ショーウィンドウの女の子
リーズは先ほどショーウィンドウの前にいた女の子を連れて店に戻ってくる。
「素敵。」
女の子は店内を見渡す。
「貴女最近わたくしのお店を覗いているわね。」
「すみません。」
女の子は俯いて謝罪する。
「構わないわよ。」
「素敵なドレスがたくさんあるけど来店するのはお嬢様ばかりで。私なんかが入っていいかって思ってました。」
「わたくしのお店はどなたでも歓迎だわ。そうだわ、どれか好きな物着てみない?」
女の子の目には1着の水色のドレスが止まる。胸元にリボンの付いていて袖と裾には白いレースが使われている。
「でしたらこちらいいですか?」
「そちらがお気に召したのね。着てみましょう。」
リィズは女の子を連れて試着室に入る。
試着室から出てきたのはドレスに着替えた女の子だ。
「サリー!!」
リーズは呼び鈴でサリーを呼ぶ。
「はい、マダム。」
中から黄色いエプロンドレスのサリーが現れる。
「手伝ってくれる?」
「はい、マダム。」
リーズが女の子を椅子に座らせるとサリーが女の子の髪をとかし三つ編みを作る。
「さあ、」
リーズが三つ編みにピンクのリボンを結び白い帽子を被せる。
「これで貴女も立派な淑女ですよ。」
リーズは女の子を姿見の前に連れて行く。
「まあ、これが私?」
女の子は姿見に映る自分を見て感激している。
「この姿でお花を売りたいわ。」
「まあ、貴女花売り娘さん?」
明子が尋ねる。
「はい。」
女の子はエミルという17才の花売り娘だ。
「エミルさん、そのドレスは差しあげますわ。」
「宜しいのですか?」
「ええ、可愛い花売り娘さんが来てくだされば宣伝になりますわ。」
エミルは満面の笑みでありがとうございますとお礼を言うとお店を後にする。
「本当に宜しかったの?」
店内に残った明子が声をかける。
「ええ、宣伝になればまた新しいお客様もいらっしゃるわ。」
「いえ、そちらではなくて。リジィさんのお話よ。」
明子はリーズがリジィの専属デザイナーになるかならないかの話を持ち出す。
「勿論貴女の作るドレスはパリの上流階級の女性達の憧れよ。だけどあの娘見てたら思い出したのよ。鹿鳴館の舞踏会で初めてドレスを着た日の事を。」
明子は日本にいた頃は振り袖で過ごしていたが今の夫と出会った時にお付きの女性達にドレスの袖を初めて通してもらった。
「華やかなドレスだけでないわ。広間にシャンデリア、踊る西洋の貴族達。まるで絵本の世界に迷い混んだようでしたわ。わたくしは一番貴女のドレスを必要としてるのはパリの貴婦人や令嬢とは別の方だと思いますの。よろしければ日本でお店を初めてみませんか?わたくし夫に相談して協力をお願いしてみますわ。」
大正7年日比谷のブティック。
「それでわたくしは日本に来る決意をしましたの。勿論リジィ様の専属デザイナーになっていればパリの社交界に再び戻れたかもしれませんし、サリーにもいい縁談があったかもしれません。ですがわたくしは日本に来てわたくしを必要としてくれる日本の少女達と出会えました。」
リーズは日本に来た選択に後悔はないという。
「だから芳乃さんも何が一番大事か考えて選びなさい。」
芳乃はテーブルに置いてある鋏に気付く。
「マダム、あちらの鋏お借りしてもいいですか?」




