再現
机の上には、削りかけの魔石がいくつも転がっていた。
出口が見つからずにやめたもの。
流れがうまく変わらずにやめたもの。
沈石粉で灰色になった石が並んでいる。
そんな中で私は、手元の一つを見ていた。
沈石粉の線が、石の中を曲がりながら進む。
そして——
呪文と同じ形を描いていた。
「……できた」
声が、かすかに漏れた。
もう一度、線を見る。
やはり——
呪文と同じ形だった。
胸が、静かに熱くなる。
指先が、少し震えていた。
「見せに行かなきゃ」
エルンストに。
ルーカスに。
アルドに。
そう思って外を見ると、空が白んでいた。
「……あ」
こんな時間だ。
倉庫には、きっと誰もいない。
私は机の上の魔石を見下ろす。
「もう一個、作ってみよう」
新しい魔石を机の上に置いた。
まず、出口を探す。
呪文の流れで、出口になっているあたりを、軽く叩いていく。
カチッ。
カチッ。
石ごとに、出口になる面は違う。
叩いたとき、他の場所よりもわずかに軽い手応えがある。
そこを、少し削る。
出口が開いた。
もちろん、同じ場所に出口を作れない石もある。
でも、出口さえできれば——
次は、流れを見る。
流れは、おそらく石の内部構造に従って進む。
そして、できるだけ短い道で出口へ向かおうとする癖がある。
入り口に一番近いところから、沈石粉の線を見ていく。
呪文の流れと異なっている場所を、ほんの少し削る。
思った通りには曲がらない。
だから、呪文の形に近づくまで削っていく。
少しずつ。
何度も。
呪文の向きに合うまで。
沈石粉の線が、ゆっくり形を変えていく。
曲がり、寄り、また伸びる。
そして。
呪文と同じ形になった。
「……できた」
二つ目だった。
私は顔を上げる。
太陽は、もう高く上がっていた。
「……こんな時間」
今度こそ、行かなきゃ。
外に出て、自転車にまたがる。
空は飛べない。
でも、自転車なら、スピードを出して進める。
頬にあたる風が気持ちいい。
転がり始めれば、自分で進む。
歩くより、ずっと速い。
私は倉庫の扉を開いた。
「今日は遅かったな、フィーネ」
ルーカスの声だった。
エルンストもこちらを見る。
アルドも手を止めた。
「できました……」
私が言うと、エルンストは眉をわずかに上げた。
「何を、持ってきた?」
静かな声だった。




