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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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118/168

118 お日様の香り



あったかい。


私は今、包まれている。戦闘中だということも、敵国に囚われていることも忘れ、ただただその心地よさに身を委ねる。


これはそう、まるで……お日様の香り。

私が良く知るあの人の香り……



「…ば……ゎかば……わかば!!」



えっ、この声……本当に?


そんなわけない。ここはウォーデン国。

ハイラスマーレ国からは遠く離れており、彼がこんなところにいるわけない。



でも、この声、この香り……この温かさ。


私はよく知ってる。



ドキドキしながら、ゆっくり目を開ける。


「…たい……よう?」


ギュッ!

抱き抱えられた状態から、上半身を強く抱きしめられる。


「良かった……生きててくれて、また会えて本当に良かった。」


あまりの急展開に、何が何だかわからないけど……嬉しい。その気持ちは紛れもない本物。

そう返そうとするけど、まだうまく言葉が出てこない。

代わりに私も大好きな幼なじみをギュッと抱きしめ返した。



聞いてほしいこと、伝えたいことがいっぱいある。

でも、何から話せばいいかわからない。



たった2週間離れてただけなのに……大好きが止まらない。



「若葉、ごめんな。すぐに助けに行ってやれなくて。」


首をぶんぶん横に振る。


「私の方こそ、心配かけてごめんね。助けに来てくれてありがとう。」


『助けに来てくれて』

その言葉に少し苦笑いする太陽。

そして周りを見るよう促される。


私はハテナマークを浮かべた後、周りをゆっくり見渡した。


そこは先ほどまでと同じ、生き物の気配がしない乾いた地面。前には異様な雰囲気を放つ4つの四角い建物。


太陽は何を見せたいんだろう。

私は太陽に抱きしめられたまま、ゆっくり後ろを振り返る。そして唖然とする。



えっ!?なんでこんなところに!?



そこには石造りの巨大なお城。てっぺんは雲を貫くほどに高く、圧倒的な存在感を放っている。そして城下に広がる町。


私が……私達が良く知る町。

こっちの世界の故郷。


「ここって……ハイラスマーレ国?」


「あぁ。まぁ正確に言えばハイラスマーレ国から少し離れた場所だけど。さすがにこんな巨大な物をハイラスマーレ国に転移させられないしな。」


そして言葉を続ける太陽。


「若葉達はここまで自力で戻ってきたんだ。俺はただここで待ってただけ。本当は1秒でも早く助けに行きたかったんだけど……」



ますますよく分からない。


……いや、分からなくない。



『カーストランスポーション』


私がウォーデン国で聞いた最後の言葉。海斗兄が使った魔法。

ということは、ハイラスマーレ国まで転移してきたってこと!?しかも私達だけじゃなく、建物も含めた大地そのものを!?!?


信じられない……

私達だけ、人間だけを転移させるならまだ分かる。私もこの間現実世界でやったし。

でも、こんな大きなものを丸ごと転移させるなんて。


闇の禁術……凄すぎる。



「そうだ、海斗兄やマーレ、フィミールさんは!?」


あえてリースの名は出さなかった。

3人と同じくらい心配してる。友達だもの。

でも、今どういう状況か分からない中で、敵国の姫の名前を出すのは危険だと思って。


私はいいけど、他のみんなが疑われるようなことはできない。


「おっ、やっと思い出してくれたか。」


うわぁ。

ちょっと乱暴に頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。

顔を上げると。もう1人の幼なじみがニヤッと笑う。


「忘れてたわけじゃないよ!!」


ただ、急展開すぎて状況が飲み込めなかっただけ。あと、太陽に会えたことが嬉しすぎて……

もちろん後半の理由は口が裂けても言えないけど。


「悪かったな、黙ってて。心配かけちまったよな。」


「ほんとだよ。本気で海斗兄が暴走してると思ってたんだからね……本当によかった…大丈夫なんだよね?」


「あぁ、ピンピンしてる。」


その身体はまだ闇の魔力に覆われているが、前回、前々回のような禍々しさは感じられない。闇属性の魔力なのに澄んでいるような……言葉では形容し難いけど、そんな感じ。


「終わったらちゃんと説明してよね。」


「分かってる。だから、きっちり終わらせよう。」


そう言って前を向き直る。気付けばマーレとフィミールさんは私達の前に立っており、その先に2人の男女の姿。奥には4つの建物。


ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン


マーレとフィミールさんの横にショーンさんとエリーン先生。そしてなんと王様が並び立つ。


ハイラスマーレ国の最高戦力、4賢者と王様が揃い踏みだ。その圧倒的な存在感、そして魔力に味方ながら息を呑む。


そして、私の隣にももう1人。


「太陽早すぎ。先行しないようにってあれだけ念押ししたのに、もう……」


「里穂姉!!」


私を見てニコッと笑う幼なじみに、私は思わず抱きついた。

太陽とはまた違った安心感に包まれる。


「わかちゃん、よく頑張ったね。よく戻ってきてくれたね。

ごめんね、あの時助けてあげられなくて。」


一生懸命首を横に振る。そしてついに堪えていたものが……涙腺が崩壊した。



みんな悪くない。こうやって生きてまた会えたんだもん。


それだけで十分だよ。



私があんまりにも泣くもんだから、里穂姉ももらい泣き。太陽と海斗兄は顔を背ける。

泣き顔は見せたくないみたい。


「みなさん、募る話は終わってからゆっくりしましょう。時間はたっぷりありますから。」


前に並び立つ1人、姫様が私達の方を振り返り、笑顔を見せる。


マーレの言う通りだ。この戦いに勝てれば戦争は終結する。

ううん、勝てればじゃない。勝つんだ!

もう誰も傷ついてほしくない。みんなが笑って過ごせるように、勝つしかない!


私は嬉し涙を拭うと勢いよく立ち上がり、太陽、海斗兄、里穂姉の横に並び立った。


気付けば後ろには大勢の魔導師さん達。

ハイラスマーレ国の全ての戦力がこの地に集結した。


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