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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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119/168

119 王の思惑


「感動の再会は済みましたか?流石に水を刺すのは野暮だと思いましてね。」


今まで黙ってこちらの様子を伺っていたウォーデン王が口を開く。

これだけの戦力を見ても、全然動じる様子はないし、むしろ薄っすら笑みまで浮かべている。

対照的にリースはキッとこちらを……特にフィミールを睨みつけている。


「随分余裕だな。言っておくが、2人だからといって手加減するつもりはないぞ。ここで必ず終わらせてやる。」


ここにいる全ての人達の気持ちを代弁したショーンさんの言葉。

対してリースが声を上げる。


「フィミール、卑怯ですよ!!私達をずっと騙していたんですね!!」


「卑怯なのはそっちっす。あんた達はうちの国の貴族達を煽動して反乱を起こした。この間は王の留守を狙って直接町を攻めてきた。

結果、一般の市民も被害を受けたっす。

俺達はそちらの一般人には一切危害は加えてないっす!!」


「そ、それは……」


リースは黙り込んでしまう。

確かにその通りだ。宣戦布告してきたのはウォーデン国の上に、攻撃は見境ない。

それに、フィミールさんは貴族達を誇りに思っていた。大好きだったのだ。黙っていられるはずがない。


でも、リースの戸惑った表情を見ると、今突きつけられた作戦は彼女が主導ではないことも明らかだ。

もしかしたらリースは反対していたのかも。

彼女は戦争に一般人を巻き込むことには反対していた。その気持ちは嘘じゃない。

けれど、ヤリスやジェラールなど、過激派の人達を止めることが出来なかったのかもしれない。


「まあまあ、リース。フィミールはとてもよくやってくれた。この最高とも言える状況を作り出したのは、彼の類まれなる頭脳のおかげだ。そんな功労者に、感謝はすれど卑怯だと罵るのはいかがなものだと思うぞ。」


そう言って、言い返せない悔しさにワナワナ震える娘の肩に手を置くウォーデン王。


「相変わらず強がりを……この状況のどこがお前にとって最高の状況なんだ。」


ショーンさんが睨みつけながら言い放つ。

ハイラスマーレ国の最強戦力、王様、4賢者に加え、精鋭魔導師200人以上。

それに私達だっている。太陽と里穂姉は4賢者と同等の力を持っているし、闇の魔力のコントロールに成功した今の海斗兄なら下手をすればその2人を上回る強さだ。私だって、以前のようにただ魔法を消せるだけじゃない。

確かにウォーデン王とリースは強いけど、それでもこの人数差でははっきり言って勝負にならないはず。


でも、ウォーデン王は余裕の笑みを崩さない。その余裕に、味方のリースですら違和感を感じているようで、ちらちらと顔を見上げている。


分からない。でも、不気味だ。



ザッ

夜の闇の中でも輝きを失わない深紫の荘厳なローブがはためく。

この場で最も偉大で威厳のある王の声が、静かに、でもはっきりと戦場に響き渡る。


「ショーンや、もうよい。

ウォーデン王、ハイルよ。貴様の妄言にこれ以上付き合うつもりはない。

貴様はわしが責任を持って消させてもらう。この世界のために。」


空気が張り詰める。その空気に当てられ、背筋が伸びる。

いつも思うけど、王様のウォーデン王に対する態度は他のそれと全くと言っていいほど異なる。


この2人……ハイラスマーレ王とウォーデン王の間には、私達が入り込む隙がないほどの怒り、怨念、冷酷さを感じるんだ。


以前に一体何があったのだろう……

本人達には絶対に聞けないけど……


「ようやく口を開いてくれましたね、偉大なる王よ。戦う前に声を聞いておきたかったのですよ。落ち着いて話せるのは、これで最後になるかもしれませんしね。」


「貴様と落ち着いて話すことなどない。」


ハイラスマーレ王は冷たく吐き捨てる。対してウォーデン王は体の前で手をフラフラと振る。


「相変わらず手厳しいですね。でもそれでこそ……」


「ひっ……」


男の顔が一変する。


私は思わず小さく悲鳴をあげてしまう。私以外の人達は悲鳴こそあげなかったものの、たじろぎ、一歩後ろに下がってしまう者も多くいる。

里穂姉にギュッと手を握られる。その手は汗でしっとりしている。


里穂姉、緊張してる。


ショーンさん達も動揺を隠せないようだ。


それほどまでの殺気。

ウォーデン国で見せていたような穏やかな表情は一切なく、鋭い目つきは睨まれただけで命を奪われそうであり、圧倒的な覇気は気持ちを萎縮させる。


そして、ウォーデン王はリースの頭に手を置いた。彼女はビクリと体を震わす。


「ウォーデン王、何を……」


あのいつも堂々としていて、何事にも屈しない心をもつ彼女が、子犬のように小さく震え、怯えるように問いかけている。そんなリースを完全に無視し、ウォーデン王はハイラスマーレ王に対し冷酷な笑みを浮かべる。


何かまずいことが起きる気がする……リースを助けたい。

思い起こさせる大将軍フリードとの戦い。あの時は何もできなくて、大切な友人であるマーレを助けることができなかった。



でも……今の私なら!!



もうあの時のような後悔はしたくなかった。

私はウォーデン王の覇気に抗い、思い切って足を踏み出す。


が、里穂姉と太陽にすぐさま引き戻される。


『わかちゃん、ダメだよ。危険すぎる。』


『でも、このままじゃリースが!!』


『若葉が行くことで、いい方向に転ぶとは限らない。今は我慢するんだ。」


頭の中に響く2人の声。

悔しい。

リースをあの場所から救ってあげたい。


でも……2人の言う通りだ……明らかに異様な空気。これから確実に何かが起きる。


勝手な行動はみんなを危険に晒してしまうかもしれない。そう思ったら、もう前に出ることはできなかった。




でも、もしこの時2人を振り切って止めに行っていたなら……

もしかしたら結末は変わっていたのかもしれない……


あくまで結果論だけど……



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