リーズからのプレゼント
「まあ、縁談話が?嬉しいですわね。」
「芳乃ちゃんはお受けするの?」
リーズと春子が尋ねる。
「いえ、わたくしは迷ってます。」
娘役になれないなら歌劇団にいる意味などない。それに結婚すれば挙式でウェディングドレスは着れる。だけどどうしてもひっかかる事があった。
「館川様はわたくしに言って下さいました。待ってるねと。」
それに少女歌劇団は未婚の女性だけで舞台を行うため結婚したら入団できないのだ。
「芳乃様、宜しければまた1週間後ここに来てくださる?わたくしが素敵なプレゼントを用意して待ってるわ。」
あれから1週間が経った。卒業公演を5日後に控えたある日稽古が終わると芳乃はリーズの店へと向かう。
「お待ちしていたわ。」
リーズは芳乃に席を勧める。
「こちらでお待ちになって。」
リーズがはけると同時にマヌカンのリリカが入れ替わるようにお茶を持ってやってくる。
先日春子がお土産に持ってきてくれたティカップだ。
「芳乃様、お待たせいた致しました。」
リーズはマヌカンのサリーと共にトルソーを持ってやってくる。
トルソーは2体。1体は黒い燕尾服、もう1体はリボンがたくさんついた純白のウェディングドレスだ。
「わたくしからのプレゼントは歌劇団の入団のお祝い、もしくは結婚祝いですわ。芳乃様の好きな方をどちらかお選びなさい。」
歌劇団に入団するなら燕尾服、結婚するならウェディングドレスだ。燕尾服を選べば歌劇団への入団。みづきとも一緒にいられるが娘役ではなく男役としてだ。ウェディングドレスを選べば結婚。このまま女でいられる。だが隣にいるのはみづきではない。
芳乃は燕尾服とウェディングドレスに交互に目をやる。今まで芳乃は迷ったら両方を選択していた。だけど今は両方は選べない。どちらかなのだ。
「芳乃様」
芳乃の隣にリリカが座る。
「もしどちらかを選んだ場合、片方を選べば良かったと後悔する時が来るでしょう。ですがこっちを選んで良かったと思える時だって来ますよ。」
リリカはロシア人で革命で国を終われ日本にやって来た。
「祖国には親友を残して来た事最初は後悔しました。私も一緒に残れば良かったと。だけど親友からパリに亡命したと便りが来たわ。それにもし日本に来なければマダムやサリーには出会えなかった。私は日本に来た選択は今は間違ってなかったと思うわ。」
「わたくしもそう思いますわ。」
今度はリーズが口を開く。
「わたくしも日本に来る時随分迷いましたのよ。だけどわたくしを後押ししてくださる日本人かいましたの。」




