らが望むのであればこの国の教育機関のトップであり、頭脳でもある学校。

ハイラスマーレ魔導高等学院への特別入学を認めよう!」






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