異常出力
エルンストが魔石を見ながら言った。
「この魔石、出力はきちんと出るのか?」
「あ……」
私は固まった。
「確かめてません」
再現することに夢中で、そこまで考えていなかった。
ルーカスがすぐに立ち上がる。
「測ろう」
棚から出力計を取り出した。
箱型の装置で、前面にメモリと針がついている。
私は魔石を手に持ったまま、少し迷った。
もし。
出力がなかったら。
せっかく作った流れが、ただの形だけだったら。
胸が、ドクンと鳴る。
「フィーネ」
ルーカスが装置を開けた。
「入れて」
私はそっと魔石を中に置く。
ふたが閉まる。
私は祈るような気持ちで装置を見つめる。
ルーカスがスイッチを押した。
次の瞬間。
針が跳ね上がった。
一気に。
ぐん、と。
メモリの端まで。
「え!?」
ルーカスが思わず声を上げる。
「なんだこれ?」
針は最大のところで、小さく震えている。
アルドが首を傾げた。
「出力計、壊れてるんじゃないの?」
「待って」
ルーカスが慌てて棚から別の魔石を取る。
装置に入れる。
スイッチ。
針はゆっくり動き、通常の値で止まった。
皆で顔を見合わせる。
もう一度。
私の魔石を入れる。
スイッチ。
針が、また跳ね上がる。
最大。
「この魔石のサイズで、この出力は……」
エルンストは言葉を止めた。
珍しく、言葉を探すように。
針を見つめたまま、ほんのわずかに息を吸う。
「…異常だ」
エルンストは、針から目を逸らさない。
「呪文をかけた通常の魔石と比べて、三倍以上はある」
沈黙が落ちる。
誰も動かない。
針だけが、小さく震えている。
「……なんてもの作ったんだ」
アルドがぼそっと呟く。
少しだけ、声が震えている。
エルンストが顔を上げる。
「これは、外に出すのは一旦保留だ」
「え?」
思わず声が出た。
みんなの視線が私に集まる。
私は少し迷ってから言った。
「あの……自転車につけようかと」
「自転車?!」
アルドが即座に叫ぶ。
「君ねえ、それどころの話じゃないんだよ」
エルンストが手を上げてアルドを制した。
「落ち着け」
そして私を見る。
「フィーネ」
「このサイズの魔石で、出力が三倍以上ある。
もしこれを使えば、今の魔具はもっと小さくできる。
あるいは、今よりずっと強い魔具も作れる」
一瞬、間が空く。
「武器もだ」
私は少し戸惑う。
そこまで大げさな話なのだろうか、と思った。
エルンストは静かに続けた。
「今のところこれを作れるのは君だけだ。
その意味が、わかるか」
私は小さく頷いた。
「……はい」
エルンストが腕を組む。
「君の身が危険に晒される可能性がある。
だから軽々しく外に出すわけにはいかない」
私は少し俯いて答えた。
「わかりました」
そして、少し考えてから私は言った。
「でも、なんでこんなに出力が出たんでしょうか」
エルンストが魔石を見る。
「呪文で無理に制御していない。魔石の元の流れを、そのまま使っている。
その分、ロスが少ないのかもしれん」
私は小さく頷いた。
「なるほど」
そして顔を上げる。
「あと」
私は魔石を見る。
「もう一つ、確認したいことがあるんですけど」




