137 女神の物語②
その後、研究者達は全員捕まった。彼らもこの国の魔力をどうにかしたいという気持ちがあったと裁判では話していたけど、だからといって何でもして良いということにはならないよね。
でも、その時に捕まった人達が30人以上いたことは、王様……パパを大いに困らせた。だって、それだけの人達が魔力について危機感をもち、王の娘を攫うという凶行に走ってしまったのだから。
悪いことは続く。
ママの体調が悪化したのだ。
ママは世界が魔力で汚染されるぎりぎり前に生まれていたから、この国で生まれた人達に比べたらそれなりに抵抗力があった。
けど、それでも魔力は知らず知らずの内にママの身体を蝕んでいたのだった。
私の魔法、マーレ・オブ・マギでママの身体の中の魔力を全て吸収してみたけど、体調は依然として良くならない。
既に臓器はかなりのダメージを受けており、例え身体の中の魔力を残らず吸収しても、空気中の魔力ですぐに汚染されてしまう。
だから、進行は遅らせられても、回復は難しかったんだ。
加えて、同級生達の体調も悪化の一途をたどる。パパも私も、ウォーデン国のみんなもどうにかできないか懸命に考えた。寝る間も惜しんで、色々なことを試してみた。
でも、ダメだった。
1人、また1人と命を落としていき、ママも起きている時間より寝ている時間の方が多くなってしまっていた。
決断の時が迫っていた。
もうこうなったら、あの方法しかない。
「ダメだ。」
予想通りパパには猛反対された。
あの方法とは、私がこの世界の魔力を全て吸収するというもの。
理論上は可能。魔力の貯蔵量はまだまだ余裕があった。というより、私自身も底が全く見えないのだ。
加えて、マーレ・オブ・マギのコントロールも、発現した時に比べて格段に上達していた。だから……
「最終的にはこの世界の魔力全てを吸収して、この世界の人達みんなが安心して暮らせる世界を作りたいと思ってるよ。
でも、それは今ってわけじゃない。
まずはこの国の魔力を吸収して様子を見たいの。それに、私が1番助けたいのは、ママだから。」
そう伝え、渋々了承をもらうことができた。
パパは王様だから、身内を贔屓することはできない。
けれど、なんだかんだ言ってもやっぱり1番大切なのはママと私だった。
私の身に危険が及ぶことはさせたくない。けれど、ママも救いたい。
そんな気持ちの中での妥協点だった。
そして、あの日を迎える。
天気は雨。雨は空気中の魔力を染み込ませ、地上をいつも以上に汚染する。空気中の水蒸気は雨……魔力を大量に含んだ無味無臭の毒だ。
雨はこれから数日降り続くという。それは、体が弱っている人達にとっては致命的。
もう、1日と猶予はない。
早く動かなければ、どんどん死者が増え、大切な人を失ってしまう。
私はママのベッドの横で、パパに見守られながらマーレ・オブ・マギを発動した。
私を中心に、順調に魔力を吸収していく。まず、パパの身体に宿る膨大な魔力が消え去った。と同時に、パパが家に施していた魔法の類、明かりや家の防犯対策の魔法が消える。
太陽が出ていなかったこともあり、部屋は薄暗くママとパパの表情もほとんど見えなくなってしまう。
とても不安だった。でも、ここで止まるわけにはいかない。
と、その時、2つの手が私の手をぎゅっと握りしめた。柔らかい小さな手と、ゴツゴツした大きな手。
パパとママだ。
その2つのかけがえのない手は、私の心を落ち着かせた。
そのまま時間が過ぎていく。
ウォーデン国の3分の2の魔力を吸収することができた。少し身体がだるい感じもするけど、これは一気に大量の魔力を取り入れたからだろう。大丈夫、まだいける。
町の魔力はあらかた吸収することができた。魔法で作られた明かりや、魔法によって引いていた水、起こしていた火が全て消え去る。
けれど、事前にパパが国全体にこのことを説明していたため、混乱は生じなかった。
魔法が使えなくなれば、生活は困難になるだろう。でも、理論上は魔力病の進行が止まり、時間が経てば回復するはずだ。そうすれば、新しい命がどんどん生まれる。長生きできる。
そうなればきっと……ううん、絶対にこの国はもっともっと良くなる。それが何年後、何十年後になるかはわからないけど、絶対!!
私はこの国の人達が大好きだ。この国の人達となら困難も乗り越えられる。
だから、あと少し頑張ろう。




