125 Highlastmare vs. Warden④
戦闘開始……ハイラスマーレ国に帰ってきてから既に6時間が経過している。日を跨いでの戦いは、魔法戦としては珍しい長丁場のものとなっていた。
魔法戦は、剣や盾、弓を交えての戦闘に比べ短くなりがちな傾向がある。
当然だ。だって一発一発の魔法が、まともに食らえば致命傷を負わせるほどの威力なのだから。
それが低位の魔法だったとしても、火の玉や小規模の雷をまともに食らえばタダでは済まない。
また、拮抗することも稀だという。大抵の場合、魔法戦というのは『どちらかが強い』で終わるもの。
実力がそのまま結果に結びつく。その差が大きければ大きいほど、時間はかからない。
確かにただの魔導師さん達がいくら束になっても、多分私達に勝つことは難しい。下手をすれば無傷での勝利もあり得る。そのくらい魔法戦の結果というのは、はっきりすることが多いのだ。
けれど現状、戦場は拮抗した状態にある。前半は魔法を吸収できるドール達が優勢だった。でも、里穂姉、マーレが率いる後衛部隊の広範囲回復魔に私の魔力譲渡を加えることで、戦場は一気に膠着状態となったのだ。
互いに魔力を回復することができ、こちらは体力も回復可能だ。かたやドール達はダメージという概念がない。
動かなくなれば、それは死と同義。
どちらも決め手を欠くまま、時間だけが過ぎていた。
「カースサンダー!!」
黒雷が戦場を駆け巡る。ドール達は海斗兄の広域殲滅魔法を10人がかりで無力化する。
あれだけの人数が同時に吸収魔法を使えば、極大魔法に匹敵する魔法も止められてしまう。ドール達もこちらの戦力を大方把握したようで、魔法に合わせて人数を変えて対応するようになってきた。
「ちっ、やっぱりあの魔法厄介だな。」
「だったら次は俺が!トールハンマー!!」
太陽が雷の極大魔法を放つ。しかし、別のドール達が即座に入れ替わり、吸収魔法で無力化される。
とは言え、あまりの魔力の大きさに、すぐさまカウンターを放つ余力はないみたい。
もし撃たれたら、私が無力化するけど。
他の魔導師さん達は、いつでも攻撃できるよう高位魔法を詠唱しながら待機している。太陽や海斗兄、私が吸収魔法の容量いっぱいまで魔法を撃ち込み、吸収できなくなったところを攻撃してもらう。
半端な攻撃はカウンターの餌食になってしまうから。
このままこの状態が続くのだろうと覚悟して、幼なじみ2人に何度目か分からない魔力譲渡をしようとしたその時、急に戦局が動いた。
なんと固まっていたドール達が一斉にバラバラに分散したのだ。
これでは私達の魔法を止めることはできないのに、なんで?
無意識のうちに私は目線を上空に向けていた。
チラリ。一瞬だけど、リースと目が合ったような気がする。
リース、何をするつもり?
ううん、違う。今の彼女はリースじゃない。彼女もまた、ウォーデン王の操り人形だ。彼女の意思ではなく、ウォーデン王の指示。
百戦錬磨の王、敵の作戦すらも利用するような狡猾な男の思考など、私に読み取れるわけがなかった。
私にできることは、ドール達を倒して、戦争を終わらせること。そして、リースを元の状態に戻すこと。
きっとリースのあの状態も魔法によるもの。だったら、私が吸収して魔法を消却してしまえば、いつものリースに戻せるはずなんだ。
やれることははっきりしている。
ドール達は吸収した魔力を使って、次々と魔導師さん達を倒していく。けれど、それは逆も然りで、一対一では太陽や海斗兄、フィミールさんやエリーン先生には敵わない。ドール達も次々と倒れていく。
そんな中、私はバラバラに散ったドールの1人と向き合った。
今、リースの周りにはほとんどドールがいない。このドールを倒せれば、一気にリースのところまで行けるかもしれない。
私の大切な友達を救うには、他の魔導師さん達より先に彼女の元へ辿り着かなきゃダメだ。みんなリースを殺せばドール達が止まると思ってる。それは多分正しい。
でも、殺す必要なんてない。私の魔法ならリースを正気に戻し、ドール達との繋がりも切ることができるはずだから。
ドール。ウォーデン国のエネルギー管理とプロジェクトFのために作られたホムンクルス……人造人間だ。プロジェクトFがこの戦争のことだというのは、さっきのウォーデン王の言葉ではっきりした。
ということは、ドールは危険な環境下での作戦遂行や、戦闘のために作られた人形ということになる。
ドールは、とどのつまり戦闘のプロ。
それに対して私はこうして1人で戦うのは初めて。
いっつも誰かが隣にいてくれたから。
いや、今回だって、ピンチになったら太陽や海斗兄がきっと駆けつけてくれるとは思うよ。でも、今回は私1人でなんとかしたい。
そのための力も手に入れたんだ。
そして、リースを助けたい。




