芳乃の選択
「憧れのプリンスに再会できたのですね。」
「はい。」
芳乃はみづきの隣に立つために厳しいレッスンを1年間詰んできた。おかげで入団前の最終試験には首席になった。今月末に行われる卒業公演もヒロインに選ばれた。
「だったら宜しいじゃない。1年間努力した甲斐があったじゃない。」
「いえ、問題はそこではないのです。」
それは卒業公演に向けて稽古をしてた時の事だった。
「アン・ドゥ・トロワ アン・ドゥ・トロワ」
その日は舞踏会でヒロインが公爵様と出会う場面を稽古していた。芳乃は公爵様演じる主役の男役と組むとワルツのステップを踏む。彼女は次席の生徒だ。
男役の聖と腰から手を離しお稽古スカートをつまみ前方に見えるように広げる。
「はい、そこでターン」
片方の手だけ繋いだまま1回転すると身体を反りながら片足を上げる。
「きゃあ!!」
聖が支えきれず芳乃はそのまま転倒。
「はい、ストップ!!」
演出家が稽古をとめる。
「聖、しっかり支えてくれないと困るよ。」
演出家が聖を叱責する。
「すみませんでした。」
「じゃあもう一度頭から。」
演出家が再び稽古を始めよううとする。
「ちょっといいですか?」
見学に来ていたみづきが待ったをかける。
「芳乃ちゃん、ちょっといいかな?」
みづきは芳乃の手を引いて稽古場を出ていく。
「先生方!!」
ほどなくしてみづきが芳乃を連れて戻って来た。芳乃はみづきの傍らで泣いている。
「彼女、身長が160cmもありました。」
入学試験の時は147cmと合格者の中で一番低身長であったがそれが13cmも伸びてしまった。聖の157cmを越えていた。
その後芳乃は男役としての入団を勧められた。芳乃は娘役としての入団を懇願したが娘役が身長が高いと組める相手役が限られるからと言われ聞き入れてもらえなかった。
「お嬢様!!」
お染に声をかけられふと我に帰る。
「お嬢様、着きましたよ。」
稽古場からの帰宅途中だったのだ。目の前には自分の屋敷がある。
「お嬢様、お帰りなさいませ。」
屋敷の中に入るとメイド達が迎えてくれる。
「お嬢様、今日は嬉しいお客様が来てらっしゃいますよ。」
嬉しいお客様とは誰なのか。メイドに案内されリビングに向かう。
「旦那様、お嬢様を連れて参りました。」
リビングには父と母、それから見知らぬ男性が二人いた。1人は中年男性でもう1人は20才くらいの若い男性だ。
「芳乃、座りなさい。」
芳乃は空いてる席に座る。
「芳乃、こちら長岡財閥の会長さんとその息子さんだ。」
男性二人が会釈する。
「初めまして。ごきげんよう。」
芳乃も挨拶をする。
「芳乃さん、初めまして。こちらは息子の宗一郎です。」
宗一郎は今年大学を卒業して4月から父の会社で働く事になっている。
「いずれは私の会社を任せようと思っている。息子と結婚する気はないか?」
芳乃に舞い込んできたのは縁談話だった。




