110 友達は人形?
私が倒した宇宙服の人達は誰にも気づかれることなく……いや、放って置かれ気絶し続けていたので、あっさり地上へ戻ることができた。
帰りのトレーラーの中でもリースに色々な質問をしてみたけど、そのほとんどが機密事項に当たるようで教えてはもらえなかった。
ただ一つ分かったこと。
「ドールとは、ウォーデン国のエネルギー管理及び、プロジェクトFのために量産されたホムンクルスの総称です。」
後からマーレに教えてもらったのだが、ホムンクルスとは簡単に言えば人造人間のことだ。
人口が一気に減少し、働き手がいなくなった際に魔導師達がこぞって開発を進めた人造人間。しかし、倫理的な問題に加え、その作成の難しさから今ではどこの国も手を出さなくなったらしい。
そんな物が、これだけたくさん。
しかも、みんなリースの姿形をしているなんて……
そして、当然この疑問に突き当たる。
「若葉、お前が知っているリースは……人造人間なのか?」
分からない、そんなこと分かるはずがない……
私と一緒にいる時のリースは、間違いなく人間だった。暖かくて、頭が良くて、怒るとちょっと恐くて、でも優しくて……
ここにいるリースとは違う。でも、姿形は寸分も違わず同じ……
私は俯いて首を横に振る。
「若葉、大変言い辛いのですが……リースと2人きりで会うのはもうやめましょう。今までも彼女の存在は謎に包まれていましたが、今回知り得た情報でますますわからなくなってしまいました。
正直……危険です。」
「俺も同感だ。」
2人の言うことは分かる。けど……
「この件は、私じゃないと探れないと思う。」
「それはそうだが、お前を危険な目に会わせるわけにはいかない。それに、あいつは俺達との約束を破ってお前に魔法を教えていた。それだけでも、信用できない。」
「それは私が教えてって頼んだから……」
「それでもだ。」
海斗兄の言うことは最もだ。反論の余地がない。
でも……
「若葉……俺は太陽と約束したんだ。必ずお前を無事に連れ戻すって。だから……頼むよ。」
両腕をぐっと掴まれ、頭を下げられる。
悲痛な懇願……
「……分かった。ごめんなさい、約束破って……」
ポロポロと涙が溢れて止まらない。
この涙は何の涙?
約束を破って2人に心配をかけたから?
それとも、今までみたいにリースと会うことができないから?
分からないけど……止まらない。
「ただ、お願いが一つあるの。」
約束を破った私がおこがましいというのは十分わかってる。でも、これだけは……
「2人とも一緒にいていいから……もう一回だけリースと会わせてほしい。
ちゃんと私の口からお別れが言いたい……」
2人とも顔を見合わせ、静かに頷いた。
「そっか……」
「リース……ごめん。」
次の日の朝、私のことを迎えにきてくれたリースに対し、魔法を教わっていたことがバレてしまったことを伝えた。もちろん、立ち入り禁止区域で見たことは伏せながら。
ポツリポツリと話す私の言葉を聞いた後、彼女は隣に立つマーレと海斗兄に向き合った。
そして、深々と頭を下げる。
「ごめんなさい、約束を破ってしまって。」
「若葉のためだったんだろうし、無理に頼んだことも話には聞いてる。でも、約束だから……分かってくれ。」
「もちろんです。約束していたのに、隠れてこそこそ教えていた私が悪いんです。」
「そんなことない!悪いのは全部私!」と弁解するが、リースは首を横に振る。
「違うよ、わか。私が魔法を教えるって選択しなれけばこんなことにはならなかった。私達はずっと一緒にいれたの。だから、ごめんね。」
でも、それは…私が……
「でも……こんなことを言ったら怒られちゃうと思うけど、それでも私はわかに魔法を教えることができて良かった。
今のわかなら、自分だけじゃなく、きっと大切な人も守れるよ!だから、自信を持って!!」
そう言って笑うリースは寂しさを押し殺すのに一生懸命で、思わず泣きそうになってしまう。
けれど、それはダメだと、耐えるんだ若葉と心の声が響く。
リースは部屋から出ると、私達の方を向き直り、もう一度深々と頭を下げた。
「今まで私と一緒にいてくれて、そしてそれを許してくれてありがとうございました。あなた達が客人であることは変わりません。案内人としてできる限りのサポートはいたしますので、何かありましたら声をおかけください。
それでは。」
バタンと扉が閉まり、部屋の中を沈黙が包み込んだ。
リースには、数えきれないほどの恩をもらった。彼女がいなければ、この知らない国の中で1人毎日を過ごし、何もできないと自分を否定し続けただろう。
それなのに……私は何も返すことができなかった。
私はその場で、ジッと外へと続く扉を見つめることしかできなかった。




