証明
「できました」
私が言うと、ルーカスが目を丸くした。
「できたって、まさか」
私は頷く。
「呪文の流れ、作れた」
エルンストが眉をひそめた。
「……どういう意味だ」
アルドは口の端を上げる。
「はあ?できた?」
本当かよ、とでも言うような表情。
「見せてみろ」
エルンストが腕を組み、じっとこちらを見て言った。
私は、はやる気持ちを抑えて、鞄から丁寧に魔石を取り出した。
アルドが顔をしかめる。
「うわ……なんだこれ。石、ほとんど残ってないじゃん」
ルーカスが覗き込む。
「すごい削ってるな。彫刻みたいだ」
私は台の上に魔石を置いた。
隣に、呪文をかけている魔石。
沈石粉を取る。
まず、呪文をかけている方に粉を落とす。
粉が、ゆっくり動く。
見慣れた流れが浮かび上がった。
何度も見てきた形。
穴が開くほど、見続けてきた流れ。
誰も何も言わない。
次に。
私は、削った魔石に沈石粉を落とした。
ルーカスが息を止める。
粉が、ゆっくり流れる。
削った面を避けるようにして、曲がる。
伸びる。
また曲がる。
形ができていく。
ルーカスが小さく言った。
「……待って、これ、本当に」
信じられない、と言うような顔をしている。
アルドがいつになく真剣な表情で顔を近づけて見ている。
やがて、粉の線が、呪文と同じ形を描いて——
止まった。
エルンストが目を細めて言う。
「同じだな」
アルドが顔を上げて、疑うように私を見る。
「何?これ。偶然?」
そのとき、私の鞄の中が見える位置にいたルーカスが、目を見開いてこちらを見た。
「フィーネ、これ、もう一つあるんだけど…もしかして…」
私は頷く。
「うん。もう一つ、作ってきた」
彼が魔石を取り出した。
「…嘘だろ?」
アルドはまだ眉を寄せて言った。
いつもの軽さは、ない。
エルンストがこちらを見て低く言う。
「再現、できるのか」
私は頷いた。
「はい」
ノミを鞄から取り出して、
近くにあった、呪文のかかっていない魔石を手にとる。
「魔石には出口になる面があります。そこだけ、他より少し割れやすいんです」
沈石粉を振って流れを確認してから、
実際にノミを魔石に軽くあてていく。
もう、数えきれないほどやった作業。
手の奥に、わずかな違いが伝わる。
——ここ。
カチッ。
出口になる面が表に出てくる。
粉の線が、そこに流れた。
「出口さえ、呪文の出口と同じ位置に作れれば、あとはちょっとずつ削っていくだけです」
入り口から流れを確認していって、違うところを少しずつ削っていく。
昨夜より、手が迷わない。
削ると、どうなるか。石の流れがわかる気がする。
呪文の流れを途中まで再現して、私は手を止めた。
沈黙が落ちた。
アルドが、首を振った。
「……そんなのできるはずない」
声が掠れている。
「だが」
エルンストが言った。
「現に、できてしまっている」




