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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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108/168

108 地下空間と宇宙服と友達?


建物の中には、地下へ続く階段が一つだけ。ショッピングモールの地下駐車場の階段に似ている。


どこまで続いているんだろう。


螺旋階段とは違い、中央から下を覗くことはできないようになっている。

これじゃあリースがどこまで降りていったのかも分からない。


「横には並べないな。俺が先頭を行くから、マーレは1番後ろを頼む。」


「分かりました。」


2人とも探知魔法を展開して、急な襲撃に備える。

私はというと、いざという時に2人を守れるよう吸収魔法をスタンバイする。発動すれば、私の周り半径10メートル圏内の魔法、魔力は吸収され、魔法そのものを使えなくする。



階段を慎重に降りていく。

階の表示はなく、あるのは一定間隔で壁に配置されている白色電球だけ。


降り続けること10分、急に目の前が開けた。


「これは……」


「すごい……」


その景色に3人とも呆気にとられる。


そこは、地下に広がる大空間であった。その広さは貴族の集会所、センターコロシアムなど比ではなく、形容し難い大きさだ。

巨大な柱が何本も乱立し、大地を……ウォーデン国を支えている。そして、たくさんのパイプ。どれもとても太く、まっすぐ地上へと伸びている。


私達が立つ階段の真下にはトンネルがあるようで、ひっきりなしにタンクローリーのような大型車両が行き来している。


ここから見てもたくさんの人達が働いているのが分かるけど、みんな同じ白いローブでフードを目深にかぶっているので、顔は全然分からない。


「小学生の時に校外学習で行った首都圏外郭放水路を思い出すな。」


私も同じことを思い出していた。

鹿玉県にある首都圏外郭放水路。その地下神殿が記憶の中の場所では1番似ている。広さは桁違いだけど。


とりあえず下まで降りてみることにした。

と、ここで私はあることに気付き、2人にバレないようにある魔法を行使する。


階段を降りるにつれて、間違いなく魔力が濃くなっている。リースの修行のおかげで魔力というものに敏感になっていた私は、2人が気付く前に周りの余分な魔力を吸収することができた。

これで身体に影響は出ないだろう。危険区域ほどじゃないけど、それでも地上に比べたらかなり濃い。


「さて、到着したけど、下から見ると改めてすごいな。」


本当に広大な空間だ。ここが外周部なのは分かるけど、反対側の外周部は全く見えないんだもん。


広すぎる場所ってなんだか怖い……

熱をだしてうなされている時に部屋が大きく感じることがあるけど、そんな感じ。


「見たところリースさんはいないようですが。」


私もずっと探しているのだが、リースらしき人はいない。というか、リースも白いローブを着ていたので、フードを被られてしまったら見分けがつかないのだ。


困ったなぁ……って、えっ!?


急に物陰に引き込まれる。驚いて海斗兄の方を見ると、口元で指を一本立て、その指で目の前の道路を指差す。


そのまま息を凝らすこと30秒、声が聞こえてきた。どうやら男の人みたいだ。


「しかしここでの仕事は本当に憂鬱だわ。こんな重たい防護服を着なきゃいけないし、暗いし、こいつら気味悪いし。」


目線の先に、白い宇宙服のようなものを着た人が2人。その後ろに白いローブを着た人達がおり、何かをズルズル引きずりながらついていく。


白ローブの人が引きずっているのは……ホース?

それも水やりで使うような細い物ではなく、人が1人入れそうなくらい太いホースだ。


ホースを地上に伸びるパイプにつなげると、大きな音を立てて何かが流れ込む。


流れ込んでいるものから魔力を感じる……立ち入り禁止区域の円柱状の建物とそっくりな魔力だ。


「そう文句言うなよ。俺達がこうやって働いているから、地上では豊かな暮らしが送れるんだろ?それに給料もいいんだしさ。」


「まあそうなんだけどさ。しかし本当にこいつら気持ちわりーよ。俺達がこんなローブ1枚でここにいたら、10分とたたないうちにあの世行きだぜ。」


そしてドンッと白いローブの人に蹴りを入れる男。1人が床に倒れ込むが、残りの2人がしっかりホースを支えているので作業に支障はなさそうだけど……


でも……ひどい。一生懸命働いている人に、あんなことするなんて……


倒れた拍子にフードが外れてしまったらしい。つけていた眼鏡が床に落ちてしまったようで、拾おうとした際チラリと顔が見える。



えっ!?あれ!?




「リース!!」



ギョッとしてこちらを見る宇宙服の男達。

そんなことはお構いなしに物陰から飛び出した私は、倒れているリースに駆け寄る。


「大丈夫?」


しかし反応はなく、眼鏡をかけ直すと何事もなかったようにすくっと立ち上がる。


「おまえ、誰……うっ…」


私が手をかざすと同時に、2人の体が浮き上がる。首を掻きむしり必死に声を出そうとしているが、それを許さない。


ものの数十秒で、動きは止まった。

気絶しているだけだけど。


ほとんど音を立てずに無力化したため、加勢が来る様子はない。良かった。


「おい、若葉、おまえ……」


ただ、海斗兄とマーレにはバレちゃったな……いつかはバレると思ってたけど、あまりにも急な出来事だったので、言い訳考えてないよ……


海斗兄の険しい表情に対し私があわあわしていると、マーレが間に入ってくれる。


「私も若葉には聞きたいことがたくさんありますが、今はやめておきましょう。それより、どうしますか?いずれは気付かれますよ。」


確かに、ここにいちゃまずいよね。

ふと横を見ると、先ほどまで横に立っていたリースがいない。振り返ると、極太のホースをタンクローリーのような車に巻き付けているところだった。


ものの数十秒でくくりつけた3人は、仲間?上司?主人?が地面に伸びているにも関わらず、全く意に返さず運転席に乗り込む。

私達のことも完全無視だ。


「あれに乗ろう!!」


エンジン音がし、今にも出発しそうなタンクローリーに飛び乗る。

助手席側には扉がなく、後部座席も2列あったので、余裕で乗り込むことができた。

続いてマーレ、最後に海斗兄が梯子を登り、車内に滑り込む。


ブルンブルン!


先ほどより大きなエンジン音が地下空間に響き渡ったあと、タンクローリーは動き始めた。スピードを上げ、宇宙服の男達からぐんぐん遠ざかる。


運転席、2列目、3列目にそれぞれフードを被った白いローブの人が座っているが、3列目の人の白いローブだけが黒く汚れており、リースだということは明らかだった。

私が隣に座ると、その横に海斗兄、2列目にマーレが腰を下ろす。


「海斗兄……怒ってる?」


「まあ、とりあえず言いたいことは部屋に帰ってからにするよ。今はそれどころじゃないしな。」


そう言って肩をすくめる。

なんか執行猶予をもらったみたい。はぁ、きっと怒られるんだろうなぁ。

でも仕方ないか、色々怒られることしちゃったわけだし……


リースに勝手に魔法を学んでたこと、宇宙服の人達の前に1人で飛び出したこと、トレーラーに乗り込んだこともかな……



どれも後悔はしてないけど、怒られたくもない……



トレーラーは少し行った所で転回する。その後向かった先は階段上からも見えたトンネル。

トンネル内はトレーラーの灯りしか見えないが、ひっきりなしに別のトレーラーとすれ違うので暗くは感じない。


やば、この揺れ眠くなる……って寝てる場合じゃない!!


「リース、大丈夫?蹴られた時、怪我してない?」


眠気を紛らわそうと、再度彼女に話しかけるも相変わらずの無反応。

なんでだろう……あまりにも私の知っているリースとは違いすぎる。

もしかして……


「ねえ、あなたは私の知ってるリースなの?」


するとクルリと上半身を私の方に向ける。顔は見えないけど、私を見てるのは分かる。


「はい、私はリースという名を与えられています。ただ、あなたとは初対面です。」


「どういう意味だ?」


海斗兄が割り込むけど、その言葉には全く反応しない。


驚きしかない。

見た目や声、名前はリースだけど、私の知るリースではないみたい。

双子……いや、双子なら名前が違うはずだし。


「私の知ってるリースじゃないなら、あなたは何者なの?」


「私はリース。ウォーデン国のエネルギー管理を任されております。また、プロジェクトFの重要機密でもあります。」


エネルギー管理?プロジェクトF?どちらも聞き覚えのない言葉だ。


「エネルギー管理とは、その名の通りです。このトレーラーで運んでいるのは汚染水。この汚染水には大量の魔力が含まれているので、様々な物を効率良く動かすことができます。

ただ、それだけ大量の魔力が含まれていると、一般の人では触れるのはおろか、近づくこともできません。そのため、私達がトレーラーで運び、パイプを使って地上へ供給するのです。」


なるほど、さっきの作業はそういうことだったのか。でも、そんな危険な作業を、なんでこの子達が?

その疑問にも、まるでカンペか説明書がそこにあるかのようにスラスラと答えてくれる。


「私達は生まれつき一般の人より魔力を体に溜め込むことができます。この力があれば、厳しい環境下でも作業をすることができるのです。」


能力も、私やリースと一緒みたいだ。

こんなそっくりさんが、私の友達のリースと関係ないわけがない。そう考えると心のざわつきはどんどん大きくなっていく。


「ちなみに、プロジェクトFとはなんですか?」


「秘匿情報及び悲鳴の対象要項のため教えることができません。」


マーレの言葉に対し、ほぼノータイムで返答する。同じ質問を私や海斗兄がしても、全く同じ答えを同じスピードで延々と繰り返すだけ。


そうなると余計知りたくなるのが人間だ。

海斗兄とマーレが心を読もうと試みたけれど、読み取ることはできなかった。


「こんな人、初めてです。心の中が真っ白です。何も考えていないのでしょうか……まるで人形のよう……」


人形……確かに。

この受け答え、私が見た虚ろな表情、人形と形容するのがとてもしっくりくる。



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