ぶっきらぼうな一台
「デートだよ」
ルーカスが、あっさり言った。
「はああ?!」
レオンの声が一段大きくなる。
「……付き合ってんのか?」
鋭い視線が向けられる。
私は首を振った。
「いいえ。仕事を手伝ってくれたお礼に……」
言いながら、少し迷う。
結局、食事は割り勘だったし、行き先も全部ルーカスが決めてくれた。
「……お礼に、なってるのかな」
小さく呟く。
「なってるよ」
ルーカスが即答する。
それから、少しだけ間を置いて——
「……よかったら、もう一回、デートしよ」
「だめだ!」
即座にレオンが遮る。
「え?」
思わず声が出る。
レオンは一瞬こちらを見てから、ルーカスを睨む。
「ルーカス、てめえ——ふざけんなよ」
「ふざけてないけど?」
被せるように、ルーカスが返す。
視線がぶつかる。
短い沈黙。
レオンが舌打ちする。
「……今からどこ行くんだよ」
ルーカスは顎に手を当てる。
「この後は特に決めてない。中央の市場を少し回るくらいかな」
レオンがまた私の方をちらりと見て、視線を逸らしながら言う。
「……王都なら、俺が案内してやるよ」
思わず驚く。
——あれ。
予想と違った。
もっと突っかかってくると思っていた。
「知り合いが王都で迷子になるなんて迷惑だからな」
レオンが付け加えるように言った。
私は思わず後ろの自転車に目をやる。
「でも、自転車で来てるから」
「自転車?」
レオンが眉をひそめる。
「最近噂になってるやつか」
後ろの友人たちが反応する。
「それそれ、見たことないんだよな!」
「見せてくれよ!」
「乗りたい!」
私は少し迷ってから、自転車を引いてくる。
「……どうぞ。試してみます?」
「まじで!?」
友人の一人が嬉しそうにまたがる。
「うわ、これどうやってバランス取るんだ?」
「足離すの怖え!」
わいわい騒ぎながら、ぎこちなく漕ぎ出す。
少しふらついて——でも進む。
「おお!動いた!」
「すげえ!!」
歓声が上がる。
その様子が面白くて、思わず笑ってしまう。
「あ、笑った」
「かわいー」
「ずるい俺も見たかった!」
険しい顔をしたレオンがずかずかとやってきて、私と友人たちの間に割り込むように立つ。
「お前ら、馴れ馴れしいんだよ」
「えー、別にいいじゃんかー」
友人たちが不満そうにしながらも引く。
「レオンも乗ってみる?」
友人の一人が声をかける。
「乗らねえ」
即答だった。
「え〜!なんで!」
「魔法使いが自転車なんか乗るか」
そっぽを向いたまま言う。
「……作ったの、フィーネだよ」
ルーカスが、さらっと言った。
ぴたりと、レオンが動きを止める。
「……は?」
レオンがゆっくりとこちらを見る。
「お前が?」
「……はい」
頷く。
「え、君が作ったの?!」
「すげえ!!」
友人たちが騒ぐ。
レオンは黙って自転車を見ている。
そして、もう一度、こちらを見る。
「……いくらだ」
不意に、レオンが言う。
「え?」
「値段」
私は値段を答えた。
レオンは少し黙る。
それから。
「……一台、買う」
ぶっきらぼうに、そう言った。
思わず、レオンの顔を見る。
そっぽを向いたまま、耳が少し赤い。
「店、どこだ」
まいどあり!
祝100話




