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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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130/168

130 マーレ・オブ・マギ


里穂side


初めは些細な出来事だった。

不意打ちや想定外の流れ弾等から身を守るための感知フィールドが消えたのだ。


とは言え、ガーディアンの魔法も展開しているため、それほど焦ることはない。多分わかちゃんの抑え切れていない消却魔法……いや、吸収魔法に触れてしまったか、もしくはドールの吸収魔法に吸収されたか。


いずれにせよそんなことだろうと私は思っていた。


しかし、そんな状況は瞬く間に一変する。


「なんだ?魔力が失われていく。」

「まずい、飛行が継続できない!一旦離脱する!」


空でドール達と戦っていた魔導師達が次々と地上へ降りてくる。


おかしい。みんな同時に魔力切れなんて。

そんなことあるわけがない。


そして、不可解な現象は続く。空にて突撃を待っていたドール達までもが降下し始めたのである。周囲の魔力を吸収できるドール達に魔力切れはあり得ないのに。


ただただその光景に唖然としている間にも、どんどん失われていく魔力。ついにはガーディアンも維持できなくなり、付与していた魔法は全て消し去られた。

他の人達も同様に魔法が使えない状況なので、そこまで危機的状況とは言えないけれど……


私は残る微量の魔力をかき集め、事態の原因を突き止めようと試みる。

いや、正直に言えば予想はついていた。ついていたけれど……


私はわかちゃんみたいに魔力を視認することはできない。でも、魔法を使えば空気中の魔力とその流れを確認することはできる。

継続的に失われ続ける魔力をかき集めて、魔法を発動する。


「やっぱり……」


戦場の魔力は、渦を巻くようにしてわかちゃんの小さな身体に集まっている。敵味方関係なしに。



予想通り……なんだけど…



凄まじい量の魔力を無尽蔵に吸収していく幼なじみに、不安しか感じない。身体がもつのだろうか……


そして更に驚くことが起きる。

なんと、私の視線の先……夜の空をぼんやりと照らすハイラスマーレ国の明かりが消え始めたのである。街の灯り、城の灯り、その一つ一つがポツポツと順に消えていく。


あれだけ離れた場所の魔力すらも吸収するなんて……まさかこの世界の魔力を全て吸収するつもり!?


「太陽!本当にまずいかも。このままじゃ……」


太陽は既に動いていた。わかちゃんの頬を叩きながら、何度も何度も名前を呼びかける。


しかし、反応はない。

瞼は上がっているが、そこから覗く目は虚ろで意識がないのは明らか。時折身体をびくつかせるものの、それは太陽の声に反応しているわけではないだろう。

多分、多すぎる魔力に身体が悲鳴をあげているのだ。



「ダメだよ、女神を起こしては。彼女は今、この世界を作り替えているのだから。」



ビクッと身体が震える。

この声、まさか……

太陽も気づいたようで、思わずわかちゃんへの声かけを止めてしまう。


恐る恐る顔を上げると、目の前にはこの戦争を始めた男が立っていた。隣には人形の姫、後ろにハイラスマーレ王とショーンさんを連れて。


2人は鎖で拘束されており、口には猿轡をかまされている。

こんな鎖、いつもの2人であれば抜け出すのは容易だろう。ただ、今は肝心の魔法を使うことができない。魔法が使えなければ、いくら王国最強の魔導師でも、どうしようもない。


でも、どうしてこんなことに?

魔法が使えないのはウォーデン王とリースも同じはずなのに。

その答えは、すぐに知ることとなる。


「よくも王とショーンさんを!!」


剣と盾を装備した魔導師2人が、ウォーデン王とリースに斬りかかる。魔導師とは言っても、武器を使ってはいけないなんてルールはない。むしろ武器と魔法を併用して戦う魔導師は結構多い。


武器は魔法で作られているわけではないので、わかちゃんの魔法で消されることはない。武器を持たない2人に対し圧倒的に有利だ。


魔法が使えなければ……の話だけど。



「リース、頼むよ。」


ウォーデン王の言葉を受け、リースが魔法を放つ。2人の魔導師は、放たれた風属性の弾丸を切り裂こうとするが、魔力で強化されていない剣など、恐るるに足りない。吹き飛ばされた剣は私達のはるか後方の大地に突き刺さり、魔法弾はそのまま魔導師達の脇腹を抉った。


痛みで悶絶する2人。私は咄嗟に回復魔法をかけようと右手を上げるが、当然発動しない。


「里穂さん、残念ながら魔法は使えないよ。この子と若葉さん……マーレ・オブ・マギの使い手以外はね。

厳密には、真のマーレ・オブ・マギの使い手だけれど。リースのコピーであるドール達では、残念ながらほとんど魔法は使えなくなってしまったからね。」


「くっ!」


ありったけの怒りを込めてウォーデン王を睨みつけるが、彼はそんなことは全く意に介さない。

脇腹に風穴を開けられた2人は、そのまま絶命する。

魔法が使えれば助けられる命だったのに……そう思うとやるせない気持ちでいっぱいになる。


「マーレ・オブ・マギってなんなんだ……若葉は目を覚ますんだろうな!?」


わかちゃんを大事に抱えながら、太陽が声を張り上げる。


「マーレ・オブ・マギ……魔法の女神という名の魔法。そしてその魔法を使うことができる女性の呼称でもある。」


マーレ・オブ・マギ……STORY TELLERから譲り受けた記憶の中にはなかった魔法。

こちらを……わかちゃんをじっと見つめながら話しを続けるウォーデン王、ハイル。


「魔力を吸収し、譲渡し、放出することのできる魔法。その気になればこの世界全ての魔力を吸収しすることはもちろん、放出することで別の場所を魔力で汚染し尽くすこともできる最強の魔法だよ。その分、使える魔導師はこの世界に2人しかいないのだけどね。」


2人ということは、わかちゃんとリースだけ!?

魔導高等学院で魔法を消し去った時から特別な魔法だということは分かっていたけれど、まさかそこまで稀少な魔法だったなんて……


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