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綺羅五芒星  作者: 床擦れ


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序「天界當に大顛し、五神は皆墜天す」 三話

 大河たいが滔々とうとう星塵せいじん炯々けいけい

 執明しゅうめいまえ光景こうけいこころ揺蕩たゆたせ、あたまなか詩歌しいかにも八字はちじとなえた。

 執明しゅうめいいま斗宿としゅく城郭じょうかくからびる桟橋さんばしさきて、まえながれている銀河ぎんがあまかわ)をながめている。

 突如とつじょあらわれたかい大群たいぐん対処たいしょするため、てん水軍すいぐん所有しょゆうする軍艦ぐんかん大小だいしょう千隻せんせき斗宿としゅくみなとあつめている最中さいちゅうの、小休息しょうきゅうそくであった。

 へい一人ひとり執明しゅうめいのもとにり、ひざまずいて一言ひとこと

軍艦ぐんかん千隻せんせきあつまりました」

との報告ほうこくをした。

 執明しゅうめいへい目線めせんわせるように、おのれかがみ、って、ねぎらいの言葉ことばをかけた。

 へいは、てん水軍すいぐん大元帥だいげんすいともえる執明しゅうめいから直接ちょくせつめられたものだから、よろこびによって破顔はがんし、足元あしもと溌溂はつらつとさせてへともどっていく。

 へいというものは単純たんじゅんである。めれば喜躍きやくし、けなせばいかりの矛先ほこさきけてくる。

 ゆえ執明しゅうめいは、へいをなるべく激賞げきしょうするようにしている。

 へいせつするということは案外あんがいつかう。つかいすぎておのれどころうしなうこともあった。多少たしょう無理むりはあったが、おおくのへいっている単純たんじゅん精神せいしん構造こうぞうこそが、つよさにつながることもある。

 おのれへい感情かんじょうぐちとして、すべてを抱擁ほうようしなければならない。執明しゅうめいしょうとしての理念りねんであった。

 えられなくなれば、このようにかわながめて一編いっぺんでもぎんじてみればかった。自然しぜんこころ平静へいせいもどしていく。

 執明しゅうめいにはむかしうらやんだ存在そんざいがいる。先代せんだい天蓬てんぽう元帥げんすいである。

 いま天蓬てんぽう元帥げんすいではない。当代とうだいかみ無骨ぶこつで、執明しゅうめいおのれまかせられるほどに洗練せんれんされた性格せいかくっていない。

 だが先代せんだいの「天蓬てんぽう」と愛称あいしょうされた男神だんしんは、それまでの天界てんかいにはほかにいなかったような、けた能力のうりょくったと、執明しゅうめいている。

 かれだれよりも人懐ひとなつっこく、女癖おんなぐせわるく、それでいて武将ぶしょうとしての腕前うでまえ卓越たくえつしていた。

 ちからたってもてないとまったとき自身じしんから少数しょうすうへいとも艨衝もうしょう突撃用とつげきようふね)にみ、てきかってんだりもする。

 一方いっぽう戦場せんじょうからはなれれば、麾下きかへいねんごろになって酒宴しゅえんひらいてもいた。

 酒宴しゅえんなかときの、無理むり一切いっさいしない自然体しぜんたい態度たいどが、しょうという役職やくしょくによっておのれふさいでいる執明しゅうめいにとって、たまらなくうらやましかったのである。

 天蓬てんぽう女癖おんなぐせわるさをこじらせて、嫦娥じょうがそうとし、ついに下界げかいとされた。

 その始末しまつというのは執明しゅうめいにとって、てん水軍すいぐんおのれ心情しんじょういて、多大ただい損害そんがいこうむったようにかんじたものである。


 銀河ぎんがさきなにかがねた。

 きらびやかにひか水面みなもが、幾重いくえものえんえがいてれた。

 いよいよ、なければならない。

 執明しゅうめいおのれ甲冑かっちゅうなおし、得物えもの大弓おおゆみって、楼船ろうせんとどまる場所ばしょへとかった。

 とどめられているふねなかには、すで大勢おおぜいへいめていた。

 百隻ひゃくせき楼船ろうせん楼閣ろうかくそなえられたふね)に二千にせん五百ごひゃくにんずつ。三百さんひゃくせき闘艦とうかん中型ちゅうがた戦艦せんかん)にせん五百ごひゃくにんずつ。六百ろくひゃくせき艨衝もうしょう五百ごひゃくにんずつ。

 けいしてふね千隻せんせきへい百万ひゃくまんにんめさせて、銀河ぎんがちゅう渡河とかはじめた。

 しばらくして船団せんだんが、かわ中程なかほどまでき、ながれに沿って紫微垣しびえん方角ほうがくかいはじめたころである。

 突如とつじょとして一隻いちせき闘艦とうかんが、なにおおきなものにぶつかった。

 執明しゅうめいんでいた楼船ろうせん頂上ちょうじょうにて、四方よも見渡みわたしていた偵察ていさつへいはすぐにき、楼船ろうせんなか将帥しょうすいこう将軍しょうぐん居所いどころ)に羽書うしょ急報きゅうほう)をおくった。

 執明しゅうめい羽書うしょ辿たどまえに、異変いへんいていた。いつも渡航とこうするときこえないようなおとが、彼方かなたからこえたのだ。

 執明しゅうめい将帥しょうすいこうからて、異変いへん正体しょうたいたしかめようとした。

 がったときひらいて、羽書うしょたずさえたへい一人ひとりんできた。

闘艦とうかん一隻いっそうおそわれました!」

 へいはっした言葉ことばを、執明しゅうめいこころみださずにった。

 動転どうてんした表情ひょうじょうせれば、へいたちまちに混乱こんらんする。羽書うしょひらき、つたえることをたしかめると、そのまま甲板かんはんかった。

 こと執明しゅうめい報告ほうこくしたへいは、あせりをかくさず

「あれは多分たぶん烏賊うぞくたぐいですが──闘艦とうかんよりもはるかに巨大きょだいです」

と、っている。

 すで甲板かんはんていたへいもまた、各々おのおのおとほうゆびをさし、恐懼きょうくする表情ひょうじょうせていた。

 執明しゅうめいへい方向ほうこうへ、けた。

 たしかに巨大きょだいである。

 体軀たいくおおきさは、水中すいちゅうから触腕しょくわん闘艦とうかん一抱ひとかかえにからめているからわかる。飛沫しぶきげ、ふねさぶり、もうとたくらんでいるらしい。

 執明しゅうめいはすぐに、艪手ろしゅふね)にめいはつして、おのれっている楼船ろうせんを、おそわれている闘艦とうかんへとすすませはじめた。

 また同時どうじ旗手きしゅ指示しじため旗振はたふやく)へ号令ごうれいして、周囲しゅうい百隻ひゃくせきあまりの楼船ろうせん闘艦とうかん艨衝もうしょうせさせた。そしてこれらのふねを、襲撃しゅうげきされている闘艦とうかんまわりに、円弧えんこえがかせるようにうごかした。

 たかが烏賊うぞくといっても、小島こじまほどの巨大きょだいさである。戮力りくりょくし、たがいに連携れんけいわなければ、撃退げきたいすることにも難儀なんぎするにちがいなかった。

 ふね長短ちょうたん武器ぶきでは、ちそうにい。かえちにされるだろうと、遠隔えんかくより弓弩きゅうどかけることで、触腕しょくわんがそうとこころみた。

 四方しほう八方はちほうより千矢せんし万箭まんせん射掛いかけに射掛いかけた。かいひるむことをらない。むしろあまりの射撃しゃげきのしつこさにはらてて、よりはげしくあばれるようになった。

 これではしずむ。

 執明しゅうめい仕方しかたいと、おのれ大弓おおゆみき、せい大矢だいしえて、烏賊うぞく触腕しょくわんけてねらいをさだめた。

 執明しゅうめい一矢いっしつよい。

 ねらいをはず闘艦とうかんあたれば、一撃いちげきにして闘艦とうかんほうしずみ、烏賊うぞくえさになる。

 不安ふあんったからこそ、執明しゅうめいしばら様子ようすていた。だが、ここまでせいわるければ、さねば仕方しかたい。

 さき一点いってん集中しゅうちゅうし、烏賊うぞく触腕しょくわん以外いがいえないほどになった。執明しゅうめいはすかさず

 びゅおっ

 と、はなった。

 ひかりはつし、夜半やはん水上すいじょう穿うがつようにすすんだ。そして、みごとかい触腕しょくわん命中めいちゅうした。

 触腕しょくわん闘艦とうかんからはなれた。

 この光景こうけいいくてども、撃退げきたいするどころかうで一本いちほんすらがせなかったへい意気いきを、いちどにげた。

 これぞ、まさに水軍すいぐん大元帥だいげんすいである。そう快哉かいさいしないへいはいない。

 ここでの昂揚こうようおおきい。へいさらはげしく射込いこみ、また松明たいまつけたものをげつけ、あるいはとうおそわれている闘艦とうかんなかからも、まぐわほこおの使つかって烏賊うぞく触腕しょくわんかってくわえるにいたった。

 どれほどつづいたか。おそらくは一刻いちこくはんからこくさん時間じかんからよん時間じかん)のあいだである。それほどのながあいだ執明しゅうめいへいは、巨大きょだいかいたたかつづけ、つい

げていくぞ!これ以上いじょうがいせないようにたたきまくれ!」

というこえがるほどの優勢ゆうせいんだ。

 言葉ことばとおり、へいいまつことをめず、また追跡ついせきこころみたふねた。

 執明しゅうめいとしては面白おもしろくない。ほんとうにたたかうべき相手あいては、紫微垣しびえんなかる。ここで遭遇そうぐうしたかいなどは、立場たちばちが端下はしたぎない。

 いま消耗しょうもうすれば、あと困難こんなんする。

 執明しゅうめいあまらないまでも、ふたた大弓おおゆみいてかいねらいをさだめ、一射いっしゃはなった。

 えぐられ、河中かちゅうへとしずんでいく。

 おそわれた闘艦とうかん舳先へさき根元ねもとかられ、いくらか使つかえなくされたが、航行こうこう支障ししょういほどの損害そんがいんだ。

 遠目とおめ確認かくにんした執明しゅうめいは、旗手きしゅ各船かくふねもともどらせよとつたえて将帥しょうすいこうもどた。

 紫微垣しびえんでの戦闘せんとうそなえて、やすめるべきであった。しかし執明しゅうめい疲労ひろうとはべつに、甲板かんはんへい快哉かいさい喚呼かんこすることをめなかった。

 歓声かんせい将帥しょうすいこうにまでとどろいてくる。執明しゅうめいねむりを妨げるほどのおおきさであった。

 紫微垣しびえんまで、まだとおい。水陸すいりくかなければ、辿たどくことはできない。

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