113 vs. darkness②
「本当にチートっすね、若葉さんの魔法。しかし、それを言うなら彼もっすね。」
私達を上空からジッと見下ろす幼馴染を見て、立ち上がりながらフィミールさんがつぶやく。
「カーストランスポーション、カースブラスト……海斗の身体は大丈夫なのでしょうか。」
「あの、こんな時にあれなんですが、あのカース?ってつく魔法、なんなんですか?」
この世界で何度も見てきた魔法。カーストランスポーション、カースコフィン、カースサモン、カース・ヘル・ヒートプリズン……
どれもすごく強力な魔法だったのは覚えているけれど……
「カースと名のつく魔法……闇の禁術と呼ばれるものっす。」
禁術……
マーレが話を引き継ぐ。
「闇の禁術は、文字通り使ってはいけない魔法です。なぜなら、あまりにも強力かつ使用者にもリスクがあるからです。」
「カースボルテクス。」
頭上から黒い稲妻が迫るが、吸収魔法に触れて跡形もなく消え去る。同時に私の中に膨大な量の魔力が溜まる
「若葉も知っていると思いますが、闇の禁術は周囲の魔力を強制的に奪い取ります。自然の魔力も人間の魔力も関係なく。そして、その魔力と自分の闇の魔力を合わせて放たれるのです。」
だからさっきマーレとフィミールさんの魔力が小さくなったんだ。私の魔力は奪うことができなかったみたいだけど。
「それだけ大きな魔力、普通では考えられないようなことができます。
ただし、それだけ莫大な魔力を行使すれば身体にも大きな負担がかかります。寿命を削り、最悪の場合死に至ります。」
「そんな!!じゃあ海斗兄は……」
あんなに何発も闇の禁術を使ったら……
幼なじみの死が頭の中をよぎり、とてつもない不安に襲われる。
「若葉さん、心配しなくていいっすよ。いや、それはそれで問題なんっすけど。」
えっ、どういうこと?
だって、闇の禁術は身体に大きな負担がかかるって今……
「修行していた時に気づいたんっすが……どうも海斗さんは闇の禁術を身体への負担をかけずに使うことができるみたいなんっす。」
「「えっ!?」」
マーレと声がハモってしまう。
「おそらく莫大な量の闇の魔力のおかげなんだと思うんっすけど……」
「つまり、海斗は闇の禁術をいくらでも使うことができるということですか?」
フィミールさんが苦笑いをしながら頷く。
確かに身体に負担がかからなければ、いくらでも使うことができる。だって、魔力は周りからいくらでも取り込む……奪うことができるのだから。私みたいに。
確かにそれはチートだ。
私の魔法も大概だけど、海斗兄の魔法も負けてない。
命の危険はないようで安心。けれど、そんな海斗兄を止めることができるのだろうか……
ううん、弱気になってる場合じゃない。
そんな強力な魔法を、闇の破壊衝動に駆られるまま使ってるんだ。
もし誤って町や人を攻撃してしまったら……絶対止めなきゃダメだ!!
「私のフィールドの中では、闇の禁術の吸収は発動しないみたいです。フィールドを展開し続けるので、私から10メートル以上離れないでください。」
闇の禁術の恐ろしいところは、その威力はもちろんだけど、魔力を吸収されて戦闘不能になってしまうこと。
私が魔力の吸収を止め続ければ、勝機はあるはず!
2人は同時に頷くと、地上を蹴る。
私がいる分2人はスピードを出せない。その分中長距離の魔法で迎撃を試みる。
「封印剣」
フィミールさんの身体の周りに7本の剣が召喚され、それぞれ別の角度から海斗兄を狙う。
本来ならフィールド内で使う全ての魔法が私の吸収魔法の対象となってしまう。
なので、フィミールさんやマーレの魔法だけを対象から外すのだ。
とてつもない集中力が必要な魔法。でも、今の私ならできる!
対して海斗兄は7本の剣を目で捉えることのできないほどのスピードでかわす。けれど、剣は執拗に追い続ける。
すごい、徐々にこちら側……私のフィールドに追い立ててる。これなら!
「シャインブラスト!」
剣に気を取られる海斗兄の背後にマーレの光弾が回り込み、炸裂する。
「カースオーラ。」
しかし、幼なじみはドス黒いオーラを体に纏うことで、2人の魔法から身を守った。剣はオーラに阻まれ、跡形もなく消え去る。
「マジっすか。封印剣は魔法の影響を受けづらい魔法なんっすけど。」
そして、また距離をとられる。
パッと体に纏っていたオーラが消え去る。すごい防御力だけど、常に展開することはできないらしい。
「どうしますか?」
強い、強すぎる。スカイキャッスルで戦った時とは比べ物にならない強さ。
でも、海斗兄だって私のフィールドを破ることはできていない。どっちも周りの魔力を吸収できるから、魔力が底をつくことはない。
このままじゃ、永遠に勝負がつかないかも……
「カースブラスト。」
先程と同じ闇の炸裂魔法弾。
バンッ!!
今度は私が吸収する前に炸裂する。だいぶ手前であり、その威力は凄まじいが私達に届くことはない。
しかし、私達の視界を塞ぐには十分な魔法。
「しまった、海斗君を見失ったっす!」
「いや、あそこです!!」
もうあんなところに。
海斗兄は立ち入り禁止のフェンスをこえ、汚染水の入ったタンク群の上を飛んでいく。
そっか、闇の禁術を使えば周囲の魔力を吸収することができるから、禁止区域に入ることもできるんだ。




