122 Highlastmare vs. Warden②
戦いが始まって早1時間。
ドールが常に5人以上のチームを組んで行動するようになったことで、たとえ高位の魔法であっても、吸収魔法を突破することが難しくなってきた。
時間が経てば経つほどこっちの方が不利だ。私と海斗兄は別としてこちらの魔導師は魔法を使えば使うほど魔力は消耗する。
ドール達は吸収魔法があるので魔力を回復することができる。
私は消耗した魔導師さん達に魔力を分け与えながら戦場を駆け回る。けれど、私が魔力をあげられるのは直接触れられる人、まだ戦える人達だけだ。
遠くにいる人達はもちろん、気を失っていたり、大怪我をしていたりする人には、意識がなかったり混濁したりしているので分け与えることができない。
王様達の戦いは、1時間が経つのに一向に衰え知らず。今は体術での攻防となっている。
おじいちゃんとは思えないようなスピードで飛行し、腕や脚を取り組み技に持ち込もうとするハイラスマーレ王に対し、ウォーデン王はヒットアンドアウェイで拳や蹴りを繰り出している。柔道vs.空手の構図。
きっと体術で戦いながら、魔力を回復させようとしてるんだ。
魔力が見えるようになった私は、王様達の周囲の魔力の様子を見て悟る。
残っているのは魔導師さん達が100人ほど、対してドール達は少なくとも70人は戦闘に参加している。
100人近くの犠牲で30人しか倒せていない……
やっぱり吸収魔法が強力すぎるよ。それをみんなが使えるなんて……
私が言えた義理ではないんだけど。
草も生えない不毛の地に、倒れた人達の山。煙と血の匂いが鼻につき、思わず鼻を抑える。その時だった。
『みなさん、状況が悪いです。一度立て直します。』
マーレの声が頭に響く。広域一斉念話だ。次いで里穂姉の声。
『今から広範囲回復魔法をかけます。戦闘は継続しつつ、ドール達を引きつけながら指定範囲に後退してください。王様とショーンさんにはこの後私が直接回復に向かいます。もう少し持ち堪えてください。』
『まだまだこちらは余裕じゃ。魔導師達を優先してくれ。
お主ら、このままでは厳しいのはわかっておるな。後退するのも勇気じゃ。』
里穂姉、王様の言葉を聞いて、皆一様に後退を始める。もちろんドールを引きつけながらゆっくりと。
流石にこの状況で全てのドールが王様達に向かうのはまずい。それは誰しもが理解していた。
その時、私の頭の中にある考えが閃く。
私にもできることがあるかもしれない。
「太陽、私ちょっと里穂姉のところに行って来る!!」
「えっ!?……ああ、分かった。気をつけて行くんだぞ。」
隊長の許しを得ると、もう1人の隊長のもとへ急いで飛んでいく。後衛部隊は、私達が戦っていた荒地から200メートルほど離れたところに陣を構えていた。
私が飛んできたことに驚く幼なじみ。
そんな幼なじみに、降り立つなり話しかける。
「里穂姉、広範囲回復魔法に私の魔力譲渡も組み込める?」
体力、怪我の回復だけじゃなく、魔力も回復できれば、この状況を打破できるのではないかと考えたのだ。
それがどれだけ難しいことなのかは、私には分からない。でも、里穂姉とマーレならやってくれると思ったから。
「マーレ、それって可能?」
「どうでしょうか……そもそも魔力譲渡……魔力を相手に渡す魔法自体が特殊なので……
けれど、やってみる価値はありそうですね!」
やった!!と私はその場で飛び跳ねる。
「落ち着いてください、若葉。とても特殊な魔法です。簡単ではありませんよ。頑張れますか?」
「もちろん!」
みんなの役に立てるなら、もっと頑張れる。
私の魔法で、みんなを救うんだ!!
広範囲回復魔法は、味方一人ひとりをターゲットにし、ダメージに応じて回復する魔法。莫大な魔力と繊細な魔力コントロールが肝の超高難度の魔法だ。
莫大な魔力は後衛の魔導師達の魔力を合わせればなんとかなる。問題はコントロール。
それを里穂姉とマーレはものの見事に成し遂げていく。1人10秒かからずダメージの把握、付与する回復魔法を決めていく。そこに乗っかる形で私の魔力譲渡も組み込んでいった。
私は一人ひとり譲渡する魔力量を変えるような器用なことはできない。でも、私の場合それは必要ない。だって、有り余るほどの魔力があるわけだから。ちょっと多めなくらいの魔力を分け与える感じでターゲットしていく。




