表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はじまりの自転車 〜魔法をもたない少女の発明と研究の記録〜  作者: 甘くないオクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/107

再現

 机の上には、削りかけの魔石がいくつも転がっていた。


 出口が見つからずにやめたもの。

 流れがうまく変わらずにやめたもの。

 沈石粉で灰色になった石が並んでいる。


 そんな中で私は、手元の一つを見ていた。


 沈石粉の線が、石の中を曲がりながら進む。


 そして——


 呪文と同じ形を描いていた。


「……できた」


 声が、かすかに漏れた。


 もう一度、線を見る。


 やはり——

 呪文と同じ形だった。


 胸が、静かに熱くなる。

 指先が、少し震えていた。


「見せに行かなきゃ」


 エルンストに。

 ルーカスに。

 アルドに。


 そう思って外を見ると、空が白んでいた。


「……あ」


 こんな時間だ。


 倉庫には、きっと誰もいない。


 私は机の上の魔石を見下ろす。


「もう一個、作ってみよう」


 新しい魔石を机の上に置いた。


 まず、出口を探す。


 呪文の流れで、出口になっているあたりを、軽く叩いていく。


 カチッ。


 カチッ。


 石ごとに、出口になる面は違う。


 叩いたとき、他の場所よりもわずかに軽い手応えがある。


 そこを、少し削る。


 出口が開いた。


 もちろん、同じ場所に出口を作れない石もある。


 でも、出口さえできれば——


 次は、流れを見る。


 流れは、おそらく石の内部構造に従って進む。

 そして、できるだけ短い道で出口へ向かおうとする癖がある。


 入り口に一番近いところから、沈石粉の線を見ていく。

 

 呪文の流れと異なっている場所を、ほんの少し削る。

 思った通りには曲がらない。

 だから、呪文の形に近づくまで削っていく。


 少しずつ。

 何度も。

 呪文の向きに合うまで。

 

 沈石粉の線が、ゆっくり形を変えていく。


 曲がり、寄り、また伸びる。


 そして。


 呪文と同じ形になった。


「……できた」


 二つ目だった。


 私は顔を上げる。


 太陽は、もう高く上がっていた。


「……こんな時間」


 今度こそ、行かなきゃ。


 外に出て、自転車にまたがる。


 空は飛べない。


 でも、自転車なら、スピードを出して進める。

 

 頬にあたる風が気持ちいい。


 転がり始めれば、自分で進む。

 歩くより、ずっと速い。

 

 私は倉庫の扉を開いた。


「今日は遅かったな、フィーネ」


 ルーカスの声だった。


 エルンストもこちらを見る。

 アルドも手を止めた。


「できました……」


 私が言うと、エルンストは眉をわずかに上げた。


「何を、持ってきた?」


 静かな声だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ