103 恋!?
リースのレッスンが始まって早1週間……つまり、私達が捕虜になってから9日が経過した。
魔法の感覚、そして何より自分の魔法の特性を知った私の成長は、自分で言うのもあれだけど凄まじいものであった。
ただ吸収と放出をすることについてはお手のもの。集中すれば自分の意思でその量もコントロールすることができる。
プラスして、魔法もある程度は使えるようになってきた。ただこれについては、また別の才能が必要であり、STORY TELLERに記憶を授けられていない私が幼馴染の3人に追いつくのは至難の技だ。
とは言え、魔力量という概念に囚われない私は、ただの火炎魔法でも上位魔法の火力を出すことができる。
なんせみんなの10倍……100倍の魔力をこめることができるわけだからね。
基本の魔法が全て必殺の魔法になるので、難しい魔法は覚える必要はないのかもしれない。
そんなにばんばん魔法を使ったら、吸収して貯めた魔力もなくなってしまうのではないかって?
心配ご無用。私は自然界の魔力も同じように吸収することができる。敵の魔法も吸収し、自然にある魔力も吸収すれば、魔力が切れることなど考えられないのだ。
ちなみに、リースの見立てでは、今私の中に貯蔵している魔力量は少なく見積もっても100万以上。
これは、この世界きっての魔力量をほこる太陽の500倍。
うん、俗に言うチートというやつですね。
「ただいまー!」
「「おかえりー!」」
まただ。
最近部屋に帰ると必ず感じるこの感覚。気恥ずかしいような、ソワソワするような。
マーレ……というより、海斗兄から感じるこれは……恋!?
最近部屋に帰ってくると必ず海斗兄とマーレがお茶をしている。何時に帰ってきているのかは知らないが、必ずなのである。
そしてその雰囲気がとっても良い感じなのだ。
恋愛というものに疎い私ですら感じられるのだから、きっとそういうのに敏感な里穂姉とかが見たら一発だろう。
うーん……やっぱり直接聞いてみよう!!
マーレがシャワーを浴びると席を立った後、私はどストレートに疑問をぶつけてみた。
「ねえ海斗兄、マーレのこと、好きでしょ?」
「ぶふっ!!」
その反応はお見通しだよ!
私はお盆で吹き出されたコーヒーを華麗にガードする。
「おまえ急に何を言うんだよ!!」
「だって、最近2人、すっごく良い雰囲気だし。それに海斗兄のマーレを見る顔、今までに見たことない顔してるもん。」
伊達に長い付き合いではないのだ。
そんな自信満々、興味津々な私を見て、「はぁーー」と大きなため息をつく幼馴染。
やっぱりね!!その反応は間違いない!!
「里穂には絶対言うなよ。」
「いやいや、里穂姉ならすぐに気付くと思うよ。」
マジかという表情で頭をかく。
それから、「いつから?」だとか、「どんなところが?」とか、とにかく気になったことをそのままずけずけと聞いていく。
きっと海斗兄、嫌だろうなぁと思いつつも、これまで15年近く好きの「す」の字もなかった幼馴染の恋愛事情への興味は、理性では止めることができなかったのだ。
「でもびっくりしたなぁ、前回この世界に来た時から好きだったんだ。というか、海斗兄は女の人とか好きにならないものだと思ってたよ。」
「なんか地味に失礼なやつだな。
そりゃさ、お前や里穂みたいなやつにずっと囲まれてりゃ、そんじょそこらの女子なんて、女子に見えないからな。」
「んん?どういう意味?」
「そういう自覚がないところが、太陽を困らせるんだと思うぞ。まぁ、お前らの恋愛事情など知らんけど。」
ますますハテナが頭の上に浮かぶ。
自覚がないって、何に自覚がないのだろうか……
まあいっか!!今は海斗兄のことに集中だ!!
「それで、どうするの?アタックしないの??」
複雑な表情の海斗兄に肩をぐいっと近づけるが、軽くいなされる。
「若葉、お前テンション高すぎ。
何もしねーよ、マーレはショーンが好きなんだし。」
えっ、海斗兄知ってたの!?
驚く私をよそに、残ったコーヒーをぐいっと飲み干し、テーブルの上のクッキーに手を伸ばす。
「だから俺は何もしねーの。分かったらこの話は終わり。俺も部屋に戻るわ。」
そう言って立ち上がる海斗兄の腕をギュッと掴む。まだなんかあんのか?と面倒臭そうな顔をする海斗兄に、
「それでいいの?」
と問いかける。
だって、好きな気持ちを抑えるって、すごく苦しいことだから。
私も太陽に好きな人がいたら、きっとすっごく落ち込む。でも、きっと諦められない。
叶わないかもしれないけど、それでも絶対諦めない。
だって、好きになっちゃったんだもん。
だから、海斗兄にも諦めてほしくなかった。
その気持ちを大切にしてほしかった。
だから……
先程までの浮ついた気持ちは一切消え、私は真剣に幼馴染を見つめていた。
海斗兄も、面倒臭そうだった表情から徐々に困った顔に変わっていく。
「でも、何度も言うけど、マーレには好きな人がいるんだぜ?」
「そんなの関係ないよ。ショーンさんも好きだけど、私は海斗兄の方がもっともっと好き。ショーンさんには悪いけど、何を言われようと私は海斗兄を応援するよ。」
沈黙。
時計の秒針がチッ、チッ、と時を刻む音だけが部屋に響き渡る。
ガチャリ
扉が開き、ガウン姿のマーレが現れる。髪の水気をタオルで拭き取る姿はとっても色っぽくて、女の私ですらドキドキしてしまう。
きっとマーレに恋愛感情を抱いている海斗兄は、もっとドキドキしてるだろう。
そんなこととはつゆ知らず、私達の方に顔を向ける姫様。
「どうしたんですか?」
小首を傾げる姿も魅力的。
海斗兄、どうするの??
彼は、マーレに聞こえないよう小さなため息をつき、私の頭をゴチンと一発。もちろん軽くだけど。
「あのさ、明後日ちょっと遊びにいかないか?」




