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綺羅五芒星  作者: 床擦れ


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軫之章「陵光土埃に起ち、人間に憔徊を始む」 二話

 直後ちょくごぐうあたまかれた。くびからうえはいになり、どうちた。

「これくらいなら、できるか」

 陵光りょうこうつぶやいた。おのれつかんだ部分ぶぶんが、はいとなったのである。せいよわまったとはいえ、まだ端下はしたかい相手あいてならば灰燼かいじんにはできるらしい。

 これをればげるか、とおもった。ぐうむしいかった。

 むれれとなって陵光りょうこうねらってくる。左右さゆうからなしながら、陵光りょうこうまわりをたしかめた。

──やってもいが、できるか

 陵光りょうこう不安ふあんかかえながらも、おのれためしにかった。

 左腕ひだりうでちからめ、せいさやのようにする。

「よし」

 陵光りょうこうせいさやいだ。ぐう二匹にひき両断りょうだんされた。

 には赤熱せきねつしたけんる。ちるまえっていた雌雄剣しゆうけんくらべれば弱々よわよわしいが、いまなら十分じゅうぶんだった。

 れればぬとは、ぐうも解っているだろうか。すこ距離きょりりながら、陵光りょうこうかこんでいる。ろくる。

 背後はいごから咆声ぼうせいである。すぐにった。すきたかさら二匹にひきかえけんむくろとした。

い、ぬか」

 陵光りょうこう吶喊とっかんげれば三匹さんひきかれてる。

 うえり、よこかわしてからはらい、もぐみにぐうを、地面じめんごとした。いきおいのあまり、くろ路装ろそうまでつらぬき、まわりからはきた。

 もうきばかれない。さったけん精気せいきもどしたとき陵光りょうこうおもったことは

──やはり鈍っている

という一点いってんである。ちるまえにはおなじように、もっとちからいて、ばいかずれた。九匹きゅうひきころしたとはいえ、たかが九匹きゅうひきというのが実感じっかんである。

 ねつめた陵光りょうこうは、向後こうごのやりかたかんがえようとした。いっそここをはなれたほうが、おのれためになるかもしれない。どこにかうのがぜんなのか。やはり土地とちわからなければ、なにめられないだろうか。

 気落きおちもかくづらいほどおおきい。棒立ぼうだちして遠望えんぼうをしていると、うしろからおんなこえこえた。

 けるようなこえだったが、直後ちょくご悲鳴ひめいわった。

 陵光りょうこうり向いた。さっきのふくろやらみみかざりやらをいていたおんなだった。よこには官服かんふくらしきものているおとこ一人ひとりいてきている。

なかへ」

 陵光りょうこうおんなに、うしろをかせた。ぐうしかばね苦手にがてだったのだろうとは、想像そうぞうところであった。

 いてきたおとこも、陵光りょうこうわんとしていることわかったのか、おんなかたささえるように超市チャオシなかれてった。

 ときって、いてきたらしい。まわりのこえしずかになってきて、やりりができるようになった。

 言葉ことばつうじない。だがおんなから官服かんぷくおとこはなけて、ちいさないたさせていた。

 よくみがかれた玻璃はりのようである。そこになにかのえがかれていた。ゆびでなぞると、その縦横じゅうおううごいていく。

「これは?」

 陵光りょうこうこえ反応はんのうして、おとこなにかをった。

我想(wǒ xiǎng)大概(dàgài)就是(jiùshì)这个吧(zhège ba)──」

 おとこらずの陵光りょうこうに、かなり親身しんみであった。おとこは、陵光りょうこうかってせながら、玻璃はりいたしかりとせてくる。

 せん多方たほうかれ、おのれところにはひろ空間くうかんえんたれていた。こうしてると、陵光りょうこうまっていたあたりがかわらしいことも、なんとなくわかった。

 おとこゆびで、すこあたりもれるようにしている。だが陵光りょうこうにはそれが、邪魔じゃまでもある。

 うごきをめさせて、おおきなえんつくった。

 おとこゆびで、えんおのれしめえんおおきくするように、うごかした。陵光りょうこうちがう、という仕草しぐさをした。

 おとこわかったらしい。けばおんなも、かお近付ちかづけて様子ようすうかがっていた。

 まわりにひとあつままっているらしいが、陵光りょうこう気配きくばりはできない。

 もっとか、とおとこしめしている。もっとだ、と陵光りょうこううなずいた。

 次第しだい右下みぎしたからうすいろあらわれ、ひだり緑青ろくしょうくなった。それがなにあらしているのかは、なんとなくではあるが判別はんべつく。

──やまみずではないか

 てんにも一応いちおうるものだから、けたがるのも納得なっとくく。どちらがやまかまではわからない。

 陵光りょうこう玻璃はりかさないように、うすいろがわした。

那边(nà biān)是海(shì hǎi)你想(nǐ xiǎng)去那里(qù nàlǐ)(ma)?」

 おとこ言葉ことばに、陵光りょうこうかえ文句もんく戸惑とまどっていると、なみつくられた。もしかすればみずではないか、と想像そうぞうするのに時間じかんからなかった。

 だとすれば、いまよわっている陵光りょうこうには、あまよろしくないである。かみである陵光りょうこうには、水辺みずべなんがある。いまにぐうかいたたかったのだから、おなじような水怪すいかいてこないともかぎらない。しかもあらわされたみずも、だいぶひろえた。

──ぎゃく方角ほうがくくのがさそうか

 陵光りょうこうはそうかんがえた。みぎみずなら、そうでない場所ばしょりくである。りくくのなら、流水りゅうすいあしられないかぎりはなんとかなる。

 陵光りょうこうおとこのやったように、勝手かって玻璃はりいたあやつはじめた。おのれからひだりへとけるみち辿たどっていく。

 すこうえかい、ひだりへと何度なんどうごかすと、山中さんちゅうばかりをとおるとはいえ、いずれはおおきなみやこけそうでもある。そこまでわかれば、ともちたみな何処どこるのかもさぐってみなければならない。

 だがいまおのれで、その意図いとつたえられるだけの言語げんご使つかえるだろうか。

 まよった陵光りょうこうはなして、言葉ことばすくなく礼儀れいぎしめし、ろうとめた。ここにとどまっていてもかぎりがあるという、見切みきりでもある。

 ぐうしかばねは、おのれちりにしてからった。おんな反応はんのうをからすればすのはいけない、という判断はんだんであった。こすごとしゅうこえげたが、あまりにせず、手早てばやことえた。

 いくらかあるいてみれば、このはだいぶおおきい。幾条いくすじみちはしり、四輪車よんりんしゃ数多かずおおけている。そんなに高貴こうきおおいのかとも、陵光りょうこうおもった。おおすぎて、きもえてもいた。

 左右さゆうには何丈なんじょうわからない楼閣ろうかくつ。うえからけたらいなどと、てん大乱たいらんへのれがけていないせいでおもったりもした。

 あるけばあるくほど、おのれ所在しょざいわかからない。すこしずつ理解りかいしていくしかない。

 そんなこんなで、十里じゅうりったか。

 陵光りょうこうまえには紫微しびのような建物たてものそびえた。とはいっても、紫微しびよりはちいさい。左右さゆうにはいくつものけつ整列せいれつして、おくまったあたりにはやまるのだ。

 陵光りょうこうも、ほかになってくる頃合ころあいである。どうにもおのれけているものは、このあたりでは異様いようらしいとおぼえた。

 左右さゆうる。だれない。すこ安堵あんどした。

 うしろには、さきから四輪車よんりんしゃ何台なんだいけている。うなるようなおとだが、あまり不快ふかいではいか。

 それでも、あまりにつよおとはつするものがれば、それは不快ふかいだった。いまも、ちかくにている。

──どうにも、五月蠅うるさ

 陵光りょうこうおとほういた。悍馬かんばのようなうごきの四輪車よんりんしゃがある。こちらにんできている。

 すぐさまけんった。かまえていると、やはり異常いじょううごきだとわかった。

 陵光りょうこうにも矜持きょうじる。ほかがいがありそうなら、容赦ようしゃもできない。

 ねらいをさだ一閃いっせんたてった。いきいのまま、うしろろへんでいく。った途端とたんぜもしたが、陵光りょうこうにはその程度ていどねつなら、問題もんだいにならなかった。

 まわりがけている。うえから、さきぐうのようなかいが、んでていた。

おおいな」

 おもわずった。さきはなした者共ものども態度たいどで、このような存在そんざいれていないとはれた。ならば何故なぜ、このように目立めだっているのか。

 ぐうりつつ、うえあおいだ。なに異常いじょうい。

 したもどすとぐうほかにも、黒黄くろきえんれている。えんからだぐう半分はんぶんいが、五匹ごひきばかりがかたまっていた。

 ぐうめてきた。陵光りょうこうさきおなじだとおもって、あたまからった。そのうしろから、えんかたまりおそってくる。陵光りょうこう手足てあしおさえようとしてくる。それを陵光りょうこうは、びることでいた。

 二匹にひきえんげていく。陵光りょうこうがすまいとおもったが

──消耗しょうもうはできない

かんがえて、うのをめた。

 陵光りょうこうなかで、いきいた。多分たぶんこれが、ずっとつづくのである。まわりにだれないことだけたしかかめて、まぶたじた。

 いきおおきくう。陵光りょうこうまわりにひろがったずべて、はいへとおさまっていった。

 精気せいき少々しょうしょうもどせたか。くなって、陵光りょうこうひらいたしたった。

 足元あしもとむくろちている。どうやらった四輪車よんりんしゃっていたものらしい。そればかりは陵光りょうこうも、どうにもならなかった。

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