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綺羅五芒星  作者: 床擦れ


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序「天界當に大顛し、五神は皆墜天す」 四話

 孟章もうしょうは、おのれひとつで天市垣てんしえんんでいた。いまは市楼しろうばれる楼閣ろうかくうえで、天市垣てんしえん城街じょうがい一体いったいどうなっているのか、見渡みわたしているところである。

 外縁がいえんにある居住区きょじゅうくのうち、そう南海なんかいすでしずめた。しかし、たかところから俯瞰ふかんをしてみると、あちこちから黒煙こくえんのぼっている。

 このけむり範囲はんいひろさが、いま天界てんかい様子ようす端的たんてきあらわしているとおもえた。

 孟章もうしょうがここにたにのは、理由りゆうがある。ちちから、おまえもろ、とかれた簡牘かんとくとどいたからだ。

 二十八にじゅうはち宿しゅくの、さらにそと三垣さんえんかられば「化外けがい」とひょうされる土地とちで、孟章もうしょう普段ふだんごしている。

 理由りゆう単純たんじゅんである。孟章もうしょう過去かこに、罪過ざいかこしたのだ。化外けがい土地とちながされたのは、孟章自身もうしょうじしんがまさに、化外けがいぶに相応ふさわしいと、裁決さいけつされたのにほかならない。


 孟章もうしょうりゅう一族いちぞくである。

 ちち龍王りゅうおうであるし、はは龍女りゅうじょである。

 天界てんかいいて存在そんざいおおきなりゅうなかで、孟章もうしょう一柱ひとはしらだけ、このような放逐ほうちくった。

 まわりのつめたい。りゅうという存在そんざい名門めいもんとして認知にんちされているだけに、よくも一族いちぞくけがしてくれたな、と散々さんざん罵倒ばとうされた。

 孟章もうしょう当初とうしょおのれりかかった罵詈ばり数々かずかずを、理不尽りふじんだとおもっていた。

 いまおもえば当然とうぜんではないか、とはんじざるをない。ちち一番いちばん怒髪どはつかんいて、孟章もうしょうてたのも、父子ふしじょうるからだ。

 それでも孟章もうしょうは、てん仕来しきたりについて、堪忍かんにんしきれないことがあった。

 それは過去かこばつしたものを、その何食なにくわぬかお使役しえきすることである。

 たしかに天界てんかいでは、まったかみが、まったくらいで、まった役目やくめたしている。

 天帝てんていが、御座おわしている。そのもとに、五行ごぎょう季節きせつつかさど五帝ごてい御座おわし、天帝てんてい五帝ごてい以外いがいかみまわりで、てん均衡きんこうくずそうとするものをはらい、あるいはてん運行次第うんこうしだい確認かくにんして、吉凶きちきょう両方りょうほう物事ものごとに、未然みぜん対処たいしょほどこす。

 その努力どりょくもとてんやすんじられているのだ、ということはわかる。

 だが過程かていのなかで、放逐ほうちくするとわたしたものにすら、てんためはたらけというめいくだすことに、孟章もうしょう不信ふしんっている。

 あまりに勝手かってではないか。

 孟章もうしょうがそうおもうのは、てん仕来しきたりをうらんでいるからというよりも、おのれなかかくされた孤独こどくとはちがう、隔絶かくぜつ隔世かくせいかんるもののためである。

 孟章もうしょうひとりでごすうち、そういう自分じぶんおさなさについても、はっきりと理解りかいするようになった。

 だが、おのれおさないと分かったところで、この鬱憤うっぷん一度いちどれやかにはならない。こうしてちち軍旅ぐんりょとうじずに、単独たんどく天市垣てんしえんんだのは、孟章もうしょうおかした多少たしょう意趣返いしゅがえしであった。


 孟章もうしょううでんだ。義憤ぎふんとは、このことである。

 ひとりでごすようになってから、孟章もうしょうほかかみと、ほとんどかおわせてない。数多あまた神々かみがみがいるなかで、いがあるのは五神ごしん面々めんめんと、何故なぜかたびたびかおうかがいにる、姫軒轅きけんえんくらいなものである。天市垣てんしえんかみ仙人せんにんたぐいとは、いなぞい。

 それでも孟章もうしょうは、天市垣てんしえんものどものかお勝手かって想像そうぞうし、まもらねばならないと決意けついした。

 おのれができること、かれらのもとめているもの。その区別くべつかないほど、孟章もうしょうおさなわけではい。

 市楼しろう楼閣ろうかく、その頂上ちょうじょう欄干らんかんてかけておいたおのった。

 孟章もうしょうりた。あしき、震動しんどうこった。

 目前もくぜん端下はしたかいがいる。孟章もうしょうおのき、かいくびねた。悲鳴ひめいげさせるひまあたえない。

 孟章もうしょうおのれ膂力りょりょくと、盈溢えいいつした気迫きはくとをもって、付近ふきん圧倒あっとうはじめた。ばすがごとく、かいころつくくした。

 天市垣てんしえん神仙しんせんまうところである。いおり其処そこかしこにある。孟章もうしょうはまた、らした。

 ひとつのいおりに、かいむらがっていた。

 かいどもの頭部とうぶ個々ここ形状けいじょうくし、遠目とおめればなみようにうねっている。その混雑こんざつなかでもたたきき、まどはずそうとして、藻掻もがかせているのがわかった。

 やはり、こんどのかい何時いつもの悪徳あくとくくらべて卑賤ひせんきわまりない。孟章もうしょうするどくして、そのいおり方向ほうこうした。

 かい背後はいご辿たどいた瞬間しゅんかん孟章もうしょうおの一閃いっせんよこはらった。数十すうじゅうが、肉塊にくかいとなった。

 このかい金切かなきこえく。なにかがこわれる直前ちょくぜんすようなおとである。耳障みみざわりで不快ふかいでしかない。姿すがた羽毛うもうしょうじぬかえりかけのとりひなひとあたませたような風体ふうていで、なにかしん一本いちほんはいったような印象いんしょうというものは、かんじることがい。

 じょうりかかるなら、本当ほんとうはこれほど卑賤ひせんで、おのれ得物えものけがしたくない。

 それでも、孟章もうしょう大群たいぐん盡滅じんめつさせねばならない。

 いおりなかからこえきここえる。

 孟章もうしょうかくおのれおのまわした。

 いちどに五匹ごひきった。いつのにか孟章もうしょうは、かいから血潮ちしおによって、おのれからだ鬚髪しゅはつ赤黒あかぐろげていた。

 左目ひだりめはいった。なか瘴気しょうきつよい。しばらひらけなくなった。

 二百にひゃく三百さんひゃくせて、ようやっといえ間口まぐちはじめた。

 あと、もうすこしの辛抱しんぼうだ。孟章もうしょうこころなかで、いおりなかこもっているだれかにかい、けた。

 屋根やねうえからかいおどらせ、かってた。

 孟章もうしょうはその頭頂とうちょうから股下またしたへ、唐竹割からたけわりにった。

 しばらくのあいだ躍動やくどうした孟章もうしょうは、まわりのかいことごとしかばねとなったとたしかめると、いおり戸口とぐちをかけた。

 不自然ふしぜんにずれて建付たてつけのわるを、うでちからめて無理矢理むりやりけた。孟章もうしょう膂力りょりょくによって、はへしゃげるおとてながらがり、いおりなかかってひかりんだ。

 なかには大小だいしょう十人じゅうにんらずの仙人せんにんっていた。ほかかばうようにっているものもいれば、かたふるわせそとけたがらないものもいる。

 仙人せんにんたちは、孟章もうしょう姿すがたみとめたときも、いぶかしむ様子ようすくずさなかった。

 つよそうな仙人せんにん一人ひとりが、孟章もうしょう気配けはい清浄せいじょうであることをかんったのか、すすめてきた。

「おぬしはもしや、りゅうか」

 孟章もうしょうすこしばかり言葉ことばまりながらも、まあそうだ、とった。

 言葉ことばをかけてきた仙人せんにんは、たよりになるものたとおもったのか、孟章もうしょうふかこうべげた。

 孟章もうしょう仙人せんにんかたささえ、げられたこうべげさせた。

 仙人せんにんたちの先導せんどうを、孟章もうしょうけた。

 ひとまずはいおりよりも安全あんぜんであろうというところにまで誘導ゆうどうした。こしかしてしまったものについては、孟章もうしょうみずか背負せおった。

 それなりの距離きょりあるいた。たぶん、百里ひゃくりほどである。

 うごくのにれていない仙人せんにんもいる。そういったものは、天界てんかい混沌こんとんとした雰囲気ふんいきにもまれ、疲弊ひへい表情ひょうじょうかくせていなかった。

 その表情ひょうじょうおもんばかった孟章もうしょうが、もうすこあるけばやすんじられるとはなすと、仙人せんにんたちまたた活気かっきもどした。

 いたのは南海なんかいの、城郭じょうかく一角いっかくである。ここならばかべ重厚じゅうこうで、妖魔ようまむらがられるだけでは()()ともしないだろう、と見立みたてがついている。

 仙人せんにんみな

有難ありがたや、有難ありがたや」

と、口々くちぐちとなえていた。

 孟章もうしょうは、揖礼ゆうれいをしながら謝意しゃいしめ仙人せんにんたち行動こうどうせいした。

 おのれは、おのれおもうがまま行動こうどうをしたのみである。そういう我儘わがままさに感謝かんしゃをするくらいならば、ほかものこまっているときに手助てだすけをしたほうが、余程よほどいではないか。

 仙人せんにんたち諄々じゅんじゅんとなえた孟章もうしょうは、返答へんとうたずに、また天市垣てんしえんのどこかにこっている災禍さいか目掛めがけてっていった。

 仙人せんにんたちはっていく孟章もうしょうて、棚引たなびかみしたかくれていた背中せなかの、あまりのきずおおさにおどろいた。

 ひいでているかみならば、きずまえてきほふってしまう。武事ぶじかかわらないかみであれば、そもそもきずことい。

 仙人せんにんたちがかぎり、孟章もうしょう天界てんかいだれよりも強力きょうりょく武神ぶしん一柱ひとはしらである。

 たして何故なぜここまできずおおくなるのかと、みなくびひねった。

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