伯爵令嬢の申し出
リーズの過去の話です。
時を遡ること1915年のパリ。
街の一角にブティックがあった。貴婦人や令嬢御用達の店だ。彼女は2年前に夫を亡くし彼の遺産で自宅をブティックに改装した。店内で扱ってる物は舞踏会やパーティに着ていくような物ばかりだ。
「ごきげんよう、マダム。」
今日やって来たのは伯爵令嬢のリジィ。リーズの店で買ったピンクのコートを羽織ってやってくる。リジィは社交界デビューしたばかりの令嬢だ。リーズが特注した白いドレスでデビュタントボールに出席した。
「マダム、考えて下さいました?」
リジィはピンクのコートを脱ぎ白い丸襟のブラウスに赤いジャンパースカートのリジィが尋ねる。リジィはリーズにお願いしていたのだ。自分の専属のデザイナーにならないかと。
「給料は今の10倍出しますし、サリーちゃんの社交界デビューも約束しますわ。」
サリーというのはリーズの店で働く17才の少女だ。彼女はリーズの夫の屋敷でメイドとして働いていた。
カランカラン
「ごきげんよう、マダム。」
そこに来客がやって来た。
「ごきげんよう、明子様。」
彼女は日本人の貴婦人だ。1886年当時17才だった彼女は鹿鳴館の舞踏会でフランス人の海軍将校と出会い結婚。今は彼と子供とパリで暮らしている。フラワーアレンジメントが趣味でリーズのお店の花も彼女が生けてくれている。
「マダム、考えておいて下さいね。」
リジィは明子の姿を見るとピンクのコートを着て店を出ていく。
「あら、またあの娘いらっしゃったのね。」
明子はリジィが出ていくのを目で追う。
「専属のデザイナーになってほしいと頼まれているって言ってたわよね。」
「ええ。」
「お受けなさるおつもり?」
「ええ。この家を手放すのは寂しいけどわたくしのドレスをそこまで望んでくれるのは嬉しいしサリーにとっても悪い話ではないのよ。」
「まあ、お店なくなるのは寂しいけど貴女の決めた事なら致し方ないわね。」
リーズは頷く。
「あら?」
明子は外の方をふと見る。
「ねえ、マダムあの娘。」
リーズも外を見るとショーウィンドウに1人の女の子が立っているのが見える。彼女はリジィをはじめとするお店に来る女の子とは違い裸足で髪も乱れブラウスに汚れも見える。スカートは破けている。
「あら?!」
女の子はリーズと目をやると走り去っていく。
「ちょっと、マダム。どちらに行かれるの?」
リーズは店をで出て女の子が走り去った方向に走って行く。
「待って。」
リーズは女の子に追い付き腕を掴む。
「あの、ごめんなさい。勝手に覗いて。」 「構わないわ。良かったらわたくしのお店寄っていかない?」




