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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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123/168

123 Highlastmare vs. Warden③


しかし、こちらの雰囲気を敏感に察知したのか、新たに数人のドール達がリースの元へ集まって行く。王様とショーンさんのところに向かわなかったのは正直助かった。向かわれていれば、広範囲回復魔法の範囲外に魔導師さん達が赴かざるを得ない状況になったからだ。


たけど、何かしようとしているのは確か。気を引き締めないと。


10人のドール達がリースの前で円を描く。そして手をかざし何やら呪文を唱え始める。


詠唱魔法?しかも10人でなんて……


詠唱が進むにつれ、魔法陣が浮かび上がる。魔力の流れに敏感な私はすぐに気づいた。

凄い勢いで魔力が収束されてる。あれはまずい。

あれだけの魔力を使い、しかも詠唱魔法。間違いなく極大魔法だ。


極大魔法とは、高位魔法の上に存在する魔法であり、一撃で戦闘を終息させる、もしくは戦局をひっくり返すような規格外の魔法のことを言う。

使える魔導師はごく少数で、圧倒的な魔力を持たない限りは戦闘中一度しか使えない切り札的な魔法。

太陽の『トールハンマー』や『ザ・サン』などが極大魔法に当てはまる。


「里穂姉……」


「わかちゃん、ダメ!集中して!わかちゃんがここでいなくなったら、また一からターゲットし直さなきゃいけない。それじゃあ間に合わない!」


里穂姉も気づいてたんだ。でも、このままじゃまずいよ。

あんな魔法を受けたら、後衛部隊は一気に壊滅状態になってしまう。


すると、里穂姉は額に玉の汗をかきながら、でも笑顔で上空に目線を向ける


「大丈夫。私達には強い味方がいるんだから。」


私も釣られて上空に目線を移す。ドール達と私達の間に4人の影。



あぁ、大丈夫だ。



「フィミール、太陽、海斗、分かってますねぇ。破られれば、敗北は必至ですよ。」


「大丈夫っすよ、この4人が集まればどんな魔法だって止められるっす。」


「そうそう、なんなら俺1人でもいいくらいだぜ。俺の成長、エリーン先生にもしっかり見てほしいからな。」


余裕綽々の海斗兄の頭を手に持っていた扇子で思いっきりはたくエリーン先生。

そんなやりとりに、相変わらずだなぁと苦笑する私、里穂姉、マーレ。


「油断は禁物ですよ。けれど、そこまで言うなら見せてもらいましょうかねぇ。あの魔法陣、詠唱からして風属性の極大魔法でしょう。風属性の魔法は範囲が広いのが厄介ですが、撃ち漏らした分は私と太陽とフィミールがなんとかします。

海斗はきっちり止めてください。」


「了解!」


空気中の魔力が海斗兄にも集まり出す。集まった魔力は、海斗兄の力によって闇の魔力に変換される。

私には黒く見える魔力。でも、怖くなるような黒色ではなく、優しい、穏やかに包み込むような漆黒。


やっぱり完全に制御してるんだ。

あれだけの闇の魔力を無尽蔵に扱えるなら、もうこの世界に海斗兄と互角に戦える魔導師はほとんどいないだろう。


そのくらい圧倒的な力。



互いに魔力の収束が終わる。先に声を上げたのはリースの方だった。


「あれを殲滅すれば、我々の勝利は揺るぎないものとなります。

打ち滅ぼしなさい。破壊の暴風、ディストラクションストーム。」


呪文と共に発動された魔法は、規格外の大きさの竜巻。竜巻の周りを風の刃が乱れ飛び、先端にいくにつれて鋭く尖っている。

荒れ狂う風の力で巻き上げられた枯れた木々が、風の刃でズタズタに切り刻まれる。それだけを見ても、殺傷性の高い魔法だということが分かる。


その魔法の恐ろしさに、皆が息を呑み、慌てふためく。でも、里穂姉とマーレだけは動じない。


『みなさん、目を瞑りましょう。集中力を切らしてはなりません。

大丈夫です。あの4人なら絶対に守ってくれます。』


目を閉じることで、恐怖の対象から目を逸らし、行使する魔法に集中させる。

前衛の4人を信じていなければできない芸当。

姫様の言葉はみんなの道標になる。恐怖に慄く魔導師達も、目の前の死の暴風から目を逸らすことで、落ち着きを取り戻した。


「もちろんだ!!俺達を信じろ!!」


マーレの言葉に続き、海斗兄の言葉が戦場に響き渡る。


『絶対に守る!』という強い気持ちが滲み出ている。


そして、海斗兄も魔法を展開した。


「カースシールド!」


それはただの盾の魔法。けれど、莫大な闇の魔力を付与されたことにより、形状も大きさも全く違うものとなる。20メートルを超える大きさは、破壊の暴風の最大径を軽く上回る。盾には蛇や三つ首の怪物……地獄の番犬ケルベロスが描かれている。あとは3人の女性?


カースシールドにディストラクションストームが衝突する。凄まじい回転力で盾を削り取ろうとする竜巻だが、それ以上は進むことができない。完全に海斗兄のカースシールドが上回っている。


ドール10人で発動した極大魔法をあそこまで軽々と。

けれど破壊の暴風にはもう一つの危険があった。竜巻の周囲を荒々しく舞っていた風の刃だ。カースシールドにぶつかった衝撃で、風の刃が分離する。無数の刃がカースシールドの外側を抜けこちらに飛んでくる。

風の刃は、その一つ一つに高位魔法クラスの威力がある。

あれも直撃すればタダでは済まない。


でも私ももう動じない。だって……



「太陽、フィミール、全て撃ち落とすのです。」


「「了解!!」」


まだ最強の魔導師が3人もいるんだから。


「サンダースピア!」


「ブラックホール!」


太陽は雷の槍を、フィミールさんは重力球を出現させ、的確に風の刃にぶつけていく。


数秒後、全ての刃は巨大な竜巻と共にかき消えていた。こちらの布陣には傷ひとつつけることなく、相手の切り札である極大魔法を完全に封じ込めたのだ。

さすが最強の魔導師達。この3人が負けるところなんて、想像できないよ。


「さあ、みなさん。私達の方も準備が整いましたよ。広範囲回復魔法、いきましょう。」


後方の魔導師達からも魔力が流れてくる。それらに私達の魔力も混ぜ合わせ、魔法陣を生成する。本来なら魔法陣を展開しなくても、十分効果を発揮する魔法。でも、今回は対象人数が桁違いに多い。こういう場合は魔法陣を介した方が効率が良く、精度も上がるのだ。

まあ、こういう知識は、みんな里穂姉からの受け売りなんだけどね。


「トータルヒーリング、発動!!」


発動と同時にごっそり魔力を持っていかれ、少しふらつく。まだまだ体の中に貯められた魔力には余裕がある。けれど、極大魔法10発分ほどの魔力を一気に放出すれば、こうなるだろう。

その甲斐もあってか、効果は絶大だった。


倒れていた人達、疲労困憊だった魔導師達の顔がみるみる内に生気を取り戻す。傷が一瞬の内に治癒し、脚や腕などの欠損部位も元通りになる。


もちろん死んでしまった人達は起き上がらない。万能の魔法があるこの世界でも、死に抗うことはできない。それはとっても辛く悲しい。

この世界において、死は身近なもの。でも、やっぱり慣れることはない。


それでも、死の淵を彷徨っていた人達の多くはそれを逃れ、驚き、喜ぶ姿を見ると嬉しい。たくさんの人達の役に立つことができたのだと実感する。


「成功ね!良かった!!」


私以上に疲労困憊の里穂姉とマーレ。

そりゃそうだ。2人だけで戦場にいる味方の状態を把握し、一人ひとりに合った回復魔法をかけていったのだから。

とんでもない集中力だ。私だったらそんな精密な作業、絶対できない。


「体も魔力も回復した。もう一踏ん張りだ!みんな行くぞ!!」


太陽の激励に皆が応える。

回復した魔導師達は再び戦線に加わることで、だいぶ戦局は変わるはず。



この流れ、いけるかもしれない……ううん、絶対にいける!

私は里穂姉とマーレ、そして後衛部隊の魔導師達にも魔力を譲渡すると、再び太陽と共に前線に飛び出した。





その先に待ち受ける結末を、知る由もなく……








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