131 世界の秘密
「それで、若葉は目を覚ますのか!?どうなんだよ!!」
太陽の身体が震えている。世界の全てを変えてしまうようなとんでもない力が幼なじみの身体に眠っていたのだ。不安で堪らないのだろう。
もちろん私も同じ気持ちだけど……
太陽はわかちゃんに特別な感情を抱いている。
だからこそ……
「そうだね。君の大切な人、若葉さんはマーレ・オブ・マギを暴走させている。このままでは私の娘と同じように死ぬだろうね。」
男の言葉に絶句し、凍りつく私達。
そんな……わかちゃんが……死ぬ?
「でも、心配しないでほしい。彼女が死ぬのは世界の魔力を吸収し尽くしてからだ。それまでにはまだかなりの時間がある。まあ、もう話すことは叶わないだろうけど。」
その時、太陽が勢いよく飛び出した。愛する人を失うことへの恐怖、そしてその原因を作った男への怒りが込められた渾身の拳を叩きつける。
バキッ!と鋭い音。何かが砕けるようなそんな音が静かな戦場に響き渡る。
「きみの気持ちは分かるよ。私もかつて同じ気持ちを抱いたからね。」
太陽の拳はウォーデン王の頬にめり込む。口の中が切れたのか、血がスッと口端から零れ落ちる。
「なんで若葉が……あいつが…何をしたって言うんだよ……」
そのまま崩れ落ちる。そのままむせび泣く幼なじみに思わず駆け寄り、私は全力で抱き締めた。
辛いよね、太陽……ごめんね、お姉ちゃんなのに、何もしてあげられなくて……
守ってあげられなくて……
「そうだね。確かに理不尽だって思うだろう。でもね、彼の計画に巻き込まれた時点から、そしてこの世界に再び戻って来ると決めた時から、こうなることは決まっていたんだよ。
ですよね、父さん。」
……父さん?
誰のことを言ってるの?
ウォーデン王の視線がわかちゃんを外れ、後方の拘束された2人に向けられる。
ショーンさんなわけがない。年齢的にそれはあり得ない。と言うことは……
でも、そんなことって……
「どういう……ことですか?」
私達の後ろから困惑し震える声が聞こえる。
「マーレ……」
マーレは黒褐色の宝石のような瞳を潤ませ、その場に立ち尽くしている。その横にはフィミールさんとエリーン先生。2人とも信じられないという表情で2人の王を見つめる。
「そのままだよ、ハイラスマーレの姫君。私の父はハイラスマーレ王その人だ。つまりきみは、私の妹にあたるということだね。」
そんな訳ない、あり得ない。
そんな心の声が聞こえてきそうなマーレの表情。しかし、王様は否定しない。
いや、猿轡をかまされていて、否定できないんだ、きっと……
「そうだね、このままじゃ肯定も否定もできないね。リース、2人を喋れるようにしてあげなさい。」
猿轡を外され、涎が糸を引き地面に垂れる。が、そんなことは意に介さずショーンさんが叫ぶ。
「そんなのデタラメだ!マーレ、信じるな!!」
しかし、喋れるようになったにも関わらず、王様は何も答えない。ただ、マーレの瞳をじっと見つめるだけ。
「父さん、あなたのかけた『悲鳴』の呪いは、自然界の魔力がなくなった今、完全に効力を失った。娘に本当のことを伝えた方が良いのではないですか?それとも私が伝えましょうか?」
「これ以上適当なことを言うんじゃねぇ!!」
拘束されているに加え、魔法が使えないにも関わらず、ショーンさんが一歩前に出る。
が、それを制したのはハイラスマーレ王の一言だった。
「もうよい……わしが話そう。」
ふぅと一つ息を吐くと、目を瞑る。そのまま一秒、二秒……戦場が水を打ったように静まり返った。
みんなが王様の言葉を待ってるんだ。
別に特段大きな声で話し始めた訳じゃない。でも、その言葉は拡声魔法を使ったように戦場に響き渡った。
「こやつの言う通り、ウォーデン王ハイルはわしの息子じゃ。そしてマーレ、お前の兄でもある。産まれは異なるが、紛れもなくわしとわしの妻の子じゃ。」
まあ、このことを知っておるのは、この世界では5人といないが。と付け加える。
そこで私はピンとくる。図書館長のミンフィさんはこのことを知っている。
共通点は年齢だ。
この世界には高齢者がほとんどいない。魔力のせいで20〜30歳でみんな死んでしまうから。
でも、その中でもかなりの高齢まで生きている人もいる。ハイラスマーレ王、ミンフィさん、そして少し若いけどウォーデン王、ハイル。
多分この人達はこの世界の秘密を知ってるんだ。その秘密を隠すために、ハイラスマーレ王が『悲鳴』と呼ばれる魔法……呪いをかけていたとすれば辻褄が合う。
そして今回の件、ハイラスマーレ王とウォーデン王の繋がりも世界の秘密の1つ。
「詳しく……教えてくれませんか?」
震える声で問いかけるマーレ。
こんなたくさんの人がいる場所で話すことではないはず。でも、今の彼女にはそんなことを考える余裕はない。
一刻も早く真実を知りたい。
そんな気持ちが痛いほど伝わってくる。
「そうじゃな。ここまで話したのだから、皆も気になっているであろう。良いな、ハイル。」
「私は別に構わないですよ。『悲鳴』の呪いさえ無ければ、とっくの昔に話していましたしね。
まあ、話しすぎて世界を壊さないように気をつけてくださいね。あの子達がいることを忘れずに。」
そう言ってチラリとこちらを見るウォーデン王。
「心配しなくとも、そんな愚かな真似はせん。それで困るのはわしも同じじゃ。」
私達に話すと世界が壊れる??
質問したいことは山ほどあるけど、今はグッと堪える。まずはこれからの話をしっかり聞こう。
見極める必要がある。それは私の役目だ。
場合によっては、今後についても考え直さなければいけなくなるかもしれないし。
今後があれば……だけど……




