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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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107/168

107 友達の異変と青い鳥


「今頃何を話してるのかなぁ。」


海斗兄にもらった飲み物を口に含み、ぼぉっと観覧車を見上げる。

きっとあのゴンドラの中と外では、時間の流れが違うんだろうな。


どんな様子で戻ってくるか、正直心配でならない。

今日のデートだって、けしかけたのは私だ。だからこそ告白するという流れになったのであって……


何度も言うように海斗兄の恋を私は全面的に応援している。けど、今回の告白については分が悪い。



だって、マーレが好きなのはショーンさんだし。



そのことを知っていたのに……

フラれたら、間違いなく私のせいだ。



「大丈夫か?」


パッと顔を上げると、そこにはよく知っている男の子の顔。

その表情からは、告白の結果は読み取ることはできない。


「なんだよ、ジッと見て。俺の顔に何かついてるか?」


分かってるくせに。


そんな私の頭に手を置くと、ぐしぐしとちょっと強めに撫で、一言。



「ありがとな、若葉。」



その言葉で、なんとなく結果が分かってしまった。


海斗兄は吹っ切れたって顔をしてるけど……


私は思わず「ごめん」と言いかけ、それを人差し指で遮られる。


彼は、私に謝らせてはくれなかった。




「さて、それじゃあそろそろ帰るか。マーレも目一杯楽しんだだろ?」


海斗兄の後ろで小さくなっていたマーレがハッとし、いつもの優しい笑顔で答える。


「そ、そうですね。すごく楽しい時間でした。海斗も若葉も今日はありがとうございます。」


まだお昼も食べていない。回っていないアトラクションもいっぱいある。

でも、これ以上3人で……いや、海斗兄とマーレが一緒にいるのは苦しかった。


見ている私からしても。




そうしてベンチから立ちあがろうとしたその時、目線の先によく知る女の子の姿。たくさんの人達を間に挟んでだけど、それでも私が見間違えるはずがない。


「リース!!」


しかし、彼女は振り向かない。声が聞こえていないのだろう。


2人も彼女の存在に気づいたようで、首を傾げる。


「あれ、リースさん、外せない仕事があるって話じゃなかったでしたっけ?」


「うん、だから今日は会えないからちょうど良かったって話してたんだけど……」


まあ、もしかしたら遊園地で仕事なのかもしれないし。


でも、さっきの表情……

なんだか虚ろっていうか、心ここにあらずっていうか。



心がざわつく。



「私、ちょっと声かけてくる!」


「いや、仕事中なんだろ?やめとけよ。」


海斗兄が私を止めようとするが、制止を振り切り人混みをかき分けて前進する。

朝に比べて随分人が増えていたけど、リースが歩いていった方向は分かるし、まだ追いつけるはず。



観覧車の横を通り過ぎたところで、リースの後ろ姿が見えた。

その後、アトラクションに並ぶ列やパレードに遮られながらも、なんとか見失わずにリースの目的地であろう場所まで辿り着くことができた。


だけど、私の声が届く距離になる前に、彼女は扉の奥へと姿を消してしまった。


「おーい、若葉!お前危ないから1人で行動するなよ!」


息を切らしながら海斗兄が追いついてくる。次いでマーレ。


「あれ、リースさんは?」


「そこの扉に入っていっちゃった。」


遊園地の外周部分、私達以外は人っ子一人いない。鉄製の柵が取り囲む中、その手前には仮設トイレのような建物。扉は金属でできており、ドアのぶには鍵穴。


「見たところトイレにしか見えないけど……トイレならあんな頑丈そうな扉は必要ないよな。」


「それに鍵もね。」


扉をもう一度よく見ると、そこには青い鳥が描かれている。


「あれ、この青い鳥……」


どこかで見たような……あっ、思い出した!

リースと修行している立ち入り禁止場所の円柱状の建物に描かれていたものだ。



…あれ?でも、このマーク……元の世界でもついこの間……



「この青い鳥は、ウォーデン国のシンボルマークみたいですよ。ハイルが住んでいたあの建物にもついてましたし。」


なるほど。ウォーデン国のシンボルマークなら、元の世界で見るわけないよね。私の勘違いかな……


「しかし、扉の中に入っちまったなら、もう追いかけられないだろ。明日また会うんだろ?その時に聞いてみろよ。」


海斗兄は踵を返し、観覧車の方へ戻り始める。

海斗兄の言う通りなんだけど……どうしてもリースの先ほどの表情が頭から離れない。

そして、この扉の先にすごく重要な何かがある気がしてならないのだ。


最近の私の勘はよく当たる。だから、今回も……


「若葉?」


私は海斗兄とは反対側……扉の方へ歩き出す。

「いい加減にしろよ。」と呆れる声が後ろから飛んでくるけど、気にしない。


扉の前に到着する。近くで見ると結構大きい。私はもちろんのこと、多分太陽や海斗兄でも、屈まずに入ることができるくらい大きな扉だ。


ガシャガシャ。


うーん、やっぱり鍵がかかってるかぁ。

それになんだか魔力を感じる。無理やり開けられるのを防止する魔法かな?


でも今の私なら、開けられる。


『ごめんなさい。』と不法侵入について心の中で謝罪をした後、一つ目の魔法を発動し、扉にかけられた魔法を吸収する。

そして、吸収した魔力を使って、鍵を内側から爆破する。


ボンッ!と小さな音と振動が私にだけ伝わる。魔法を使えるのは秘密だからね。


ガチャリ。

今度はしっかり回るドアのぶ。ギギギと音を立てて開く扉。


「ねえ、開いてるよ。立ち入り禁止のマークもないし、ちょっと行ってみようよ。」


「おいおい、立ち入り禁止のマークがないからって、どこでも入っていいわけないだろ。さっきから若葉、おかしいぞ?」


グッと腕を掴まれ、立ち止まらされる。


「どうしたんですか?何か気になることでもあるのですか?」


マーレが心配そうな顔で聞いてくる。

私は正直に答えた。


「さっきのリースの顔、変だった。なんだかすごく気になるの。」


「いや、お前に見せてる顔が全てなわけないだろ。仕事中だから真剣な顔をしてたのかもしれないし。」


そうなんだけど、でも……


扉の奥へ進もうとする私と、連れ戻そうとする海斗兄で綱引き状態になる。

もちろん全力で引っ張られれば勝ち目はないんだけど、私があまりにも聞き分けがないから、無理やり連れ戻していいものか悩んでいるみたい。


でも、それも長くは続かない。

さすがにイライラしたのか、私の腕を握る手に力が入る。



「分かりました。」


「「えっ?」」


私と海斗兄は引っ張り合うのをやめ、後ろの姫様を見る。


「行ってみましょう。」


「いやどう考えても危ねーだろ。マーレまで何言ってんだよ。」


再度引く力が強くなり、私は2、3歩引きずられる。


「確かに危険かもしれませんが、若葉がここまで言うのです。何かあるのかもしれません。それに……」


一呼吸をおき、そのまま続ける。


「私もこの10日間、この国のあらゆるところを見てきましたが、脱出するための手がかりはまだ全く見つけられていません。

そろそろこのような場所にも足を踏み入れなければいけないとは思っていました。


2人が一緒にいてくれれば安心です。海斗、お願いします。」


おっとっと。

ちょっと海斗兄、急に離さないでよ。

とは言わなかった。せっかくマーレが加勢してくれて、旗色が良くなったのだ。ここは何も言わず待つのが吉だ。


しばらく考え、仕方ないなぁと両手を挙げる。


「ただし、危なくなったらすぐに逃げるからな。マーレ、頼むぞ。」


マーレは頷くと、海斗兄に気づかれないように私にウインクする。


やっぱり私のために……マーレ、ありがとう!



リース、待っててね。今行くよ!!




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