114 vs. darkness③
「まずいっすね。若葉さんは飛行魔法はできるっすか?」
「できますけど……あのスピードは無理です。」
でも、フィミールさんとマーレは私がいないと禁止区域に入ることはできない。
「私達でも、これだけ距離をつけられた状態で追いつくのは厳しいですよ。」
すかさずマーレがフォローを入れてくれるが、私がいなければなんとか追いつけるのかもしれない……
いや、待って。今の私ならなんとかなるかも!!
距離が遠ければ遠いほど魔法に使われる魔力はたくさん必要になる。
でも、立入禁止区域……致死量クラスの魔力が存在するこの場所なら!!
私は右手を上げ、青空の先に見える黒い点……海斗兄をロックする。
「チェーンバインド!!」
それは基本的な拘束魔法。でも、魔力をいっぱい込めれば、大魔法にも匹敵させられる。
この距離でもはっきり見える超極太の鎖が、黒い点を覆い尽くす。
同時に、何かをとらえた感覚が私の中にも伝わってくる。
「捕まえた!!2人とも、行きましょう!」
唖然とする2人を促し、海斗兄のもとへ急ぐ。
「俺の知ってるチェーンバインドはあんなに太くないっす。」
「それに遠距離魔法ではないですよね。せいぜい中距離……莫大な魔力があればなんでもできるのですね。色々とすごいです。」
褒められてるんだよね、私。なんだか言葉の節々に色々な感情が込められているような気がするけど。
まあ、いっか!とにかく海斗兄を止められたんだし、あとは私が吸収魔法で闇の魔力を取り込んで終わりだ。
ズズズズズ。
何かが吸われるような音。と同時に、チェーンバインドから魔力が勢いよく吸収されるのを感じ、私も魔力を込め直す。
大丈夫、私が込める魔力の方が圧倒的に多い。さすがの海斗兄もこれだけの魔力は吸収しきれないはず。
現に、徐々に吸われる魔力は減ってきてるし。
でも、なんだろうこの感じ。すごく嫌な予感がする。
まだ距離は1キロ近くある。けれど、海斗兄を中心に空気がビリビリと震えている。
あれは凄まじい魔力。
「マーレ、フィミールさん、私の後ろに!!早く!!」
「カース・ヘル・ヒートプリズン。」
ゴォー!ゴゴゴゴ!!
信じられない熱量が海斗兄を中心に広がり、チェーンバインドを焼き尽くす。
その魔法は、私達には直撃はしなかった。
ただ、目の前の変わり果てた景色に空いた口が塞がらない。
「嘘ですよね……」
「これは…やばいっすね……」
確かカース・ヘル・ヒートプリズンは対象を閉じ込めて、高温でじっくり焼き尽くす魔法だったはず。
でも、この魔法は……
海斗兄の真下にあったタンク3機は全て溶け落ち、跡形もなく消失。残ったのは黒く焼け焦げた大地のみ。
汚染水の強力な魔力も全く感じられない。
水は高温すぎると蒸発せずに分解されると聞いたことがあるけど……魔力もあまりの高温に分解されてしまったのだろうか……
「海斗兄!!私だよ、若葉だよ!!」
チェーンバインドで拘束していた間に声が届く距離までは近づくことができたので、再度呼びかける。けれど、反応はない。
いつの間にか海斗兄の髪がとても伸びている。
それに身体を包み込むどす黒い圧倒的な魔力。
前と同じだ。
こうなったらもう封印魔法しか……
けど、封印魔法だって今の海斗兄に使うのはかなり厳しい。過去に封印した2回とは、レベルが違いすぎる。
まず、接近すること自体が難しいのだ。ゼロ距離でしか使えない封印魔法を使うのは現実的ではないし、そもそもそこまで近寄れるのであれば、私の吸収魔法でなんとかなる。
幼なじみは私達を置いて、再び移動を始める。
そして……止まった?
誰かが海斗兄の前に立ち塞がっている。
「あなた達、ここで何をしているのですか?ここは立入禁止区域ですよ。」
その言葉はとても丁寧で、でも決して許さないという強い意思が伺える。
白いフードで顔をすっぽり隠しているけれど、私にはその声ですぐに誰だか分かる。
「リース!!」
リースはスッとフードをとる。
私達を一瞥するその表情はとても険しく、はっきり言って……恐い。
「わか、後でちゃんと全部教えてもらうからね。
それから、フィミール。あなたがいながらなんてザマですか。同じく後でお話があります。」
「「はい。」」
いや、本当に恐いですリースさん。
私の脳裏に、小6の時にひかりに怒られた時のことが思い起こされる。あの時は確か太陽と一緒に調子に乗っちゃって……
あの時と同じくらい、ううん、それ以上に恐いです……




